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J-Debitの仕組みをスマホで 「Bank Pay」の狙う市場と戦略モバイル決済の裏側を聞く(2/3 ページ)

» 2019年08月19日 06時00分 公開

J-Debitを踏襲したシンプルで安価な決済システム

 そしてここからが本題だが、Bank Payとその根幹となっているJ-Debitは、決済システムに特徴があり、近年登場している○○Payでの特徴である「低い手数料でもビジネスが成り立つ」という仕組みを実現している。日本ではカード会社が自社発行のカードを直接収容(アクワイアリング)し(「オンアス取引」などと呼ばれる)、こうした契約を複数束ねる「マルチアクワイアリング」が主流となっている。これは海外と異なる、日本国内特有の事情とされている。

 理由の1つには、日本の利用者はリボ払いや分割払いなどよりも翌月一括払い(マンスリークリア)を好む傾向にあり、基本的にイシュアやアクワイアラは手数料収入に依存している。そのため、マルチアクワイアリングのような仕組みで自社発行カードを優遇するのが主流だと考えられる。そのため、日本国内だけで120近いカード処理センターが存在し(米国では5つ程度)、レギュレーションに合わせて毎回システム開発が発生するなど“無駄”が多いという事情があるようだ。

Bank Pay J-Debitはシングルアクワイアリング

 一方で、J-Debitではシングルアクワイアリングであり、マルチ契約は行われない。またカード処理にCAFIS(NTTデータのカード決済システム)のネットワークを利用しているものの、通常のクレジットカードなどとはオーソリにおける電文が異なり、口座引き落とし要求がいきなり行われる。

 CAFISでは0時過ぎに1日分の処理データをクリアリングセンターに送ってくるが、この際に契約時の手数料、発行金融機関の手数料を引きつつ、基本的にはグロスのデータとして一括処理され、資金決済幹事銀行に翌営業日にデータを全て送信する。

 資金決済の処理結果は各金融機関に既に送られているが、金融機関の間での資金決済処理は全銀連のシステムを通じて1日1回のみグロスで行われ、トランザクション単位では処理されない。そのため、単位トランザクションあたりの資金処理の負担が非常に少ない。これはJ-Debitの仕組みだが、Bank PayにおけるシステムではCAFISの前に中継サーバを置くことで処理を追加するだけなので、バックボーン自体はJ-Debitを踏襲している。シンプルかつ安価に決済できる仕組みというわけだ。

Bank Pay J-Debitの仕組み。銀行間での資金決済処理は1日1回のみで、これが安価にシステムを運用できるポイント

今秋、Bank Payはどのような姿で登場するか

 Bank Payの基本はQRコードやバーコードを使った、いわゆるコード決済のシステムで、他の○○Payと大枠では変わらない。ただ金融機関と加盟店に対しても比較的オープンで、例えばポイントサービスやクーポンといった既存のサービスにBank Payを組み込み、決済と同時にそれらが利用できる仕組みを実現できるような仕組みを目指している。

 日本電子決済推進機構として、こうした形で加盟店開拓が可能な潜在的なパートナーを開拓するサポートを行っていく。またJ-Debitではもともと税金や公金の支払いサービスに利用できる点が特徴の1つだったが、こうした収容代行は現在コンビニにおける売り上げの多くを占める収益源となっている。

 スマートフォンの利用により、支払い票に印刷されたバーコードを読み込んでアプリ上で支払う仕組みが登場しつつあるが、これを地域や事業者ごとに異なるバーコードやQRコードを統一し、支払える仕組みを作ってしまうことも考えているという。

 Bank Payは提供形態として、主に「金融機関Pay」という金融各社が利用者向けに提供するユーザー型アプリと、加盟店がBank Payを取り込むために必要な「加盟店Pay」という2つが存在する。

 われわれがイメージするBank Payはいわゆる前者にあたるが、これも「JEPPOアプリ」と「独自アプリ」の2種類が存在する。JEPPOアプリは基本機能を取り込んだ全ての金融機関で利用できるアプリで、銀行口座を最大8つまで登録して利用できる。

 独自アプリは「ハウス型」と呼ばれるもので、各金融機関が独自に開発したアプリにBank Payのフレームワークを組み込み、決済機能としてBank Payを呼び出すもの。現在は後者の開発が優先されており、ローンチ時にメガバンクを中心とした大手行からリリースされるのはこちらになるとみられる。

 当初はMPMと呼ばれる加盟店にQRコードを貼って決済を行うシステムとしてリリースされ、スマートフォン内にQRコードやバーコードを表示して店舗側が読み取るCPMは、後でのリリースとなる。これは加盟店Pay側で自社のPOSに組み込む仕組みを作り込むのに時間がかかるためで、当初はユーザーが自身のスマートフォンでQRコードを読み込む方式が主流になるだろう。

Bank Pay Bank Payは銀行向けと加盟店向け、そしてFinTechなどで仕組みのみを活用する企業向けの3つのパターンが存在する
Bank Pay 加盟店向けのソリューション。ハウス型の引き合いもけっこう多いという
Bank Pay 加盟店向けBank Payの決済フローと構成図
Bank Pay ダウンロード提供されるJEPPO準拠アプリには複数の銀行口座を登録して切り替えが可能

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