ソフトバンクの副社長執行役員 兼 CTOの宮川氏は、「5Gが創る世界」と題して同社の5Gに対する取り組みを語った。
宮川氏は、これまでのネットワークは人を中心としたエリア設計をしてきたが、5Gは「産業を中心としたネットワークになる」と語った。「産業の発展構造の礎になるネットワークなので、早期に日本全国をカバーしなくてはならない」が、日本は5Gの開始が世界に比べて遅れている。しかし宮川氏は「3Gも4Gも、日本は各社が頑張って垂直立ち上げした。5Gも世界に負けない。立ち上げを加速してやってみせようと思っている」と意気込んだ。
2021年をターゲットに5Gの人口カバー率90%以上を目指すという。「ほとんどの方が5Gを体験できるように、商用化で使ってもらえるように準備したい」(宮川氏)
ソフトバンクは5Gの要素技術の中でアンテナに注力。Massive MIMOを活用することで、基地局数が約5分の1になっても従来と同等のエリアを構築できるという。
一方で、先日の台風19号で被害を受けた基地局を示し、「キャリア同士の協力、有事の際のネットワーク作りなど、5Gではいろいろな検討が必要だと思う」と語った。
5Gの開始当初は、4Gのコアネットワークの中にLTEの基地局と5Gの基地局を両方とも収容しながら展開するノンスタンドアロン(NSA)のネットワークで、「大容量のサービスといっても、ソフトバンクの持っている周波数を組み合わせて2Gbps前後が精いっぱいの能力じゃないかと思う」(宮川氏)と控えめなコメント。本格的な5Gは、3GPPの標準仕様Release 16が完了して、さまざまな設備やサービスが整う2022年くらいになると同氏はみている。
また、ソフトバンクが行っている5Gの実証実験も紹介。公道での隊列走行や建設機械の遠隔操作、福岡ヤフオクドームでのマルチアングルVR観戦やFUJI ROCK FESTIVALでの5Gによるリアルタイム伝送などを取り上げた。
「各産業向けのサービスを早期に展開したい」と述べつつも、「通信事業者はインフラを作る係。5Gの設備を整えることに注力する」という考えだ。
「5Gは産業を高度化するためのインフラ。得意分野で取り組んでいる企業などと一緒に活用方法を共創していきたい」(宮川氏)
楽天モバイルの山田社長は「楽天のネットワークは5Gを見据えたネットワーク構成」だと胸を張る。10月に4Gの試験サービス(無料サポータープログラム)を開始したばかりで「期待と責任をひしひしと感じている」(山田氏)中、同社の4Gネットワークについて説明した。
楽天モバイルのネットワークは、「エンドツーエンドの仮想化ネットワーク」。従来は専用機を使っていた部分を一般的なサーバに担わせ、さまざまな機能はソフトウェアで対応する。コアネットワークの仮想化は他のキャリアも進めているが、楽天モバイルの特徴は、無線アクセスネットワークも仮想化していることだ。「基地局に近いところは計算量が多いので、業界的にここは専用機じゃないと無理だといわれていた。われわれは新参者ということもあって、そこを仮想化する」(山田氏)
こうした先進的なネットワークなので、10月からの参入は「念には念を入れて」5000人だけ利用できる「無料サポータープログラム」という形になったと説明した。
こうした楽天のネットワークは、専用機を使っていないので冗長化しやすいことから安定性を確保しやすいこと、一般的なハードウェアを使っているので、どんどん機器を増やすこともできるし減らすこともできて柔軟性が高いこと、設備投資や運用コストがかなり軽減できることがメリットだと山田氏は説明した。
「従来のネットワークでは何百種類ものいろいろなハードウェアを使う。楽天モバイルの場合は、Intelベースの普通のサーバで、10種以下のハードウェアで成り立っている。ハードの在庫管理や運用面でコストを大幅に削減できると考える」
しかも、このネットワークは5Gも想定して作っている。「アンテナは必要だが、大きな構成は変える必要はなく、ソフトウェアを変えることで5Gへの移行ができる」(山田氏)という。5Gの本当のポテンシャルが発揮されるスタンドアロン(SA)に、なるべく早く移行したいと山田氏は語った。
その際に楽天の強みとなるのが「楽天グループで70以上のいろいろなサービスをやっていること」(山田氏)。5Gのポテンシャルを生かしながら「楽天グループ全体と連携して、生活がより便利になるようにしていきたい」と展望を語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.