2018年10月、「ドコモショップが予約制に移行する」という報道が日経から伝えられた。ITmedia Mobileも、ドコモショップ関係筋から「完全に移行するようだ」と回答を得たことから「完全移行」という言葉を用いて報じたが、NTTドコモは「完全ではなく8割だ」という。
NTTドコモ営業本部販売部 代理店担当部長の北村貞彦氏に、来店予約の拡大施策について話を聞く機会を得た。来店予約拡大でドコモが目指すものとは。
まず、ドコモは来店予約拡大に着手する理由として、北村部長は「ショップの混雑」を第一に挙げる。
特に都心店舗や郊外の大型店舗では、来店客の待ち時間が長くなっていることが問題となっている。待ち時間の長時間化に伴い、来店客の満足度も下がることから「喫緊の課題だ」と北村部長はいう。
来店客の満足度を向上させたい。全国のドコモショップの満足度を調査したところ、関西のある代理店が運営する店舗で満足度が高いことが分かった。その店舗では、来店客の比率として予約客が8割に上っていた。これまで、ドコモとして店舗に指示していた予約比率は2割程度だった。
関西代理店の独自施策を聞き取り、今まで店舗カウンターの2割程度しか割いていなかった予約対応をカウンターの8割まで増やすことを、18年夏から一部店舗で始めた。
テストケースに選んだのは、都心小型店舗の飯田橋店、直営の大手町店、郊外大型店舗の青葉台店(横浜市)の3店舗。
施策を始めて数カ月で、3店舗の来店比率は8割まで予約を増やせた。しかし、特に青葉台店では課題も見つかった。来店予約拡大を始めたことで、一時は販売数が落ちたのだ。
青葉台店はカウンター数も待ち席も多く備える大型店舗で、利用客の中心はファミリー層だ。予約拡大の施策を始める前は、土日に来店するとカウンター対応が数時間後と案内されてしまうなど、混雑が常態化していた。
この状態にメスを入れるべく、予約対応カウンターを8割まで増やしたところ、当初は1日に対応できる接客人数が施策前に比べて減少してしまった。
接客人数が減少した理由として、北村部長は「元々の接客方法に課題があったことと、スタッフの不安が挙げられる」という。
カウンターの端末を利用しなくても案内できるようなこと、例えばスマートフォンの初期設定などもこれまではカウンターで対応してしまっていた。これに加え、予約の時間枠の中で確実に客対応を終えられるかスタッフが不安に思うという、業務面と心理面から、つい枠を長めに確保してしまっていた。
営業時間は変えていないため、1人当たりの枠を長く取るとその分接客できる人数は減る。接客人数が減れば、端末やサービスの販売数も比例して落ちてしまう。
「一時期は『もうやめてしまおうか』とも思った」と北村部長。
しかし、代理店とともに接客対応の改善を続けた結果、枠の長さを適切に抑え、接客人数を増やし、販売数も回復した。現在の青葉台店の待ち席にはほとんど客が座っておらず、来店予約客はほとんど来店15分以内にカウンターへ案内される状態だという。
「販売数回復に至るまで、現場のスタッフにかなり苦労をさせてしまった。しかしノウハウもここでたまったため、他の店舗に展開していきたい」(北村部長)
予約の拡大は、店舗にとっても顧客にとっても良いことだと北村部長は強調する。
「お客さまは待たされた分イライラしてしまう。手続き自体がすぐに終わってしまうと『あんなに待たされたのに』とクレームも来る。待っているお客さまの顔色は店舗スタッフも見ていて、こうしたクレームが来ないよう、気を使って長めに対応してしまう」(北村部長)と、従来の混雑状況では悪循環が起きていたと指摘。
「予約して待たずに接客してもらえた方が、お客さまも快適で、スタッフの心理的負担も軽減される。この状態の方が、スタッフもサービスの提案などがしやすくなる」(同)
顧客には、ポスターやチラシで予約の認知拡大を図る他、予約客来店時に「予約のお客さまがいらっしゃいました」と声に出して案内することで、予約なしで来店し、待っている客へも間接的に知らせている。
来店予約はWeb手続きの他、電話、店舗での当日予約もできる。こうした認知拡大の結果として、来店客の比率は、前日までの予約が6割、当日予約が2割、予約なしのフリー来店が2割になった。
来店予約8割の店舗は、ドコモショップ全店舗約2400店舗のうち1000店舗まで増やす予定だ。
「現場のスタッフが不安でいっぱいということは聞こえている。ドコモ支社と代理店でチームとなって、現場をサポートする体制を作っている。初めは不安かもしれないが、安心して任せてほしい」(北村部長)
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