店舗を変えるモバイル決済

“PayPay効果”で加盟店申し込みが急増 LINE Payが2018年につかんだ手応えモバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)

» 2019年02月08日 12時28分 公開
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WeChat Pay対応、据え置き端末、QUICPay+対応への道

 「PayPay対抗」という文脈でいえば、先方が「PayPay+Alipay+Kakao Pay」という形で東アジア圏での決済サービス同士で連携を発表する一方、LINE Pay側は「LINE Pay+WeChat Pay+Naver Pay」という形で親会社のNaverを巻き込んで“グリーン”な連携を図ったことが話題となった。このWeChat Pay提携に関する意図を長福氏に尋ねたところ、次のようなコメントが返ってきた。

 「WeChat Payが日本に入ってきてからそれなりの期間がたったわけですが、中国からの方が来るような場所にはおおよそWeChat Payが導入されたという認識です。ですが、それ以外の場所、毎日中国人が来るような店ではなく、たまに来るような店でも開拓したいという先方(Tencent)の意図と、われわれの利害が一致したという形です。全ての店舗で同時に対応するわけではありませんが、プリント型QRと据え置き端末の両方での対応を考えています」(長福氏)

LINE Pay 中国Tencentの「WeChatPay」と韓国Naverの「NaverPay」とも提携。2019年早期には訪日のWeChatPayユーザーが、2019年内には訪日のNaverPayユーザーが、LINE Pay加盟店で決済できるようにする

 現状まだ両者の連携はスタートしていないが、大規模量販店や空港などでWeChat Payの対応店舗が増える一方で、近年行動パターンが買い物による消費から体験型消費に変化しつつあるといわれる中国人観光客のニーズは、従来の加盟店開拓のスタイルではカバーできない。そこで、全国津々浦々への浸透を図るLINE Payに相乗りすることで、「強力なパートナーが欲しい」というLINE Pay側のニーズとマッチする形で展開が可能になるという流れだ。相互乗り入れではなく、あくまで中国人観光客の日本国内での“アクワイアリング”に徹するというのはPayPayとAlipayの提携と同様だ。

 据え置き端末については、既にLINE本社のある新宿のスターバックス店舗での導入がスタートしている。プリントQRの手軽さもメリットだが、金額を入力して確認するオペレーションは煩雑なので、従来のクレジットカード決済端末と同様の操作で決済できることが据え置き端末のメリットだという。同社では具体的な数字はまだ出していないものの、据え置き端末は順調に増えているようだ。

LINE Pay スターバックスの新宿店に設置されたLINE Payの決済端末
LINE Pay 操作や利用感覚はCATやCCTのような通常のカード決済端末に近いという

 QRコードやバーコードによる決済だけでなく、以前からあるLINE Payカードや、QUICPay+という非接触決済にも対応するなど、LINE Payの決済手段は比較的多様だ。長福氏によれば「非接触決済はユーザビリティの面でメリットがある」ということで、ユーザーニーズを鑑みつつ満足度向上に今後も努めていくという。

SHOPPING GOとLINE Payのすみ分けは?

 LINE Payとの連携という意味で気になるのは、LINEが2018年12月7日に開始した「SHOPPING GO」だ。一種の来店ポイント付与サービスで、提携する実店舗での決済時にLINEアプリに表示される専用のバーコードを読み取らせることで、LINEポイントが付与されるというもの。

 LINEのさらなる活用を促しつつ、店舗にとってはLINEアプリを介してプロモーションが可能な点でメリットがある。これはLINE Payと直接リンクするサービスではなく、場合によって併用も可能だ。「LINE Payがあるのに、なぜ別途SHOPPING GOが用意されるの?」という疑問を抱くが、SHOPPING GOはあくまで“LINE”のサービスであり、(異なる会社の)LINE Payとは異なる役割を持つという。

 「LINE Payは決済サービスで、SHOPPING GOはその上に載ってくるサービスだと認識いただければと思います。(LINEグループとしての)事業シナジーがある中で、まずはユーザーのことをしっかりと見つつ、どちらかといえば小売各社と一緒にやっていくサービスだと考えています。来店検知など、これまでのサービスでは見えなかったものがSHOPPING GOを通じて見えるようになる点で、例えユーザーがLINE Pay決済を利用しておらず、店舗がLINE Payのようなオンライン決済を利用していない状況でもメリットを得られます。強制的に両者の不完全なサービスを結び付けるのではなく、生まれたばかりの両サービスを使い分けて育てていくことが重要だと考えます」(長福氏)

なぜクレジットカードを登録しての送金や店舗決済ができないのか

 LINE Payでの大きな特徴として、「クレジットカード登録は可能だが、決済可能なのはLINE内部のサービスに限定され、LINE Pay決済やチャージには利用できない」という制限がある。これについて長福氏は2つの理由を説明する。

 1つは「送金」に関する制限だ。LINE Payでは個人間送金が可能だが、これはLINE Payが「資金決済法」における「資金移動業」として登録されていることに由来し、本人確認を条件に個人間送金や銀行口座への出金が可能になっている。

 一方、現状のKyashやPayPayは「送金」は可能なものの、「出金」ができない。これは、両社が資金決済法における「前払式支払手段」の事業者として登録されているからだ。いわゆる「プレイペイドカード」や「ポイントカード」の扱いで、正確には「送金」ではなく「ポイントの譲渡」に近い。出金ができないのもそのためで、銀行口座のような使い方は現状ではできない。PayPayで登録済みクレジットカードとチャージした金額を併用した決済ができず、クレジットカードを使った「送金」がKyashでできる違いはここにある。

 「LINE Payに直接クレジットカードを結び付けて送金を行うと、いわゆる信用枠の貸し付けが可能になります。そのため、銀行口座連携を介したチャージを前提としています」と長福氏は説明する。PayPayのように決済手段を切り替えることで使える機能を変更する方法もあると思われるが、あくまでLINE Payでは現状の方式で進めていく方針だという。「本人確認という登録のハードルはありますが、この点も含めて認知していただいて、LINE Payの(フル)機能を活用していただきたいと思います」(同氏)

 2つ目の理由は、より興味深い。「仮にカード登録を可能にしても、18%といわれる国内のカード決済比率を超えることはなく、そこが天井になります。キャッシュレスの普及で考えるのであれば、現金ではないキャッシュレスならではのメリットをきちんと提示して、その活用を促すべきです。クレジットカードのひも付けが全てではありません」(長福氏)

キャッシュレスは「適材適所」

 「キャッシュレスにすること自体が日本の活性化」という長福氏だが、一方、冠婚葬祭での現金利用は残るなど、効率化が全てではなく「あくまで適材適所」というスタンスだ。そんな同氏が2018年を走ってきて得られた

 最後に、みずほ銀行との提携で「LINE Bank」設立の話が出ているが、これについては「検討を始めますという段階」(長福氏)だという。少なくとも準備会社設立に合意できたばかりの段階で、具体的に何を進めていくのかを含め検討中のようだ。実際に動きが見えるのは2020年以降で、そのさらに5年後を見据えた事業計画を進めていくという。

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