“王道”の戦略で国内外のシェアを高めるHuawei 課題は米国市場の攻略石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2018年12月01日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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フラグシップの比率も向上、グローバルでは米国市場も課題に

 そのフラグシップモデルも、販売は好調だという。徐氏によると、先行して海外で発売となったMate 20シリーズは「1世代前のMate 10シリーズと比べて、販売台数が大きく増加している」という。徐氏は「海外の多くの国で、3倍から5倍のペースで伸びている」として、累計で1000万台に届くとの見方を示した。P20シリーズも含めたフラグシップモデルは、「前年同期比で2倍になっており、ブランドの認知が上がったことで、ミドルレンジやローエンドの販売もけん引した」(同)。

Huawei グローバル全体でもシェア2位に浮上したうえに、フラグシップモデルの比率も上っているという

 フラグシップモデルは利益率も高いため、この販売が上向くことは、ブランド力向上はもちろん、収益性を高める効果もありそうだ。日本では、まだその比率は低いとみられるが、ドコモやソフトバンクなどの大手キャリアがフラグシップモデルを取り扱うことで、徐々に存在感を高めている。

Huawei P20 Proはドコモが独占販売を行うなど、日本でもフラグシップモデルの存在感が高まっている

 ただし、現状でも「消費者のニーズをきちんと満たしているかといえば、まだ課題もある」(徐氏)という。例えば、カメラ性能は他社の追随を許さないレベルに達したが、「手軽に編集したり、管理、共有したり、PCと迅速にデータをやりとりしたりといったとこは、まだ改善の余地がある」(同)。スマートフォン以外の機器と連携するような機能についても、「HiLinkという仕組みを用意しているが、まだ日本では展開できていない」(同)。

 グローバルでみると、Appleを抜き、世界シェア2位に躍り出たファーウェイだが、シェア1位のサムスンとは、まだ距離がある。市場規模の大きな米国を攻略できていないのも、同社にとっての向かい風といえそうだ。さらに米国は、5Gのネットワークからファーウェイを排除する動きも強まっており、同盟国にもこの動きに呼応するよう、呼びかけを行っているという。

 これはネットワーク事業の話だが、端末事業も無関係ではない。米国では、Mate 10シリーズをAT&Tなどのキャリアに納入し、市場を拡大する予定だったが、直前で発売がキャンセルされる事態にも見舞われた。2018年1月に米ネバダ州・ラスベガスで開催されたCESでは、端末部門のCEO、余承東(Richard Yu)氏が基調講演に登壇し、「これは消費者にとっても大きな損失になる」と悔しさをにじませたが、その状況は依然として変わっていない。

Huawei 年始に行われたCESの基調講演では、「Something I Want to Share」(共有しておきたいこと)として、米国キャリア市場への参入に失敗したことをCEOの余氏が率直に語った

 先の徐氏も「一部の国ではまだ製品を販売できていない」と認めながら、「われわれは一貫して、消費者のために最もよい製品や経験、サービスを提供するだけだ」と語っていたが、国家間の政治の駆け引きや安全保障問題が絡み合ってくる話であるだけに、一筋縄にはいかないだろう。

 徐氏は「われわれは製品を170の国や地域で提供しており、トップ500に入る大企業が顧客になっている。また、3億人の消費者に対して製品を提供している」と信頼感をアピールするが、対立する国のネガティブキャンペーンが悪影響を及ぼす可能性もある。日本では勢力を増す一方のファーウェイだが、米国発のニュースを耳にした一部のユーザーからは、不安の声も聞こえてくる。海外の風評が事実無根だとしても、企業として、信頼性や透明性を高める取り組みは、今まで以上に重要になりそうだ。

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