ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ3」は、2018年秋〜冬商戦向けモデルとして発売された、最新のフラグシップスマートフォンだ。最大の特徴は、Xperiaとして初めて有機ELディスプレイを搭載したこと。左右の端がカーブした曲面ガラスや、側面をタップするだけでよく使うアプリやあらかじめ指定したアプリの一覧を呼び出せる「サイドセンス」も特徴だ。
ソニーモバイルは、なぜこのタイミングで有機ELの搭載に踏み切ったのか。使い勝手やデザインにはどんな改良を施したのか。開発チームに話を聞いた。
商品企画担当の矢部椋氏によると、有機ELを採用した理由は2つあるという。1つは、ディスプレイが進化したことで、ソニーモバイルが目指す映像美、画作りが実現できるようになったから。もう1つが、バックライトがない分、本体を薄くできるため。素材の特徴で画面端を曲げることもでき、「丸みを帯びた、美しいシンメトリーなデザインを実現できました」と同氏。
Xperia XZ3の有機ELには、ソニーの有機ELテレビ「BRAVIA」で培った技術を生かしているが、ディスプレイ技術担当の松原直樹氏によると、テレビとスマホの有機EL技術は根本的に違うため、画質のチューニングはゼロからやり直しているという。
「BRAVIAがどういう発光特性をしているのか、どういう色のチューニングをしているのかを綿密に解析し、スマートフォンで(BRAVIAの画質を)実現するために、(画像処理エンジンの)『X-Reality for mobile』のチューニングを突き詰めました」(松原氏)
具体的に画質はどこに注力したのか。「テレビは動画がメインですが、スマートフォンはWebブラウジング、カメラ撮影、YouTubeの視聴など、さまざまなユースケースが考えられます。常時BRAVIAの画質にすると目が疲れてしまうので、YouTubeやNetflixを見るときなど『ここぞ』というときにBRAVIA画質を提供しています。コンテンツによってカラーマネジメントを切り替わるのがテレビとの違いです」(松原氏)
コンテンツによって画質が変わる仕様は、X-Reality for mobileをオンに設定すると有効になるが、実は液晶のディスプレイを採用していた前モデルでも実装している。
有機ELを採用することで、画質面にどんなメリットをもたらすのか。松原氏は「黒の沈み込み」を挙げる。「映像の中で、微妙に黒くないところ、暗いところだけども模様やテクスチャーがあるところまで、液晶では消えていたようなことが、有機ELになって表示されるので、今まで見えなかったところが見えてきます」と同氏。
一方で、そのままX-Reality for mobileで画像処理をすると、色が不自然になるという“副作用”があったため、画質のパラメーターは有機EL用にやり直したそうだ。
「そのままの色域で使うと、全てが引き延ばされて、鮮やか過ぎる印象を持たれます。有機ELは黒の沈み込みもあるせいで、液晶に比べてどす黒く見えることもあります。カラーマネジメントの手法として、(色域を)全て使い切るものもあれば、使いきらないものもあります」(松原氏)
人肌については「いろいろな人種の肌を見ながら、鮮やかになるけど、変な方向に色相が回転しないようにする」「コントラストは付けるけど、しわが深掘りにならないようする」(松原氏)など配慮した。
Xperia XZ3では、「色域とコントラスト」という設定からも画質を調整できる。初期状態では「スタンダードモード」になっており、一般的な広色域ディスプレイに従った規格にしている。ソニーモバイルがお勧めするのも、このスタンダードモードだ。
「プロフェッショナルモード」はsRGBに準拠した色域を採用しており、オリジナルの色彩を重視する人向け。「写真編集をしたい、厳密な色を見たいときはプロフェッショナルモードがお勧めです」と松原氏。これらのチューニングも、液晶とはやり方が全く異なり、ゼロから設計し直したそうだ。
もう少し細かな画質調整をしたいという人に向けて、「ホワイトバランス」の設定も用意した。
もう1つ、有機ELのメリットとして、「最高輝度が液晶よりも高いこと」を松原氏は挙げる。「真っ白な画面は液晶の方が輝度は高いですが、HDRコンテンツなどは液晶よりも輝度が高く、今まで以上にコントラスト感を出せます」と続ける。「ベッドで部屋を真っ暗にした状況で見ると没入できます。暗いところで見ると全然違いますよ」
また、YouTubeやNetflixなどメジャーな動画アプリや、アルバムアプリから再生した静止画や動画は、通常よりも輝度を上げて再生できる。
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