この連載で以前にも取り上げたスマートフォンの「緊急速報」について、2017年12月にTCA(一般社団法人電気通信事業会)と消防庁が、「今後はSIMロックフリースマートフォンでも緊急速報が利用できる」と発表しました。
「緊急速報を受信できない場合がある」という格安スマホ(MVNO)の課題が解決に向かう良い話ですが、具体的にどのような変化があったのでしょうか。
大手携帯電話会社が販売するスマートフォンのほとんどは、災害やその他の非常事態に国や自治体が発する緊急メッセージを受信する機能が付いています。NTTドコモでは「エリアメール」、auとソフトバンクでは「緊急速報メール」という名称ですが、利用できるものはほぼ同じです。この記事ではまとめて「緊急速報」と説明します。
その一方で、大手キャリア以外の格安スマホ(MVNO)で緊急速報をどう扱うのか、心配する声が上がっていました。筆者が所属するIIJでもこの件については以前から注目しており、自社での調査に基づき以下のような情報をイベントや公式ブログなどでお知らせしていました。
表にまとめた通り、MVNO契約の場合でもiPhoneや大手携帯電話会社が販売したスマートフォンであれば緊急速報の受信に問題はないものの、SIMロックフリーのAndroidスマートフォンの多くは地震・津波以外の警報で画面表示や警報音の鳴動が動作しません。
最近では、格安スマホを契約される方の多くが、MVNOの契約と同時にSIMロックフリーのAndroidスマートフォンを購入しています。実際には緊急速報が全く受信できないわけではないのですが、受信できない警報があるということに不安を覚える方も少なくありません。
この件に大きな注目が集まったのは、2017年夏に近隣国でミサイルが発射された時です。日本政府は日本上空を通過するミサイルについて「国民保護に関する情報」を発出しました。これが緊急速報としてスマートフォン向けにも配信されたのですが、この警報は地震・津波以外の情報として配信されたため、SIMロックフリースマートフォンでは警報が動作しませんでした。ミサイル発射が短期間に複数回行われ、そのたびに警報が流れたこともあり、多くの方がこの状況を認識したようです。
本件はその後、国会でも取り上げられました。2017年8月30日の参議院外交防衛委員会にて、次のような答弁が行われています。
白眞勲君 総務省にお聞きいたします。
昨日午前六時二分にJアラートで発射情報を伝達したようですけれども、一部の携帯電話ではその情報が伝達されていなかったということですが、SIMフリーの携帯電話については元々伝わらないんでしょうか。その辺どうなんでしょうか。
(略)
副大臣(奥野信亮君) 格安スマホが生き延びていくためには何か機能を剥奪した展開をしているように私の目には映ります。そういう意味では、我々のところが少し格安スマホの提供者と話をして、これはどうしても機能として入れてもらわないと困るんだと、こういう話をしなくちゃいけないとさっき言ったところであります。
Twitterやブログだけでなく、国会という公的な場所で「格安スマホ」の緊急速報について取り上げられたことに筆者はとても驚きました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.