楽天モバイルはMVNOも展開しているが、このユーザーを自社回線にどう巻き取っていくのかも、今後の課題になりそうだ。MVNOとしての楽天モバイルは、ドコモとauの2社からネットワークを借りているが、大半はドコモ回線。そのドコモは、MVNOを継続する楽天モバイルに対し、警戒心をのぞかせる。吉澤氏は「楽天モバイルのMVNOについては、どういう方向でいくのか、話し合いを進めていきたい」としながら、原理原則を次のように語る。
「楽天モバイルはサービスを開始したが、(携帯電話のサービスは)周波数という資源を配分され、それを使って自分たちでやるとういこと。周波数は有効に使って、お客さまを収容していくべきだ。MVNO側に収容し、周波数を有効利用しないでいるのはいかがなものかと思う。ある時期には、MVNOを解消すべきだと思っている」
三木谷氏は「MVNOについては法律の範囲内でバランスよくやっていきたいが、順次MNOの方にシフトできればいいと思っている」と言うが、ネットワークがドコモに見劣りしていたり、料金的にMVNOとMNOの差が出せなかったりしたら、ユーザーがあえて移る動機はなくなってしまう。仮に強制移行のような事態になれば、200万を超えるユーザーが他社に流出してしまう恐れもある。
現行のルールでは、ドコモがMVNOからの相互接続を打ち切るのは難しいものの、MNO本体がMVNOとして他社から回線を借り続けるのはやはり自然な形とはいえない。吉澤氏が語っていたように周波数の有効利用ができないだけでなく、情報漏えいの観点からも問題があるように見える。総務省を巻き込む形で、一定のルールは作るべきだろう。
一方で、現状の競争環境は、ゼロから新規参入する楽天モバイルに対し、必ずしも条件が平等とはいえない。基地局数はもちろんのこと、保有する周波数の帯域にも大きな差がある。いくら楽天モバイルがエリア整備のペースを上げても、他社は7〜9年前から4Gを展開しているため、ギャップを埋めるハードルは極めて高い。
こうした事情をふまえると、総務省が安易に新規参入を許可していることには疑問符が付く。認可のハードルを上げる一方で、イコールフッティングが実現するよう、料金まで含めた形でローミングを義務付けたり、端末割引の上限を楽天モバイルだけ緩和したりと、新規参入事業者を優遇する措置を取ってもよかったのではないか。三木谷氏は「できるだけ早期に商用化したい」と語っていたが、まだまだ課題は山積みのように感じた。
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