5Gに過度な期待は禁物/eSIMはMVNOにとってチャンスモバイルフォーラム2019(2/2 ページ)

» 2019年03月18日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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eSIMはMVNOにとってチャンス?

 5Gとは別の新しい技術、eSIMが広がりつつある。当初は組み込み系向けとして期待されていた技術だが、最新のiPhoneがeSIMに対応したことで、コンシューマー向けにも波が来るのではないかという見方もある。

 浜田氏は「サービスの幅が広がる」と言いつつも、MVNOが自身でSIMの管理をするフルMVNOになり、HLR/HSS(加入者管理機能)を用意する必要があるため、「できる事業者が限られる」とコメント。「5GではMNOが持っている機能を機能単位で出してもらえることを期待している。できればeSIMもいろんなMVNOが活用できれば多様なサービスが生まれていくのではないか」と語った。

 石川氏は、MWC19 Barcelonaでプレス向けに米TelnaがeSIMを配布したことを紹介。契約手続きが非常に簡単で「eSIMの手軽さを実感できた」と語った。MVNOがeSIMに対応すれば、契約手続きが今よりもずっと簡単になり、「eSIMの登場によって、MVNOや格安スマホの市場が一変する可能性がある。MNOはeSIMをやる気がないので、ここでMVNOがeSIMの流れを作れるようになると面白い存在になれるかもしれない」とポテンシャルの高さを指摘。一方で、「eSIMは簡単に変えられるので、それだけ競争も激しい」と語った。

 なお、ソフトバンクは2018年のiPhone発表時、eSIMに対応する予定とコメントしたが、現時点でサービス開始の情報はない。

今後10年、MVNOが発展するために何が必要か

 最後に総括として、今後10年を見据え、MVNOにとって必要なことが3氏から語られた。

 石川氏は「ユーザーがやめやすい環境を作ってほしい」と要望。現状のMNPの手続きは、新旧のキャリアで手続きをする必要があり、面倒だと指摘する。米国のように新キャリアだけの手続きにすべきとし、「先日、Webでも(MNPの)手続きできるようになって第一歩。もっと踏み込んでいけばユーザーの流動性が高くなる。まずはそういったところから始めて、ユーザーの選択肢を増やすのが業界にとって必要なこと」(石川氏)

 北氏は「MVNOが言い訳できないような環境作りが必要」と述べた。そのためには、「大きなものから小さなものまで課題を挙げて、1つ1つつぶす作業を地道にやり続けるしかない」という。

 「基本的にはMVNOとMNOで話し合い、らちがあかなかったら総務省の会合で受け取る。5Gになったら、今想定していないような新しい課題が出てくる。それをしっかり逃げずに1つ1つ解決していく」(北氏)。その一方で、先述したようにMNOとMVNOとのWin-Winな関係も模索していくべきだと語った。

 「日本の携帯電話市場の健全化、料金の低廉化のために、既存MNOにプレッシャーをかける存在としてMVNOは絶対に必要。環境がどんどん変わるが、今後もお手伝いしていきたいと思っている」(北氏)

 浜田氏は「最終的にMNOとMVNOはWin-Winの関係になれるはず。そうしていきたい」と意気込んだ。高品質なネットワーク設備や開放性をリスペクトしていると語り、モバイル研究会などの方向性はMNOとMVNOの敵対関係を是正しようとしているとの考えだ。

 「モバイル研究会にはいい方向に制度を変えていただくとともに、われわれMVNO自身は努力や創意工夫で付加価値、新たな価値を付けていけばWin-Winになれるのではないか」(浜田氏)

 最後にモデレーターを務めた田中編集長がコメントした。

 「MNOは5Gのサービスローンチに向けてパートナーとの『共創』『協創』というキーワードを掲げているが、パートナーは異業種が中心でMVNOは入っていないようだ。MVNOもぜひパートナーとして5Gのサービスに取り組んでほしい。現在、MVNOには逆風が吹いている印象だが、中古端末の取り扱いやeSIMなど、MVNOでないとできないことがある。今後、新たなルールが策定されるが、MVNOが健全な競争ができるような制度が作られることを期待したい」

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