KDDIは、2018年8月に「auフラットプラン25 Netflixパック」を開始している。このプランは、ベースとなる「auフラットプラン20」に5GBを足し、Netflixのベーシックプランをパッケージ化したものだが、高橋氏によると「非常に調子がいい」とユーザーからも好評だったようだ。ユーザーに選ばれるだけでなく、解約率も目に見えて下がる効果があったという。
一般的に、何らかのサービスをバンドルすると、解約率はその分低下する。KDDIが2018年度の決算発表時に明かしたデータによると、auの回線を単独で契約しているユーザーに比べ、「auでんき」をバンドルしたユーザーは、解約率が半減している。「au WALLETクレジットカード」や「auスマートパス」「じぶん銀行」といったサービスも、解約率を大きく低下させている。Netflixをバンドルしたプランも、その延長線上にある。
高橋氏によると「解約率が下がるのは、(ユーザーの)エンゲージメントが上っていく結果で、取り組みは大成功」だという。先に挙げたように、auデータMAXプラン Netflixパックは、改正・電気通信事業法に対応できるよう、2年契約の違約金が1000円に引き下げられている。金額が下がれば解約率の上昇につながるが、バンドルプランにはそれを緩和する効果もある。その意味で、auデータMAXプラン Netflixパックは、10月以降の競争環境を見越した料金プランだ。
今後、こうしたプランはさらに増えていく可能性が高い。高橋氏は「幾つかの方々とは、一緒にやろうとお話してきている」としながら、次のように語る。
「バンドリングの場合、解約率はかなり下がる。そのために、ある条件で(KDDIにサービスを)卸していただかなければならず、ネゴシエーションは必要になるが、基本は『来るものは拒まず』。数としては増えていくことになる」
2018年からバンドルするサービスはNetflixに限られているが、データ容量に制限がないプランとは相性のいいサブスクリプションサービスも多い。音楽のストリーミングサービスは、その1つといえる。AmazonやGoogle、Appleのように、動画や音楽など、複数のサービスを束ねる事業者とも、バンドルは成り立つ可能性がある。
解約率を下げ、ARPUを上げるだけでなく、こうしたバンドルプランは、5G時代の差別化でも重要になりそうだ。5Gでネットワークが大容量化すると、auデータMAXプランのような容量無制限を打ち出したプランが一般化する。現状では、ドコモやソフトバンクは追随していないが、これは時間の問題といえる。無制限で横並びになると、比較できるのは金額だけになってしまう。全社が5Gで大容量化すれば、容量では差をつけづらくなるというわけだ。
このとき、武器になるのが「どのようなサービスをバンドルしているか」だ。法人向けでは、各社ともソリューションに通信料を含めていく方針だが、auデータMAXプラン Netflixパックは、それをコンシューマー向けに落とし込んだプランという見方もできる。KDDIが「UNLIMITED WORLD」と銘打ち、料金プランと同時に5Gのサービス像を示していたのは、そのためだ。
高橋氏も「OTT(Over The Top=上位レイヤーのサービス提供者)プレイヤーと一緒にUNLIMITEDを実現してきたい。これからの時代、通信会社の料金がどうだというのではなく、例えばNetflixを見るのに一番キャリアはどこかという形になっていく」と語る。
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