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「Pixel 3」の“おサイフケータイ対応”とGoogle Payを取り巻く最新事情鈴木淳也のモバイル決済業界地図(1/3 ページ)

» 2018年10月09日 20時52分 公開

 米Googleは10月9日(米国時間)に米ニューヨークで製品発表イベントを開催する。この場でうわさの「Pixel 3」「Pixel 3 XL」が発表されるとみられている。Pixel 3/XLについては既に各種リーク情報が出回り、一部には先行レビューまで掲載されている状態で、カメラ機能やActive Edgeによる操作体系などに特徴があるといわれる。このPixel 3/XLでは、Google製端末初の“おサイフケータイ”対応を実現することが複数の関係者の話として伝わってきている。

Google Pay ティーザーサイトで公開されている「Google Pixel」の新機種

 特におサイフケータイ対応について、従来の実装方式を改め、Android端末向けに仕様を刷新した「おサイフケータイ 2.0」とも呼べるべき機能になることが見込まれている。Googleは5月24日の発表で同社のモバイル決済サービス「Google Pay」の支払い手段に「Suica」と「WAON」を追加し、以前より利用可能になっていた「楽天Edy」と「nanaco」と合わせて国内主要電子マネーをカバーした。

 同時に、「Kyash」「JACCS」「JCB」より発行されたクレジット/デビット/プリペイドカードをGoogle Payに登録した場合、店頭での決済手段としてQUICPayを選択する仕組みにも対応している。これまでのGoogle Payは、乱暴にいえば「ホーム画面にあたるユーザーインタフェースをGoogle Payの名称で被せた“スキン”のようなもの」という体であり、基本機能については既存のおサイフケータイの域を出るものではなかった。だがPixel 3に搭載されるおサイフケータイではこの機構を改め、より「Apple Payライク」なものへと近づいている。

 直近のGoogle Payに関するトピックは以下の過去記事を参照してほしいが、今回は特にPixel 3からみる最新の「おサイフケータイ」事情についてまとめてみたい。

Googleがモバイル決済サービスをHCEベースにするまで

 Google Payの名称は、オンライン決済の「Google Wallet」とスマートフォン向け決済サービスの「Android Pay」が2018年1月に合体してリブランディングされる形で登場した。後者のAndroid Payは、いわゆる「Apple Pay」のような「モバイルウォレット」と呼ばれるサービスの一種で、モバイル端末に複数のカードや“鍵”情報を格納しておき、決済や身分証明などの段階で適時適切なカードを呼び出すことで対応が可能な「リアルな財布いらず」を実現する。

 このAndroid Payにおける大きな特徴は2つで、「決済に使われるカードには“トークン”を用いる」こと、そして「対面決済の場面ではHCE(Host Card Emulation)を利用する」点にある。トークンを介して生のカード情報ではない別の番号を決済に利用し、その安全性を高める仕組みは「トークナイゼーション(Tokenization)」と呼ばれ、Apple Payや各種ウェアラブル機器などでも採用されている。

 そして重要なのがHCEの部分で、Android 4.4以降のOSでは基本的に全てHCEに対応しており、カード情報の保持にセキュアエレメント(SE)と呼ばれる専用のハードウェアを必要としない。通常、Apple Payを含め決済用カード情報の保持にはSEを用いているが、HCEではソフトウェア的に処理が行われており、機種依存性が少ない。

 NFCのアンテナを内蔵している機種では基本的に全てHCEを利用できる点でメリットがある。Googleはこれまで、自社端末にSEを内蔵する「eSE」方式で「Galaxy Nexus」をリリースしたが、当時販売パートナーだった米Verizon Wirelessの抵抗で決済サービスに必要なアプリ(Google Wallet)の提供が行えなかった。

 これは世界の携帯キャリア連合(GSMA)がSIMカードに決済情報を記録する「SIM方式」をプッシュしていたためで、この対立がGoogleのスマートフォンを使った決済サービス進出という計画を頓挫させた。ゆえに携帯キャリアの意向に左右されない「HCE」の採用という方向にGoogleのかじを切らせる結果となったわけだ。

 Apple Payに続く1年後の2015年9月にスタートしたAndroid Payだが、基本的にはApple Payの仕組みをそのまま踏襲している。Android Pay対応のカードを端末から登録することで、そのままオンライン(アプリ)やリアル店舗での決済に利用できる。銀行側のシステムもApple Payの仕組みをそのまま流用しているようで、例えば筆者が普段使っているBank of Americaのカードを期限切れで更新すると、Apple PayとAndroid Pay(Google Pay)に同時に通知がやってきて新しいカードに自動的に切り替わる。

 使い勝手も基本的には一緒だが、後述のようにAndroid Payはシステム統合が行われておらず、一度決済時にAndroid Payのアプリを呼び出す必要がある点で異なる。また米国の一部交通系システムではAndroid Payでのチケット購入や支払いに対応しており、この仕組みもまたHCEが利用されている。

Google Pay Android Pay(Google Pay)を日本国内のNFC Pay対応決済端末で利用したところ。NFC決済の聖地、沼津港にて

 さて、日本におけるAndroid Payは、Apple Payの国内上陸に遅れることわずか2カ月の2016年12月に提供開始されたが、内容的には「楽天Edy」対応だけというもので、あえてAndroid Payを使う理由が薄かった。海外であるような「クレジットカードを登録してEMV Contactless(NFC Pay)」のような仕組みもなく、カード情報は楽天Edyアプリと共用できるため、あえてAndroid Payを呼び出す理由がなかったからだ。

 実は日本のAndroid Payは少し特殊な仕様となっており、本稿執筆時点では実質的に「おサイフケータイの“スキン”的な存在」でしかない。その理由の一つはおサイフケータイの仕様にある。

Google Pay 現状の「Google Pay」は、おサイフケータイのサービスを取りまとめたアプリにすぎない
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