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» 2018年03月07日 06時00分 公開

MVNOの深イイ話:SIMフリースマホは「緊急速報」を受信できない? その原因と対策 (2/3)

[堂前清隆,ITmedia]

一部の警報が届かなかった理由とその対応

 SIMロックフリーのAndroidスマートフォンで一部の警報が表示・鳴動しないのはどのような理由からでしょうか。まず、各種警報がどのようにして送信されているのかを説明します。

緊急速報 緊急速報の送信経路

 緊急速報として扱われている各種警報は国や自治体が発出しているものです。緊急地震速報(地震・津波)は気象庁、それ以外の防災情報は各自治体、また、ミサイル発射の警報は内閣官房が発出する「国民保護に関する情報」に含まれます。これらの警報は携帯電話会社やテレビ局・ラジオ局など関連機関に届けられます。ちなみに「Jアラート」というのは「国民保護に関する情報」を届けるためのシステムのことを指しており、警報自体の名称ではありません。システムとしてのJアラートを所管しているのは消防庁です。

 そして、各携帯電話会社は自社の情報配信サービスの一環として、これらの警報を契約者に配信しています。

 契約者のスマートフォンに届いているのは、あくまで「エリアメール」「緊急速報メール」という、各社独自のサービスということになります。そして、これらのサービスでどのような信号が利用されているかの仕様は、公開されていません。

 ただ実際には、各社ともETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)という世界共通の通信仕様にのっとった信号を使っており、Androidにはこの仕様に基づいたプログラムが含まれているので、「エリアメール」「緊急速報メール」を一般的なETWS信号として受信すること自体は可能です。

 ここで問題になるのが、ETWS信号に含まれるメッセージIDという情報です。メッセージIDは、ETWS信号がどのような意味を持っているかを示しています。メッセージIDにはETWS標準として全世界共通で定められているものと、携帯電話会社が独自に定義するものがあります。

 例えば、ドコモでは緊急地震速報で扱われている「地震」「津波」の警報については標準のメッセージIDを使用していますが、それ以外の警報は独自定義のメッセージIDを使用していました。独自定義のメッセージIDがどのように使われているかの仕様は公表されておらず、結果的にドコモが開発に関係していないSIMロックフリースマートフォンでは、独自定義のメッセージIDを扱うことができませんでした。これが、SIMロックフリースマートフォンで一部の警報が表示・鳴動しなかった理由です。

 ここではドコモを例に取り上げましたが、auとソフトバンクも同じような状態です。

緊急速報 ETWSでは標準IDと独自のIDを使って情報を送信している

 ところで、「独自定義のメッセージIDの仕様が不明なら、メッセージIDを無視して全ての信号に反応すればよいのでは?」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。残念ながらそれはあまり良くないアイデアです。ETWSの信号の中には、送信設備の動作確認用のメッセージや、災害とは関係のないニュースや広告のメッセージが含まれている場合があります。もし、メッセージIDを無視して全ての信号に反応するようにした場合、これらの無関係なメッセージにも警報として反応してしまいます。結果として、災害ではないタイミングに警報音が鳴るという問題が起きるでしょう。これを避けるためには、用途の不明なメッセージIDの信号は無視する必要があるのです。

 このような状況に改善が行われたというのが、冒頭に紹介したTCAのアナウンスです。Googleが管理するAndroidのソースコードに、ETWSのどのメッセージIDに反応すべきという情報が追加されたのです。どのメッセージIDがどのように使われているかの詳細は相変わらず不明ですが、これによって少なくとも反応すべきメッセージIDと反応すべきでないメッセージIDの情報が明確になり、今まで無視していた地震・津波以外の警報も適切に表示・鳴動するようになりました。

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