IIJが「フルMVNO」で目指す世界 MVNOの正常進化ではなく、ビジネスモデルが変わるMVNOに聞く(4/4 ページ)

» 2018年03月29日 14時43分 公開
[石野純也ITmedia]
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ローミングは140カ国以上で提供する

―― 確かに、HSS/HLRを持ったフルMVNOは他にもありますが、いずれも海外キャリアと接続していて、日本では逆にローミング扱いになります。

佐々木氏 料金面でもそうですし、これは運用面でも効いていきます。何か問題が起きたときでも、クイックに対応できるからです。ローミングが絡んでしまうと、時差はありますし、地震で海底ファイバーが切れるといった問題も起こりえます。

 また、ローミングの場合は事業者間の合意が永続的とは限りません。場合によっては、海外のホストオペレーターと日本のキャリアの協議がこじれて、ある日突然、ローミング先がソフトバンクさんからKDDIさんに変わってしまうということも起こりえます。そのとたんに1割ぐらいの端末が一気に使えなくなってしまうというリスクも考えられます。一方でわれわれは、少なくともドコモさんとのMVNO契約は続けていきますから、変わることはありえません。

―― ちなみに、ローミングサービスの目途はいかがでしょうか。

佐々木氏 6月をめどに、海外で使えるようにしていきます。その場合、SIMカードの差し替えは必要なく、海外に行くとネットワークが自動的に切り替わります。

阪本氏 140か国以上と、かなり広い国や地域に対応する予定です。国別ではないのですが、ある程度(ゾーンのような形で)価格帯は分けようとしています。旅行者が使ってもそれなりに無理のない金額のところと、それなりの(高い)金額になってしまうところに分かれると思います。

堂前氏 あくまでローミングなので、エリアのカバレッジを取っています。安くするのは、現地のIMSIを取るという次のチャレンジがあります。

―― それぞれのキャリアとローミング協定を結んだわけではないですよね。

佐々木氏 海外に行くと、IMSIが切り替わる仕組みです。用語的には「マルチIMSI」というのがしっくりきますね。eSIMというより、あらかじめSIMカードの中に複数のIMSIがあり、海外の基地局につながると自動で切り替わります。

―― 海外用のSIMカードも出していますが、これをタイプIにまとめていくことはないのでしょうか。

佐々木氏 今は別だと考えています。「海外トラベルSIM」は音声対応していますし、プリペイドタイプとして使い勝手がいいので、当面サービスは続けていきます。ポストペイで海外利用が可能なものが、タイプIの位置付けになります。

IIJmioフルMVNO 今後、提供する予定のフルMVNOサービス

取材を終えて:ユーザーにどうメリットを伝えるかがカギ

 フルMVNOになったことで、IIJのモバイルビジネスが多様化している。第1弾のサービスだけでは全貌が見えづらいところはあるが、1つの独立した通信事業者になったことで、取れる選択の幅は確実に広がった。この特徴を生かした、第2、第3のサービスにも注目しておきたい。

 ただ、「料金が劇的に下がる」といった派手さはないため、メリットがユーザーには見えづらい印象もある。個人向けのIIJmioは、その宣伝役を担うことになりそうだ。ここでどういった特徴づけをするのかは、腕の見せどころといえる。料金面で既存のタイプD、タイプAと大きく差別化するのは難しいかもしれないが、IIJならではの味付けに期待したい。

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