Xiaomiが2019年3月に発表した2018年度決算によると、スマートフォンに加えIoT製品も好調な販売を記録しており、売上高は約1749億元、利益は約135億元と黒字となった。2018年第4四半期だけを見ると売り上げが若干落ちているが、これは2019年に向けての製品販売スケジュールの調整によるもの。現在低価格モデルとして展開しているRedMiは、2019年から別ブランドとしてXiaomi本体とは別の製品として販売される予定だ。
つまりハイスペック、プレミアムブランドの「Mi」(Xiaomi本体)と、低価格、高コストパフォーマンスのRedMiが別々に展開される予定なのだ。この戦略はHuaweiの「Honor」が成功を収めている。今やHonorは「オンライン向け、コストパフォーマンス製品」ではなく、専用のリテールストアを持ち、しかもプロセッサにKirin980を搭載するハイスペックモデルもそろえる一大ブランドにまで成長した。
Huawei本体の「P」「Mate」「Nova」シリーズと競合しつつも、それらの穴を埋める製品を展開することで、Huawei全体のスマートフォン販売数増をけん引しているのだ。
中国市場を見ると、Huaweiの強さは際立っている。大手調査会社カナリスによると、2018年の中国国内スマートフォン出荷台数数シェアはHuawei(Honor含む)が27%で断トツのトップ。2007年の20%から大きく伸ばした。一方、Xiaomiはシェアを11%から12%に引き上げたものの、出荷台数の増加率はHuaweiの16%に対してマイナス6%と明暗を分けてしまった。Xiaomiのマーケット展開方法ではHuaweiとの差を埋めるのは難しく、RedMiの本体からの切り離しで勝負をかけようとしているのである。
スマートフォン成長が右肩上がりに伸びているインドでは参入1年でSamsungを抜き、Xiaomiがトップとなったが、いずれインドも市場が飽和することは見えている。インドネシアもシェアは2位だが、この2つの大国の次に成長が期待できる大きな市場は世界には残されていない。Xiaomiは新興国では価格勝負で数を伸ばしてきたが、今後は価格以外で消費者からの支持を受けるための戦略変換が必要だ。
先進国への参入は、インドやインドネシアのような大きな販売数の増加は期待できない。しかしXiaomiのブランド力を高める効果は十分にある。パリの街中をオレンジ色に「MI」のロゴの入ったバッグを持った消費者が歩くだけでも十分目立つ。ちなみにフランスの通信事業者の代名詞といえばOrange。その名の通り、オレンジ色がコーポレートカラーでこれはXiaomiと一致する。
Xiaomiの店舗を訪れる客が増えれば同社のIoT製品へ興味を持つ消費者も増えるだろうし、品質の高いスマートフォンを実際に手に取ってもらえれば、既に価格競争が始まったスマートフォンから制御できるLEDライトなどのIoT製品も、Xiaomiの製品を選んでくれるようになるだろう。
2018年のXiaomiのスマートフォン販売台数は、悲願だった1億台を初めて突破した。しかしもはやスマートフォンの「数」だけを追う時代ではないだろう。同社の売り上げはいまでも全体の3分の2をスマートフォンに頼っている。今後売り上げを安定させながら伸ばしていくには、IoTや生活製品、そしてインターネットサービスという他の柱の売り上げを増やす必要がある。そのためには「Xiaomi」のブランドを人々から愛され、信頼されるものにしなくてはならない。2019年のXiaomiのスマートフォン展開は「ブランド力アップ」を図るために、これまでとは全く異なるものになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.