MSが描くWindows 10 Mobileの新世界戦略、お手本になるのは「日本」?:「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線

» 2016年05月30日 13時25分 公開
[山口健太,ITmedia]

 5月に入り、Microsoftの携帯端末事業に関する発表が相次いでいる。5月18日には、Nokiaから買収したフィーチャーフォン事業をフィンランドのHMD Globalと鴻海傘下のFIH Mobileに売却。5月26日には、Lumiaシリーズのスマートフォンについても大規模な人員削減を発表した。

 MicrosoftがNokiaから引き継いだ携帯端末事業は大きな戦略転換が図られる形になったが、これはLumiaシリーズの終わりを意味するのだろうか。

「Nokia」携帯端末復活への道

 Microsoftは2014年4月、Nokiaの携帯端末事業を買収した。その中でも安価なフィーチャーフォンは、Microsoftの事業とはシナジーを生みにくい問題があった。

 一方のNokiaも、端末事業を売却したことで事業構造が大きく変化したとはいえ、その後もAndroidタブレット「Nokia N1」を発売したように端末事業に再挑戦する意欲を見せていた。

Nokia 215 「Nokia 215」。Microsoftによる買収後もフィーチャーフォンの新機種は登場したが、やや場違いな印象

 Nokia会長のリスト・シラスマ氏は、2015年11月に「単にAndroidデバイス市場に参入するだけでは勝機がなく、何らかの新しいアプローチが必要だ」と語った。その後、2016年4月にはスマートウォッチなどのウェアラブル製品で知られるWithingsを買収、端末事業復活への足掛かりを得ていた。

Nokia会長のリスト・シラスマ氏 ヘルシンキでの「SLUSH 2015」に登壇したNokia会長のリスト・シラスマ氏

 Microsoftによるフィーチャーフォン事業の売却も、これらの延長線上に位置付けてよいだろう。HMD GlobalはNokiaの子会社ではないものの、多くは元Nokia従業員によって構成されるとみられ、出資元も元Nokia幹部が設立したファンドになっている。

 また、HMDはフィーチャーフォンだけでなくNokiaブランドのスマートフォンも手掛ける計画を表明し、OSにはAndroidを使うことを明言した。これは2010年にWindows Phoneを採用した当時のNokia CEOであるステファン・エロップ氏との決別を感じさせる宣言といえる。

 世界的に見ても、Nokiaブランドのフィーチャーフォンはまだまだ根強い認知度がある。また、HMD Globalの本拠地はヘルシンキにある。Nokiaが迷走する中、多くの優れた人材が同社を離れたとされるが、彼らを再び呼び戻せる可能性もある。そこに鴻海グループの製造技術を組み合わせ、Nokiaケータイを復活させるというのが基本戦略になるだろう。

Nokia製品Nokia製品 Lumiaシリーズ(写真=左)だけでなく、Nokiaシリーズのフィーチャーフォン(写真=右)も根強い人気がある(写真は2015年11月、ヘルシンキの家電量販店で)

Windows 10 Mobile、新戦略のお手本は「日本」?

 Nokiaとは対照的に、明るいニュースが出てこないのがMicrosoftのスマートフォン事業だ。ヘルシンキではMicrosoft Mobile Oyを中心に最大1850人の人員削減を発表。Gartnerの市場調査では2016年第1四半期にWindowsスマートフォンのシェアが0.7%にまで落ち込んだ。

 これに対してMicrosoftは、Windows 10 MobileというOSの開発は継続する姿勢だが、ハードウェアのLumiaシリーズについては「サポートを続ける」との表現にとどまっている。

 さらに米国メディアのWindows Centralは、Microsoftのテリー・マイヤーソン氏がパートナー向けに送信したとされるメールの内容を報道。そこにはデバイスの展開地域を米国、英国、オーストラリアや欧州主要国を含む18の国や地域に絞り込むといった事業計画が書かれていたという。

 一連の動きから、Microsoftの方向性も見えてくる。以前から「Surface Phone」としてうわさされるハイエンドモデルを投入して低・中価格寄りになっていたLumiaシリーズのイメージを払拭する一方、ローエンドからミドルレンジはOEMパートナーに任せるといったすみ分けが予想される。

 注目すべきは、Microsoftが新たに描いた「世界地図」に、中国やインド、南米や東南アジアといった成長市場が含まれていない点だ。これらの地域から低〜中価格帯のLumiaが撤退すれば、最近勢いを増している地元のOEMメーカーが関心を示す可能性が高い。うまくいけば、低〜中価格帯のWindows 10 Mobileが百花繚乱になる――これはまさに、日本市場の再現ではないだろうか。

日本のWindows 10 Mobile Lumiaシリーズが存在しない日本市場では、低〜中価格帯のWindows 10 Mobileが一斉に登場した

 Windows 10 Mobileの位置付けも明確になりつつある。これまでのWindows Phoneでは、「iOSでもAndroidでも代用できない、決定的な理由」が弱かったといえる。だがWindows 10 Mobileでは、セキュリティや端末管理、「Continuum for Phones」を武器として、ビジネスユーザーに訴求できることが見えてきた。この点でも日本市場は、まさにお手本というべき存在なのだ。

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