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キャッシュレス化の本質は“消費行動のデータ分析”にあり 楽天ペイメント中村社長が語るRakuten Optimism

» 2019年08月01日 06時00分 公開
[井上晃ITmedia]

 7月31日に開幕した「Rakuten Optimism 2019」のビジネスカンファレンス「ワールド・ビジョナリー・カンファレンス」にて、楽天ペイメントの中村晃一社長が登壇。キャッシュレス化が進む背景と、楽天としてのビジョンを語った。

楽天ペイメント 楽天ペイメントの中村社長

キャッシュレスブームの背景にあるもの

 そもそも、キャッシュレス決済が注目される背景には、キャッシュレス化を推進する国策が関係する。2017年にはキャッシュレス決済の割合が約2割だったが、これを2025年に倍の約4割まで伸ばす方針。2020年度に承認される予算を含めると、計約4000億円規模の予算が投下される見込みといい、2019年10月からの消費税増税のタイミングには、経済産業省が「消費増税・ポイント還元施策」も実施される予定だ。消費者に対するポイント還元が実施される他、店舗には決済端末導入費用、決済手数料などが補助される。

楽天ペイメント 国が主導する消費者向けポイント還元では、指定の支払い手段と店舗で購入した場合、5〜2%のポイント還元が受けられる予定

 こうした展開を受けて、「加盟店側の意識も高まっている」と中村氏は話す。ジェーシービーによるインターネット調査の結果を例に挙げ、「現金払いよりもキャッシュレス決済の方が便利」と思う人が80%いる他、店舗の会計担当者も「勤務場所にキャッシュレス決済があった方がいい」と思う人が約75〜80%に上ることを紹介した。

楽天ペイメント コンビ二では83%、居酒屋では79%、タクシーでは75%がキャッシュレスを歓迎したという調査結果

 実際にキャッシュレス決済を店舗に導入して期待できる効果は、会計時間の短縮やマーケティングでの効果だ。中村氏は、楽天Edyを導入した店舗でのデータを紹介し、「現金で平均28.3秒かかっていた支払いプロセスが、楽天Edyでは18.8秒に短縮され、33%向上した」と解説。また、Edyを伴った会員証では、特典を設けることで来店回数と購入単価の上昇があったといい、マーケティングにも貢献したことを説明した。

楽天ペイメント 楽天Edyの導入による生産性の向上の効果について
楽天ペイメント 楽天Edyを活用したマーケティングの効果について

 現金支払いができず、キャッシュレス払いのみに対応する「フルキャッシュレス」店舗も登場している。こうした店舗を導入する「プロント」や、ロイヤルホールディングスの「GATHERING TABLE PANTRY」では、決済業務が効率化されたことで、より調理時間を確保できるようになったり、ピーク時の店舗スタッフを大幅に削減したりできたという。楽天自身も「楽天生命パーク宮城」や「ノエビアスタジアム神戸」をフルキャッシュレス化し、オペレーションを効率化でき、売り上げも伸びたと中村氏は話した。

楽天の強みは多様なニーズを満たせること

 楽天は話題のコード決済だけなく、多種多様な決済手段をそろえている。中村氏は「お客さまのニーズに幅広く対応している。来店促進から決済、マーケティングまで一気通貫でサービスを提供できるのが私どもの強み」と話す。

楽天ペイメント さまざまな決済手段を取りそろえている楽天
楽天ペイメント 楽天インサイトによる第3回楽天ポイント導入効果調査(2018年11月)の結果では、スーパーマーケットでは15%、ドラッグストアでは19%が楽天ポイントの利用可否が来店の動機につながったという

 例えば、来店客が楽天ポイントカードを利用することは、店舗がID-POS分析を行い、販売促進のアプローチにつながる。2019年1Q決算発表資料の数値では、取扱流通金額は前年同期比で+98.3%の成長を見せた。また、ユーザーアンケートで「楽天ポイントカードに対応したことで新たに訪れる店舗ができた」という人が一定数いたことを紹介。加えて、多くのカテゴリーで楽天スーパーポイントをためることが動機になり、利用頻度や利用金額が増えたこともアピールした。

 続けて、中村氏は他の支払い方法の現状についても解説。クレジットカード「楽天カード」の取扱流通金額は約7.5兆円で、前年比+20%に。プリペイド式の電子マネー「楽天Edy」は2019年7月1日時点で約1億2060万枚が発行されており、約65万箇所で利用可能になった。

楽天ペイメント スマートフォンアプリの「楽天ペイ」に加え、楽天Edyや楽天ポイントに対応した加盟店を会場周辺の地図に表示させたスライド。楽天のスマートフォン決済加盟店は全国に約300万箇所あるという

キャッシュレス化が進んだときにもたらされるもの

 中村氏は「支払いデジタル化の本質は、決済情報、消費行動のデータ化にある」と話す。キャッシュレス決済では、商品購入者の属性や行動データも分析できるようになるため、従来の現金決済で活用できたデータよりも利用価値が高い。セグメントされたデータはマーケティングに活用することで、例えば、20代女性や、誕生月を迎えるリピーターなどに絞ったキャンペーンを展開することが期待できる。

 個人情報の取扱いについては、楽天が大量の決済のトランザクションを扱ってきた会社であり、知見や実績がある点をアピールする。

楽天ペイメント キャッシュレス化により属性データや行動データを把握できれば、メディアを通じてより効果的なアプローチを行える

 中村氏は「体制、ルール、仕組みを作るだけではなくて、フィロソフィーが最も重要だと思っている」と自身の考えを述べ、「事業者としてやりたいこと、ルールとしてやっていいこと、利用者がやってほしいことは実は違うと認識して、その重なりを探すことが継続的なサービス提供において大事である」との旨を話す。

楽天ペイアプリをさらに強化して将来的なマーケティングへ

 楽天ペイアプリは2019年3月にリニューアルし、楽天ペイ、楽天ポイント、楽天Edyなどをまとめて利用できるように統合した。今後のロードマップについては、8月1日に「JPQR」規格のQRコードに対応する他、JR東日本と協業したことで来春から楽天ペイアプリ上でSuicaの発行とチャージが行えるようになる。特にSuicaに対応することで、約5000の鉄道駅や、約5万の対応バス、約60万店舗の加盟店で利用可能になるため、新規利用の足掛かりになる可能性が大きい。

楽天ペイメント 楽天ペイアプリのロードマップ

 楽天がキャッシュレスサービスを提供する上で特筆すべき要素は3つ。1つ目は、既に決済情報が登録されている楽天IDを活用できること。2つ目は、日本の消費行動の3分の1がポイントに関するものであり、年間発行量が2018年実績で2500億円分と多い楽天スーパーポイントがあること。3つ目は、約300万箇所の加盟店契約があることだ。中村氏は、「3要素を掛け合わせてベストサービスを提供する」と意気込んだ。

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