高速化するモバイルルーターへの「不安」/Y!mobileの「3日10GB」追随が寂しい件5分で知る最近のモバイルデータ通信事情(1/2 ページ)

» 2017年04月06日 20時50分 公開
[島田純ITmedia]

NTTドコモが国内最速「下り最大682Mbps」サービスを開始

 NTTドコモは、3月9日にモバイル無線LAN(Wi-Fi)ルーターの新製品「Wi-Fi STATION N-01J」(以下「N-01J」)を発売しました。それに合わせて同社は、LTE-Advancedサービス「PREMIUM 4G」の下り最高通信速度を682Mbpsに引き上げました。N-01Jは、この速度で通信できる同社初の端末ということになります。

(記事中の通信速度は、全て理論値)

N-01J 国内最速の「下り最大682Mbps」に初めて対応する「N-01J」

 ドコモの「下り最大682Mbps」は、東名阪(関東甲信越・東海・関西)エリア限定で提供している1.8GHz帯(Band 3)の電波と、2016年6月から全国の混雑地を中心に展開が始まった3.5GHz帯(TD-LTE・Band 42)の電波を同時に利用し、以下のような技術や取り組みによって実現しています。

  • 電波の変調方式を「64QAM」→「256QAM」に高度化(通信速度が約1.33倍に)
  • Band 42において「MIMO」を「2×2(2多重)」→「4×4(4多重)」に高度化
  • 「キャリアアグリゲーション(CA)」を使ってBand 3とBand 42(2波)で3波同時通信
東名阪地区における682Mbps実現の図 東名阪地区における「下り最大682Mbps」の模式図(ドコモのWebサイトより引用)

 東名阪地区以外については、Band 3の代わりに2.1GHz帯(Band 1)を用いることで下り最大632Mbpsの通信に対応しています。また、Band 42未提供の地域でも、別の周波数帯の組み合わせでの3波CAに対応しているので、従来のモバイルルーターよりも快適な通信を期待できます。

東名阪以外では下り最大速度は632Mbsに 東名阪エリア以外では、Band 3の代わりにBand 1を用いることで下り最大632Mbpsの通信を実現(図はドコモのWebサイトより引用)

 従来の「Wi-Fi STATION HW-01H」と単純比較した場合に最大で下り通信速度が約1.84倍となるN-01Jですが、エリアマップを見てみると「下り最大500Mbps超」で通信できるエリアは「主要都市の中心部から徐々に拡大中」といった感じで、全国展開には時間がかかりそうな状況です。

東京都心部の256QAM対応端末用エリアマップ(3月26日現在) 256QAM対応端末における、3月26日現在の東京都心部のエリアマップ。下り最大474Mbps超で通信できるエリアは限られている
東京都心部の256QAM対応端末用エリアマップ(9月末予定) 時間を進めて、2017年9月末におけるエリア展開予定を表示。下り最大450Mbps〜337.5Mbpsのエリアはかなり広がっているが、下り最大474Mbps超のエリアは少し広がっただけといった感じとなっている

SoftBankとY!mobileは「下り最大612Mbps」対応機種を投入

 一方、ソフトバンクは下り最大612Mbpsの通信に対応するモバイル無線LANルーター「Pocket WiFi 602HW」をSoftBankブランドで、「Pocket WiFi 603HW」をY!mobileブランドで、それぞれ発売しました。

 両機種はソフトバンクに新しく割り振られたTD-LTE Band 42(2波)で256QAM変調と4×4 MIMOに、既存のAXGPの2.5GHz帯(TD-LTE互換・Band 41)で256QAM変調に対応しており、これらを3波CAで束ねて使うことで下り最大612Mbpsを実現しています。

 従来機種では、「Pocket WiFi 504HW」の下り最大通信速度が261Mbpsだったことを考えると、新機種では通信速度が約2.3倍もアップしていることになります。

602HW/603HWの高速通信 602HW/603HWでは、AXGPに加えて新規に割り当てられたTD-LTE Band 42の2波も用いることで下り最大612Mbpsの通信を実現(図はY!mobileの603HW製品情報から引用)

 ただし、SoftBank/Y!mobileでは、ドコモのような通信速度別エリアマップを公開していません。つまり「下り最大612Mbps」で使えるエリアかどうかは「使ってみなければわからない」という状態なのです。

通信速度の分からないSoftBank/Y!mobileのエリアマップ 603HWで使えるエリアのマップを表示。速度別エリアが公開されていないため、「下り最大612Mbps」に対応しているかどうかは事実上使わないと分からない状況

 「ユーザが通信速度の遅さを感じることがなければ問題ない」ということで速度別エリア情報を公開しないのも1つの考え方ではあります。しかし「どこでより高速なデータ通信サービスを使えるのか?」という点は気になるものです。特に、ソフトバンクにおいてBand 42に対応する機種は602HW/603HWが初めてですから、どこで使えるのか示してほしいと思うのは自然なことだと思うのです。

 ちなみに、603HWにおいて月間通信容量が無制限となる「アドバンスモード」については、従来のAXGPに加えてTD-LTEでの通信も対象となりました。つまり、603HWなら「下り最大612Mbps対応サービスを月間容量制限なしで使い放題」ということになります。

TD-LTEもアドバンスモードの対象に 603HWでは、TD-LTE(Webサイト上の表記では「TDD-LTE」)の通信もアドバンスモードの対象となった
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