―― ちなみに、ソフトバンクとLINEとでは、競合するサービスもあります。PayPayとLINE Payはその代表例だと思いますが、こういうときに、LINEモバイルとしてはどちらを推していくのでしょうか。
嘉戸氏 個別に判断するという考え方です。どちらと連携した方がLINEモバイルにとっておいしいかを普通に考えて判断するということですね。両方を見て、どちらが本当にメークセンスする(意味がある)かを見ていきます。
―― 今の例でいうと、決済に関してはLINE Payでしょうか。ポイントでもLINEと連携していますし。
嘉戸氏 そもそもLINEモバイルがLINE IDと一体化しているので、LINE Payの方がやりやすいというのはあります。PayPayだと、別のものを挟まなければいけない。普通に考えると、LINEの方がやりやすいというのはあります。トラフィックもどちらが多いかというとLINE Payになります。一方で、PayPayでも何か成功事例が出せれば、入れることもできます。今は是々非々でそんな考え方をしています。
―― ゼロレーティング(データフリー)を早い時期に始めましたが、今、総務省ではネットワークの中立性も議論されています。この状況をどう見ていますか。
嘉戸氏 ゼロレーティングはまだまだ黎明(れいめい)期のサービスです。今の(総務省での)話は、一定の規制をかけるというより、無法状態だったものをちゃんと考えようというステータスに見えます。支配的事業者がゼロレーティングをやるのはどうなのかというところに、議論も集中するのではないでしょうか。悲しいことに、LINEモバイルは支配的事業者ではありません。
ただ、GoogleやAmazonなど、巨大な資本を持つ事業者がものすごいお金を使い、ゼロレーティングをやって支配的事業者になる可能性もあり、そこは難しいところだと思います。今は、それをみんなで考えていこうという段階だと思います。
LINEモバイルは、割と早い段階でゼロレーティングをやった事業者の1つですが、正直、300円キャンペーンよりも、ゼロレーティングの方が満足度も高いんです。なぜLIENモバイルに入ったかというところでは、圧倒的なのがゼロレーティングなので、これからどうしていくのかは悩ましいところです。
―― 接続料の議論もありますが、こちらについてはいかがですか。
嘉戸氏 正直、接続料(の仕組み)は古いと思っています。誰のためになるのかというのは、もっと考えなければいけないのではないでしょうか。MNOとMVNOが対立するのも、軸として変えた方がいいと思います。
SIMカードの維持コストも固定でかかっているので、そのウェイトも増えています。音声だと、ドコモで670円ぐらいが必ずかかる。あれがどうなるのかも、非常に気になっています。ボリュームディスカウントは考えてもいいんじゃないかなと思いますね。
―― MVNOに逆風が吹いているとい言われる中でも、LINEモバイルはユーザー数が増えています。
嘉戸氏 (他社の新規契約が減っている)影響は、むしろうちのせいでもあるんじゃないかと(笑)。ISP系のところが落ち始めているのは事実で、シェアの構造が変わってきているのは見えています。ただし、新規開通の数は、昔だと黙っていてもガーっと伸びていましたが、だんだんそれがフラットになっているのは感じますね。昔ほど簡単には取れないというのはまさにそうで、(サブブランドは)目の上のたんこぶです。あちらからすると、LINEモバイルが目の下のたんこぶでしょうけど(笑)。
今後、ドコモさんの料金が下がり、それに合わせてサブブランドの料金が一段下がったとき、MVNOがどうやるかは考えていく必要があります。各社とも料金プランは2、3年ほとんど変わっていませんが、そこが変えてくるかもしれない。変わらない可能性もありますが、ここは大きく動くと思います。
mineoが3キャリア目としてソフトバンク回線を追加したときと同じで、LINEモバイルがau回線を追加し、マルチキャリア化する理由も、それぞれのキャリアを使っていたユーザーを取り込むところにある。SIMロック解除を周知させ、回線を変えさせるよりも、トータルで見ればコストパフォーマンスが高いということだろう。新規契約者の伸びが、それを示している。
ただ、LINEモバイルはソフトバンクグループのため、競合であるauの回線を追加するのは、大胆ゆえに波紋を広げるかもしれない。特にドコモは、社長の質疑応答や有識者会議などを通じて、MNOやそのグループが、他のMNOから回線を借りることに難色を示している。現時点で規制はできないが、総務省で何らかの交通整理は必要になりそうだとも感じた。
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