世界を変える5G

世界で「5G」が花開く2019年 その動向を簡単にチェックCES 2019(2/2 ページ)

» 2019年01月11日 14時00分 公開
[井上翔ITmedia]
前のページへ 1|2       

Intel:600MHz帯の5G NRを使った音声通話デモを実施

 2019年中に5Gモデムと基地局用プロセッサを出荷するIntelのブースにおける5Gコーナーでは、モデムやプロセッサ……ではなく、5Gを使って何ができるのかに主眼を置き、関連企業とコラボレーションする形の展示が行われた。

5G Powered by Intel Intelブースの5Gコーナーは「5G Powered by Intel」という形で展開

 筆者が一番に注目したのは、米国の大手キャリア「T-Mobile US」、スウェーデンの通信機器大手「Ericsson(エリクソン)」と共同で実施した600MHz帯の電波を利用したビデオ通話だ。

 「え、ビデオ通話って今(LTE)でもできるよね?」と思うかもしれない。しかし、この実験のポイントは2つある。

 1つは、600MHz帯という非常に低い周波数帯の電波を使っていること。5Gを使った通信実験は、3.5GHz帯やミリ波付近、あるいはミリ波の電波を使うものが多い。電波の周波数は、高ければ高いほどスループット(実効通信速度)が向上するが、電波の直進性も強まるため、広いエリアのカバーが困難になる。

 そこで、電波の回折性(障害物を回り込む)特性に優れた低い周波数帯を使ってエリアカバーを広めようとしているのだ。

 もう1つは、映像と音声を伝送していること。5GはLTEと同様にパケット(データ)通信に特化した通信規格で、現時点において音声通話(あるいはビデオ通話)に関する統一規格が定められているわけではない。将来的にLTE(4G)を5Gで置き換える場合、LTEにおける「VoLTE(Voice Over LTE)」のように、5Gで音声通話ができる共通規格を定めることは不可避であると思われる。

 5Gを使ってビデオ通話をする実験を通して、将来的な5Gによる音声通話の可能性を模索しているものと思われる。

600MHz帯 600MHz帯の5G通信でビデオ通話する実験。Intelブースと、少し離れた場所にあるT-Mobile USのブースを結んでビデオ通話を行った

 次に注目したのは、5Gを使ったクラウドゲームのデモだ。このデモは、米国でGaaS(Gaming as a Service:クラウドゲーム)事業を手がける「PlayGiga」と、Ericssonとのコラボレーション展示だ。

 クラウドゲームは、ゲームをプレイする端末自体はそれほど高スペックでなくても問題ない。しかし、高速かつ遅延の少ないネットワーク接続が求められる

 そこで、従来のLTEよりもさらに高速かつ低遅延な5Gの出番だ。米国における5Gは、先述のT-Mobile USを除いて固定ブロードバンド回線の代替としての役割により多くの期待が集まっている(参考記事)。

 5G通信なら、遅延を感じることなくクラウドゲームを楽しめるということをアピールした格好だ。

クラウドゲーム実験 5Gでクラウドゲームを楽しむデモ。2台のノートPCで快適にクラウドゲームを楽しめた。ちなみに、ノートPCの間にある白い箱は、5G通信に対応した屋内用モデムだ
モデム側基地局側 クラウドゲームコーナーに設置されたモデム用アンテナ(写真=左)と基地局用アンテナ(写真=右)

 その他、Intelブースではフィンランドの通信機器メーカー「Nokia(ノキア)」と組んだ感触付きAR体験や、ホログラフィックソリューションを手がける米国企業「MIMESYS」とEricssonと組んだホログラフィックを使った共同作業のデモが行われた。もちろん、いずれも通信に5Gを用いている。

 冒頭に上げた2つのデモに象徴されるように、先に取りあげたQualcommと比べると「5Gを現時点で“実用”するとどうなるか」ということに重きをおいていたように思う。 すでに要素技術を使った商用サービスが始まっている米国ならではだろう。

ホログラフィックを使った共同作業 ホログラフィックを使った共同作業のデモ。こちらも通信の高速さと低遅延をアピールするものといえる

 去年(2018年)のCESと比べると、QualcommもIntelも5Gが“実用”フェーズに移行したことを感じさせる展示だった。

 5Gに関する展示の「本命」は、2月にスペイン・バルセロナで行われる「MWC Barcelona 2019」だろう。5G端末を含めて、より具体的な展示・発表に期待したい。

取材協力:Consumer Technology Association

ニュース解説番組「NEWS TV」で記事をピックアップ

ITmedia NEWS編集部がYouTubeでお届けするライブ番組「ITmedia NEWS TV」で、この記事を取り上げています。ぜひ視聴・チャンネル登録をお願いします。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月06日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  3. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  4. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  5. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  6. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  7. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  8. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  9. NHK ONE、簡単には「閉じられないメッセージ」表示へ 目的は“NHK受信料”の徴収 なぜ強引な仕様に? (2025年11月12日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー