レンタルWi-Fiにはない「圧倒的な利便性」 海外SIMに注力するアイツーの戦略(3/3 ページ)

» 2019年04月24日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]
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キャリアのローミングは「二重取り」

―― 一方で、キャリアもWi-Fiルーターのレンタルに対抗するため、国際ローミングの料金を引き下げています。ドコモとauが24時間980円になりましたが、この影響がどう出たのかを教えてください。

山本氏 2つの側面があります。1つは、MVNOには基本的にデータローミングがなく、SIMフリーやSIMカードのことを分かっている方が多いので、そこでは大きな影響がありません。3大キャリアの方々は、SIMカードのことがよく分かっていないので国際ローミングを使っているということも、感じています。

 もう1つは「二重取り」の問題で、キャリアの国際ローミングは、980円払っても、980円分の容量がもらえるわけではありません。今回のゴールデンウイークだと、ちょうど月末から始まるので、国内で“ギガ不足”になってしまう可能性もあります。その状態で海外に行き、現地で容量を追加するのかという問題は当然あると思っています。

 家族旅行に行くのは年末やゴールデンウイークで、月末にまたがることが多い。「ギガ(容量)が足りない」と常に言っているような世代も一緒に旅行に行くときに、それはどうなのかなと思います。980円取るなら980円分の容量をもらえればいいのですが、そうではないのはユーザビリティとしてあまりよくありません。逆にうちは、容量分の料金を払う形で、そこに気付いていただければ、ちゃんと買っていただけます。

トラベルSIM anywareの新バージョンも準備中

―― 開始当初と比べて、SIMロック解除の要件がどんどん緩和されています。その影響はどう出ていますか。

山本氏 2014年の開始時点は、本当にヒドイ状況でした(笑)。SIMフリー前夜なのにやってしまいましたからね。ですから、2015年には、SIMフリーのスマートフォンも一緒に売っていました。そこからSIMロック解除が義務化され、条件が緩和されてからどんどん伸びていきました。MVNOの伸びと比例していると思います。今回(の総務省の緊急提言を受けた制度改正)は、中古スマホの利用者が伸びることにも熱く期待しています。

―― トラベルSIM anywareは、Amazonでの販売が終了してしまったようですが、これはなぜですか。

山本氏 規約で6カ月以上継続して使えるものがダメとなっていたようですが、GigSkyは売り続けることができているので、正確にはAmazon側がダメと判断したものがダメになるようです。その詳細なルールが開示されていないので、文句はいいつつも、BAN(削除)されるまで出し続けることにしました(が、結果として、販売終了セールが好評で、在庫が切れてしまった)。

 僕らの中では、このSIMカードの売りの1つが「電話」で、英国の「44」番号が付きます。電話はLINEで済ませられればいいのですが、米国だったらWhatsApp、中国だったらWeChatと、それぞれの地域で使われているアプリは違っていて、アプリ同士も相互につながっていません。現地で初めて会う人と連絡するには、やはり電話が便利な手段ですが、ローミングだと受信料がめちゃくちゃ高い。それもあって、受信料が0円で固定費が掛からないということで人気でした。

 ただ、その反面、いくら海外のSIMカードとはいえ、個人の認証ができないAmazonでそれを売り続けていいのかという疑問もありました。それもあって、Amazonからは離れることにしました。

 ちなみに、ここでリークしてしまいますが(笑)、トラベルSIM anywareは、新バージョンを準備しています。今までの電話は、当たり前ですがSIMカードを端末に入れているときにしか使えませんでしたが、新バージョンはアプリがIP電話とのコンパチになっています(互換性がある)。その結果、SIMカードが入っていないときでも、データ通信ができればその番号で発着信できるようになります。日本に帰ってきて、SIMカードを外しても、その番号で着信できるということです。

シェアは勝手に上がっている

―― 今年のゴールデンウイークは10連休ですが、通常より売れ行きがいいといったことはありますか。

山本氏 今のところ、去年の大型連休とあまり変わりません。

―― それは意外です。

山本氏 ゴールデンウイークに海外旅行へ行く方々は、まだまだレンタルWi-Fiが中心と考えていただいてもいいかと思います。

―― なるほど、まだ詳しい人や海外に行くことが多い人が中心ということですね。

山本氏 ただし、国内のWi-Fiルーター市場が縮小してしまったように、ある日突然一気に移ってくることもあり得ます。やはり圧倒的な利便性には勝てませんからね。そこに気付いていただければ、可能性はあります。

 幸い、スタートしてから5年がたち、シェアは上がっています。シェアは、mineoさんや楽天さん、TAKTさんが(海外SIMの取り扱いを)やめてしまったので、勝手に上がっているということもありますが(笑)。ただ、ユーザー目線で始めたことや、きっちりサポートする値づけになっていたことは大きかったと思います。ビッグプロモーションもしていませんし、誠実にやってきたことが実を結んでいると感じています。

取材を終えて:認知が上がればWi-Fiルーター逆転の可能性も

 インタビュー中、山本氏とは「海外SIMあるある」で盛り上がってしまったが、自身でさまざまなサービスを使ってきた経験を踏まえているだけに、発言には説得力があった。海外SIMから撤退するMVNOも出てきている中、きっちりサービスを継続できているのは、ユーザーの立場に立った企画、設計ができているからだと感じた。

 大型連休の影響があまりないというのは、意外だった。それだけ、まだ海外用のSIMカードを買うという行為が一般化していない証拠だろう。ただ、実際使ってみると、確かにWi-Fiルーターのレンタルは難点が多く、返却なども手間がかかる。山本氏が語っていたように利便性やコストの安さが認知されていけば、逆転の可能性もあるのではないかと感じた。

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