ドコモは分離プラン/5G時代をどう戦い抜くのか? 吉澤和弘社長インタビュー(1/3 ページ)

» 2019年07月11日 18時27分 公開
[田中聡ITmedia]

 2019年は、モバイル業界が大きく変わる年になる。改正された電気通信事業法が2019年秋に施行され、分離プランが義務化される。これを見据えて、NTTドコモは6月から新料金プランを提供している。

 分離プランだけでなく、改正法案の詳細を決める研究会の終盤では、「行きすぎた囲い込みを防止する」という名目で、解約金の値下げ、端末購入補助と長期割引の制限といった案も出された。

 10月には楽天モバイルがキャリアに参入し、台風の目になりそうな予感が漂っている。2020年春に商用サービスが開始する「5G」では、各社がプレサービスを準備しており、ドコモが2019年9月20日のラグビーワールドカップに合わせてプレサービスを提供する。

 今回、NTTドコモの吉澤和弘社長にインタビューをする機会に恵まれたので、改正法や5Gを中心に、お話を聞いた。

吉澤和弘 NTTドコモの吉澤和弘社長

新料金プランの契約数は300万を突破

―― 新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の手応えを教えてください。

吉澤氏 6月1日にスタートし、先週の土日(7月6〜7日)で300万を超えて、301万契約になりました。(2019)年度末で1700万契約を計画していますが、われわれが想定しているペースで推移しています。2014年6月に開始した「カケホーダイ&パケあえる」は、実はもっと初速はよく、1カ月で500万契約になりました。それに比べると少ないですが、カケホーダイでは通話定額を入れたので、どっと来ました。

 今回は月々サポートが終わった方から順番に来ると想定していて、徐々に年度の目標に近づくと思います。そういう意味では順調ですし、いろいろ言われてはいますが(苦笑)、お客さまからは「安くなった」と言われています。

 今までよりも使いやすいこともCMでやっていて、だいぶ浸透もしています。店頭では料金相談を今まで以上にやっています。Webサイトでも、簡易シミュレーションだけでなく、dアカウントを入力するだけで新料金プランに乗り換えるべきかをアドバイスする「しっかりシミュレーション」を提供しています。

ギガホ、ギガライト 新料金プランの「ギガホ」と「ギガライト」

―― ギガホとギガライト、どちらが特に選ばれていますか?

吉澤氏 比率はギガライトの方が高いですね。契約率でいうと、3割弱がギガホ、残りがギガライトです。

auの新料金プランは問題視していない

―― ドコモが料金を発表した後の5月に、KDDIも対抗プランを発表しましたが、どう見ていますか。

吉澤氏 ライトユーザー向けのプランは同じような立て付けで、同居家族3人で1000円引きと、完全に合わせてきました。ただ、われわれがPRしなければいけないのは、ドコモは同居家族でなくても、3親等の関係さえあれば、全ての方が割引を受けられることです。

―― KDDIが「auデータMAXプラン」で展開する完全使い放題や、「auフラットプラン7プラス」で展開するカウントフリー(ゼロレーティング)に対応するプランは提供しないのでしょうか。

吉澤氏 7GB(のauフラットプラン7プラス)は、そういったものもありだと思います。データMAXプランはギガホの対抗プランだと思いますが、テザリングは20GBといった条件もありますし、3日間なのか何日なのか分かりませんが、時間の制限もある。映像をずっと見ていると速度が落ちるので、「完全(使い放題)」ということにはならないと思います。

 対抗上は、それほど問題視していませんが、5Gを見据えたときに、ギガホをどう発展させていくのかは検討していきます。ギガホは(ギガライトの)7GBから+1000円なので、旧プランで5GB以下だった方で、ギガホに来る方が増える傾向にあります。

―― つまり大容量プランの利用率が、新プランでは増えていると。

吉澤氏 そういうことになります。使い方自体は月ごとに濃淡がありますが、そうはいっても1000円違いなので、知らず知らずのうちに使ってしまう……という方々が乗り換えやすいのでしょう。

―― ファミリー割引が適用されれば500円〜1000円が割り引かれるギガホとギガライトですが、以前、吉澤社長は、旧プランの「シェアパック」を契約していないと、「ファミリー割引」の対象にならない……と誤解している人がいるとおっしゃっていました。この誤解は解消されましたか?

吉澤氏 しっかりシミュレーションでもご案内していますし、コールセンターにお問い合わせがあったときに「シェアしていないとファミリー割引にならないわけではない」とご案内しています。ファミリー割引のグループに入っているかどうかは、すぐに調べられます。

夏モデルは「Xperia Ace」が特に売れている

―― 夏モデルの販売状況はいかがでしょうか。特に人気のモデルがありましたら教えてください。 

吉澤氏 分離プランを踏まえて、端末はミッドレンジで4万円以下のモデルを充実させました。そちらは順調で、特に「Xperia Ace」が売れています。フラグシップは、「Xperia 1」や「Galaxy S10」はよく売れていると感じています。

 フラグシップとスタンダードの違いは通信速度が1つ。カメラ性能の違いもありますが、スタンダードモデルでもスマホの機能を十分果たせていますし、何ら支障はない。まだフィーチャーフォンもたくさんあるので、早くシフトさせたい。

Xperia Ace 特に売れているという「Xperia Ace」

―― 米国からHuaweiに対する禁輸措置の影響で、「HUAWEI P30 Pro」の予約がいまだ停止していますが、再開のめどは立っているのでしょうか。

吉澤氏 「G20」でトランプ大統領から(禁輸措置を)緩和する旨の発言があり、その後、商務省長官が「安全保障上の脅威がなければ許可する」という発言もありました。ただ、P30 Proをどうするかは、AndroidのOSと半導体、そこについてはまだOKとは言われていないので、そのOKが出ないと、OSバージョンアップもできなくなりますし、それでお客さんにご迷惑は掛けられないので、今は状況がハッキリするまでは注視しています。

【訂正:2019年7月12日10時9分 初出時に、「AndroidのOSとQualcommのチップ」と記述していましたが、P30 ProはQualcommのチップを採用していないため、「AndroidのOSと半導体」と訂正致しました】

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