店舗を変えるモバイル決済

店舗はどう“キャッシュレス”と向き合うべきか パルコとローソンの戦略:リテールテックJAPAN2019

» 2019年03月06日 17時58分 公開
[小山安博,ITmedia]

 流通関連の展示会「リテールテックJAPAN」において、パルコとローソンの関係者がセミナーに登壇し、両社のキャッシュレスに関する取り組みを紹介した。両社に共通しているのは、キャッシュレス化が目的ではなく、その先に何を求めているのか、という点だった。登壇したのは、パルコ執行役 グループICT戦略室担当の林直孝氏とローソン執行役員 金融・デジタル事業本部長の熊谷智氏。

パルコ パルコ執行役 グループICT戦略室担当の林直孝氏
ローソン ローソン執行役員 金融・デジタル事業本部長の熊谷智氏

コード決済が増えてオペレーションが煩雑に

 ローソンは、コンビニエンスストアチェーンとして数々のキャッシュレス決済への対応を続けてきた。クレジットカードに始まり、電子マネー、おサイフケータイなどをサポートしてきたが、昨今増加しているのが二次元コード決済だ。各サービスへの対応を進めつつも、「コード決済はまだ増えてくる予定がめじろ押し」(熊谷氏)だという。

パルコ ローソンが対応する決済手段

 問題は、店のオペレーションが煩雑になっている点だ。熊谷氏は「決済サービスを増やしていくのはいいが、オペレーションでミスにつながる懸念がある」と話し、簡素化するためにもPOSレジの更新を行って、Apple Payボタンを設けたり、コード決済ボタンを押せばPOS側がどのサービスのコードかを判断したりできるようにしているそうだ。また、この新型POSレジは、セルフレジにも利用できる設計になっており、セルフレジの拡大も進めていく。

 ただ、決済以外にも既に店舗のオペレーションを文字のマニュアルで教えることは限界に来ている、と熊谷氏は言う。外国人の従業員が増えたことで、動画配信やマニュアルに漫画を試用するなどの工夫を凝らして、店舗運営に問題が発生しないようにしているという。多彩な決済が存在する中で、POSに工夫を加えるのも、こうした意味で重要だという。

 パルコでも、テナントの店舗に対して研修やマニュアルでの準備を進めており、特にキャッシュレス対応では、単に導入するだけではなく、きちんと使ってもらえるようにするためにはすぐさま導入できるわけではないとしている。

パルコのキャッシュレス比率は約半分

 林氏は、人口減少によって働き手が不足していく中で、「人の接客は置き換えられない」と指摘する。パルコの場合、客層に「非計画購買」が多いとしており、この場合、欲しいものを決めて訪れているのではなく、商品を探しに来ているわけで、そこでロボットが接客しても「利用客の気持ちよさにつながらない」という。

 そこで、キャッシュレスやアプリによる提案など、「前向きな意味で人を置き換えられる」部分を進めて、店員が来店客に気持ちよくなってもらう接客を提供することに集中できる、としている。

 パルコでは、既にキャッシュレス決済比率が「ざっくり言うと半分」(林氏)だという。これは日本全体の平均より高く、既にキャッシュレス決済が進んでいる。ただ、テナント全体をキャッシュレス対応するには「投資が重たい」ため、一筋縄ではいかないキャッシュレス化の状況を吐露した。

パルコ
パルコ パルコはハウスカードを含むクレジットカードに対応するほか、一部店舗では電子マネーやコード決済に対応

利便性だけでなく「お得感」も必要

 ローソンで今、一番注力しているのは「ローソンスマホレジ」だ。これまでローソンスマホペイという名称だったが、「コード決済の一部と勘違いされると思って変更した」(熊谷氏)そうだ。

パルコ ローソンスマホレジ
パルコ レジの待ち時間解消や夜間レジ無人化による省力化に貢献し、今後10月までに約1000店まで拡大する

 この仕組みでは、来店客が自らのスマートフォンで商品のバーコードを読み取り、登録した決済手段で支払いを行ったら店を出られるので、店舗の混雑時でもすぐに購入して店を出られる。「最初は問題を抱えながら、まずはやってみなきゃということで始めた」(熊谷氏)というスマホレジだが、3月には100店舗にまで拡大して全国展開。2019年10月までには1000店舗程度にまで拡大する計画だ。

 多彩な決済手段の対応やスマホレジを進めるローソンだが、それでもキャッシュレス決済比率は全国平均だと20%程度だという。ただ、もともと早くからクレジットカード対応していながら、その比率は数%だったため、「この5年ぐらいで急伸長している」(熊谷氏)。これは電子マネーの効果だったが、さらにブランドプリペイドやApple Pay、コード決済によって、「ここ1〜2年はさらに急伸長していて、(キャッシュレス決済比率が)30%、40%は現実的な数字になってきた」と同氏。

 現金とキャッシュレスの比率が逆転することも想定する熊谷氏だが、ローソンで発生する決済は年間51億回。これをキャッシュレスに置き換えるには、キャッシュレスの利便性だけでは難しく、「お得感」も必要だという。

パルコ 平均的な数を掛け合わせただけで、決済数は51億に達し、日々膨大な数の決済をこなしているローソン

 利便性とクーポンの合わせ技でキャッシュレス比率の拡大を目指すというローソン。さらに、グループ内にローソン銀行も設立したことで、簡易な金融商品であればコンビニで提供して特典付与する、といった方向性にも期待しているそうだ。

パルコ キャッシュレスの利便性だけでなく、お得感も提供することが拡大につながるという

デジタルマーケティングへの取り組み

 ローソンでは、業務効率化に向けて研究を行っており、生産現場でのロボットか、電子タグ、AIやカメラによる画像認識など、「人がやる作業をどれだけ自動化できるかに取り組んでいる」(熊谷氏)。こうした効率化にキャッシュレス決済は必須の要素で、店舗はより来店客のニーズをくみ取ったり、経営者や従業員が余裕を持って接客したりできるようになる、というのがローソンの目指す方向だ。

パルコ ローソンが研究している次世代コンビニの姿

 両社に共通しているのは、デジタルマーケティングへの取り組みだ。林氏は、アプリと決済によって、ユーザーの興味関心や購買行動などを把握、分析し、何を提案すれば次回の購買につなげることができるかができるようになってきたという。熊谷氏も、キャッシュレス決済によって本当のニーズに応えることで、繰り返し店舗を利用するヘビーユーザーを増やすことを目指す。

パルコ パルコでは、スマートフォンアプリとキャッシュレスなどのデータの組み合わせで、ユーザーの行動分析を強化。さらに今後、IoT機器によってユーザーの動線も分析して、よりニーズに合った提案ができるようにする
パルコ ローソンは、アプリ以外にもさまざまなデータやツールを活用して「後一品」の購入による売り上げ増につげたい考え

 キャッシュレス決済を単なるゴールにせず、業務の改善や売り上げへの貢献につなげることが、パルコとローソンの狙いだ。

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