店舗を変えるモバイル決済
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» 2019年03月09日 06時00分 公開

そのキャッシュレス、本当にスマホやQRが必要ですか?鈴木淳也のモバイル決済業界地図(3/3 ページ)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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スマートフォンなしの決済体験

 中国の事例が示すように、モバイル決済は確かに快適だが、スマホが必ずしも必要とは限らない。例えばAmazon Goでは入店時にスマホとアプリの組み合わせが必要だが、一度2次元コードを読み込ませてゲートを通過すれば、後はスマホの電源を落としてカバンの中にしまっても構わない。店内にいる間はAmazon Goのバーチャルカートの内容を確認できないし、端末そのものは店内でのユーザー追跡には使われていないからだ。

 そのため、例えば複製が容易ではないICカード(クレジットカードなど)にAmazon Goのアカウントをひも付けておけば、入店のゲート通過時にICカードをかざすだけでよく、商品内容が合っているかを後で確認する以外にスマホは不要だ。究極的には、顔認証などの生体情報だけで入退店を判断してもよく、ICカードを含むデバイスを一切持たずにAmazon Goのようなサービスが利用できるはずだ。

コード決済 Amazon Goではゲートで入場時にスマホアプリに表示させた2次元コードをかざす必要がある

 現状、中国で実験されているような自動運営店舗や自販機でも、全てスマホとQRコード(2次元コード)を使った入り口での認証が前提となっているが、これは前述のようにWeChatPayやAlipayを通じてアプリ導入の手間を省くための手段だからだ。

 ローソンでは「スマホレジ(スマホペイから名称変更)」という仕組みを一部店舗で導入しており、買い物客は自身のスマホに導入したローソンアプリを通じて自分で会計を行い、レジに並ばずに退店できるが、この仕組みはもともと中国の上海店舗で先行導入されて実験されていたものだ。

 ローソンの上海店舗の場合、店舗でQRコードを読むとWeChatのミニプログラムではなく、いきなりAPKが落ちてくる。恐らく、日本ではWeChatとAPKの両方式ともに導入するのは難しいだろう。あくまで日々の買い物をローソンで行うようなヘビーな利用者が、自身の利便性を向上させるためにローソンアプリを導入することに期待するしかない。

コード決済 中国の杭州市に設置された無人コンビニのBingo Box
コード決済 Bingo Boxの入場はAlipayアプリでの認証作業が必要

 昨今のコード決済の乱立は、大量の単機能アプリ乱立と、分断された体験の断片化に等しいと考える。つまり、1つの決済手段のためだけに特定のアプリを導入し、しかもそれを場合に応じて使い分ける必要がある状況だ。

 こうした「アプリ導入」のハードルの高さや使いにくさの面から、NRFで展示されていた自動運営店舗のデモの中にはスマホアプリの認証に代わり、クレジットカードを使った解錠や入場を行い、商品を取り出して退店した時点で自動的に認証に使ったカードで決済が行われる仕組みを採用しているものがあった。

 他に、米サンフランシスコでStandard Cognitionというスタートアップ企業によって実験店舗が運営されている「Standard Market」では、当初はスマホアプリを利用して本人認証や追跡を行っていたものの、ICカードでの代替も可能にする仕組みを用意するなど、サービス利用のハードルを下げる工夫を進めている。

コード決済 米カリフォルニア州サンフランシスコにあるStandard Marketでの店舗入場はスマホアプリが必要だが、ICカードなど他の簡易な入場手段の併用も検討されている
コード決済 クーラーボックス内のカメラで商品の画像追跡と人間の行動分析をAI処理する自販機ソリューションにおいて、扉の開閉は中国で一般的なQRコード認証ではなく、クレジットカードの仕組みを利用して後会計を行う。NRFでの参考展示

 ここで言いたいのは、タイトルの「そのキャッシュレス、本当にスマホやQRが必要ですか?」だ。「Frictionless Experience(摩擦のない体験)」というキーワードがあるが、スーパーやコンビニでのレジ待ち行列にうんざりした人々がAmazon Goを体験して退店のスムーズさに驚くように、既存の問題を解決する手段としてテクノロジーを用いることが重要だ。

 興味深いのは、中国におけるトレンドの本質はテクノロジーではなく、ユーザー体験にあるという点だ。例えば、ビジネスモデルとして非常に注目されているAlibaba Group直営スーパーの「盒馬鮮生」だが、前述NRFでは「Freshippo」の名称(「Fresh」+「Ship」+「Hippopotamus」を組み合わせた造語)で専用のブースを構え、サービスそのものではなく「ユーザー体験」や「システム」を販売するためにパートナーを探しているのだという。

 一見すると無駄にも思えるようなエンターテインメント性やアイデアは、これまでは日本からどんどん飛び出していたのではないかと思う。だが現状でこうした余裕もなく、狭い市場で椅子取りゲームをしている様子は非常に残念ではある。

コード決済 サービスではなく、体験やシステム販売を狙うAlibabaの米国攻略戦略
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