メッセージIDの情報が追加されたのは、「Android 8.1.0_r9」と呼ばれるバージョンからです。これは2018年1月23日に公開されました。とはいえ、これによって全てのAndroidスマートフォンが直ちに全ての警報に対応できるわけではありません。
Googleが管理しているAndroidのソースコードはあくまでAndroidスマートフォンを作るための「基」という位置付けです。実際にメーカーから発売される製品のほとんどは、Googleのソースコードを基に各社独自の修正が施されています。この過程で機能が追加されることもあれば、削除されることもあります。ETWS関連の機能が製品に含まれるかどうかは、メーカーの判断次第というのが大前提です。
また、Google自身はAndroid 8.0、8.1……というように新しいバージョンをどんどん公開していますが、各メーカーの製品がそれに合わせて最新バージョンを追いかけるということは、あまりありません。新しいバージョンのAndroidにメーカー独自の修正を反映させるのは大きな手間がかかるため、最新版を追いかけるのではなく、発売時点のバージョンのAndroidに対する最低限度の修正(セキュリティアップデート)だけを追いかけるというケースが多くなっています。
メーカーがこのような方針で製品のアップデートを行っている場合、新しいバージョンのAndroidに取り込まれた修正や新機能が製品に反映されないこともあります。中には、手間をかけて発売済みの機種にも最新バージョンへのアップデートを提供してくれるケースや、メーカー独自の修正として最新バージョンへの修正を旧バージョンにも加えるケースもありますが、どの機種でどのぐらいの面倒を見るかは基準がありませんので、やはりメーカーの方針次第となってしまいます。
また、最新版のAndroidについても、ETWSの取り扱いに一部不十分と思われるところが残っています。
例えばこの画面写真は、SIMロックフリーのAndroidスマートフォンでドコモが送信する警報を受信した際に、1つの警報が2通のメッセージとして表示されてしまうという例です。1通目は「ETWS」とだけ書かれたメッセージで、2通目に警報の内容が記されています。
これは、ドコモが送信するETWS信号が速報用の1通目と詳細の2通目の2つに分割されているために発生していると思われます。この送信方法自体はETWSの仕様に沿ったもので、おかしなことではありません。ドコモが販売するスマートフォンではこういった形式のメッセージでも正しく画面表示しますが、SIMロックフリーのAndroidスマートフォンでは今のところうまく扱えないようです。
Android自体にもこうした細かな動作の改良が続くと思われます、また、その改良が市販の製品に反映され、国内に流通するにはさらに時間がかかると思われます。しばらくはもどかしい状況が続いてしまいますが、解決の道筋は示されていますので、メーカーの奮闘を期待しつつ経過を見守ることにしたいと考えています。
スマートフォンが緊急速報の受信に対応していても、警報が鳴動しないことがあります。それは以下の場合です。
緊急速報で送信されるものと同じ情報の多くは、テレビやラジオ、街頭にある防災無線のスピーカーからも流されます。スマートフォンだけでなく、これらの情報も合わせて活用してください。
堂前清隆
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 課長 (技術広報担当) 兼 MVNO事業部 事業統括室 シニアエンジニア
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
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