米Appleは10月25日早朝(日本時間)、「iOS 10.1」「watchOS 3.1」のアップデートを開始した。新機能の中でも一番の目玉とされるのが、iPhoneやApple Watchを用いた決済サービス「Apple Pay」の国内対応だ。
Apple Payについて簡単におさらいしておくと、クレジットカードやSuicaカードをアプリ内に登録することで、店頭での買い物や駅改札の通過時に端末をかざして支払いができるというものだ。こうした機能は最新の端末である「iPhone 7/7 Plus」や「Apple Watch Series 2」のみで利用できるが、Apple Pay自体はiPhone 6以降と初代Apple Watchにも対応し、オンラインショッピングなどで利用できる。
米国で2014年10月にサービスインしてから約2年。満を持して日本に上陸したApple Payの使用感や気になる点についてレポートする。
Apple Payを使い始める前に、カード情報をiPhoneやApple Watchに登録しておく必要がある。設定方法はシンプルで、クレジットカードやプリペイドカードなら、OSのプリインストールアプリである「Wallet」を立ち上げてカメラでコードをスキャンする。Suicaの場合は、現在使っているカードをiPhoneに接触するだけで情報が端末に取り込まれる。登録が完了した瞬間から、残ったSuicaカードは使用できなくなる仕組みだ。
Apple Payで利用できる決済サービスは「iD」「QUICPay」「Suica」の3種類で、カードの種類ごとに対応サービスが決まっている(詳細は鈴木淳也氏による過去記事を参照)。使用時には自分が普段よく利用する店がどの決済サービスに対応しているのか、確認しておくといいだろう。
こうして登録完了したiPhone 7を使って、今回は2種類の支払いをしてみた。
窓ガラスに「iD」「QUICPay」「Suica」のステッカー。今回使ったのはJCBカードのため、対応する決済サービスであるQUICPayでの支払いとなる。
スリープ状態のままホームボタンに軽く指をのせて、カードリーダーにかざす。
画面が点灯しカード情報が表示されて……。
チェックマークが表示されると支払い完了となる。
六本木ヒルズにある「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」。
カードリーダーと、今回購入した(なんと1000円もする)高級鉛筆。
iPhoneをやや斜めに傾けながら、アンテナが内蔵された端末上部をリーダーに近づける。
画面が点灯し、MasterCardの画像が表示される。
支払い完了。1秒以内に決済が終わる。
Apple Payによる支払いを試してみて、分かったことがいくつかある。まずはiPhoneをカードリーダーにかざすときのちょっとしたコツだ。
一般に、Android端末などでおサイフケータイやモバイルSuicaを使うときには、「端末の背面全体をリーダーにかざす、あるいはベタっと接触させる」ような使い方をしている人が多いと思うが、iPhoneとApple Payの場合はそうではなく、iPhone本体を斜めに傾けて「端末上部(ここにアンテナが内蔵されている)だけをリーダーに向ける」ようにする。
また、クレジットカードとSuicaとでは、カードと端末とのひも付け方が異なることにも注意が必要だ。クレジットカードやプリペイドは、1枚のカードに対してiPhoneやApple Watchなど複数の端末に登録できるのに対し、Suicaは「1カード1端末」のみとなる。iPhoneとApple Watchの両方でSuicaを使いたい場合は、2枚のカードを用意する必要があるわけだ(ビジネス用Suicaとプライベート用とを分けたいような場合には意味があるかもしれない)。当然、「iPhoneで改札を入場して、Apple Watchで出る」というような使い方は(普通しないとは思うが)できない。
クレジットカードなどを登録するにあたって、セキュリティ面が気になるユーザーもいるだろう。Apple Payではカード番号は端末内やAppleのサーバ上には保存されず、端末ごとに発行される固有の番号がセキュアエレメントという端末内の専用チップ内に保存される。端末を紛失した際にはiCloudの「iPhoneを探す」機能により遠隔でカード情報を停止・消去することが可能だ。
また他人による不正使用防止のため、決済時には必ずTouch IDによる指紋認証が必要になる。ただし、Suicaについては最もよく使う1枚のみ、登録しておけば指紋認証なしでタッチ&ゴーができるように設計されている。
Appleのジェニファー・ベイリー Apple Pay担当バイスプレジデントによると、Apple Payは現時点で「日本国内で使用できるクレジットカードとプリペイドカードの80%をカバーしている」。また、今後対応カードとサービスはさらに拡充していく予定だという。各社との契約面などクリアしなくてはいけない課題は多いだろうが、米国では既に98%をカバーしていることを考えると、国内での伸びしろはまだまだ残されているともいえるだろう。
iPhone 7/7 Plusは、過去のiPhoneシリーズの中でも最も日本国内向けにチューンされた端末だ。携帯電話を使った小口決済が世界でも類を見ないレベルで発展してきた国内市場で、果たしてどのように受け入れられるか。Apple Payに対応したサードパーティーアプリやWebサービスなどの情報は、引き続き別記事でまとめるつもりだ。
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