トリニティやVAIOなど、Windows 10 Mobile端末を発売したメーカーが次々とAndroidの新モデルを発表する中、まだ諦めていないのが米HPだ。同社が見据えるのは2020年のWindows 7サポート終了に伴う、法人需要への期待だ。
米Microsoftが4月27日(現地時間)に発表した2017年度第3四半期決算では、携帯電話事業の売上が7億3000万ドル下落したことが明らかになった。海外報道では前年同期との比較でわずか500万ドルまで落ち込んだとの指摘もあり、「Windows Phoneは死んだ」との見出しで報じられている。
同事業の今後の見通しとしても、その売り上げは無視できるほど小さい数字にとどまるとMicrosoftは見込んでいる。2017年7月に新しい会計年度を迎えるにあたり、どのような形で携帯電話事業をクローズするのかが次の注目ポイントだろう。
もちろん、これはWindows 10 Mobileというプラットフォームの終了を意味するものではない。少なくとも、既に販売した端末が稼働している限り、サポートの継続は求められるはずだ。
確かに端末メーカーは続々と離れている印象はある。日本でもトリニティやVAIOが次々とAndroidを採用したモデルを発表している。4月26日にヤマダ電機は「EveryPhone」シリーズに6機種を追加したが、Windows 10 Mobileの後継機は1機種も含まれないという結果に終わった。
だが、その中でWindows 10 Mobileの後継機開発を続けている端末メーカーもある。それが米HPだ。
2016年にHPが発売したWindows 10 Mobile端末が「HP Elite x3」だ。高い性能や耐久性の面はもちろん、Continuumを活用するアクセサリーを組み合わせることで、「デスクトップPC」「ノートPC」「スマートフォン」の3役を1台でこなす3-in-1の世界観を提唱したことは記憶に新しい。
さらに2017年2月のMobile World Congressでは、Elite x3の後継モデルの存在を明らかにし、ブースの目立たない場所に展示していた。2017年4月現在のステータスとしては、今夏の発表を目標に開発を進めているという。
後継機では、Elite x3の特徴である有線Continuumに対応し、デスクドックやノートドックはそのまま利用できる見込みだ。その代わり、プロセッサや画面解像度、スピーカーなどのスペックも見直すことでコストダウンを図っている。ターゲットとする価格帯は、ずばり他社のSnapdragon 600番台搭載機だという。
HPの狙いの1つは、業務用端末としての利用だ。Windows 10 Mobileなら管理やセキュリティの面で既存のインフラを活用できるのはもちろん、Microsoftが提供する生産性の高い開発環境とプログラミング言語により、社内システムやクラウドにも柔軟に接続できる。そこで求められるのが、Elite x3のオーバースペックな点を抑えたミドルレンジ端末というわけだ。
HPが次に見据えるマイルストーンは、2020年に訪れるWindows 7のサポート終了だ。いま、企業内PCの多くはWindows 7が稼働しているが、IT機器への投資として「PCは7のまま、スマホだけ先に10にする」ことは考えにくい。Windows 10 Mobileの市場がなかなか立ち上がらない要因の1つはここにある。
しかしWindows 7のサポートは2020年に終了する。正確には2020年1月14日に終了するため、できれば2019年中には新しいOSに移行しておきたい。その時点で移行先としてWindows 10が有力であるならば、法人向けスマートフォンとしてのWindows 10 Mobileの魅力は確実に高まるはずだ。
気になるのは、果たして2020年までWindows 10 Mobileが生き残っているのかどうか、という点だろう。少なくともHPは生き残ることを前提としたロードマップで動いており、Microsoftに代わって今後のWindows 10 Mobile市場をけん引していく存在になりそうだ。
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