実際に使ってみて、AirPods Proを選ぶ最大のメリットは、やはりアクティブノイズキャンセルに対応したことだと思った。
ノイズキャンセリングモードではかなりはっきりと環境音が消されるので、地下鉄で使えば、電車の走行音はほとんど気にならなくなった。鉄道の車内アナウンスや、女性の高い話し声などが辛うじて聴こえる程度だった。国際線の飛行機でも実際に使ってみたところ、飛行中の大きなノイズはさすがにゼロにはならないものの、9割以上は低減されたと感じた。
どちらも従来のAirPodsだったら、音量を非常に大きくしなくては音がはっきり聴こえないような環境だ。しかし、AirPods Proのノイズキャンセリングモードなら静かな部屋の中にいるときのように、小さい音量で楽しめる。最近は“耳の健康”にも注目しているAppleだが、それこそAirPods Proを使った方が間違いなく耳にはいい。
音楽なら多少聴こえづらくても問題ないだろうが、Podcastを聴いたり、語学のリスニングを習慣づけたりしている人なら、ノイズキャンセリングなしでは言葉を聞き取れず致命的だった。音楽好きだけではなく、ラジオ好き、学生などもAirPods Proとの相性はいい。
ちなみに、音源の再生中だけでなく、停止中にもノイズキャンセリングは有効にできる。耳栓的に使えば、場所を問わずに静かな環境を作って集中力を高めたり、マインドフルネスに没頭したりできる環境を作りやすい。筆者もカフェで仕事をしていると、隣のテーブルの世間話がうるさくて集中できないことがあるが、そんなときにもAirPods Proは頼りになった。
一方、レイテンシ(遅延)は非常に小さいが存在はする。いわゆる音ゲーの類を遊ぶ際には微妙なズレが気になるので、購入する前に理解しておこう。その他ジャンルのゲームアプリを遊ぶ上では問題ない。
ここまでに挙げた特徴は、そこそこ高いノイズキャンセリング対応のヘッドセットなら実現できている。iPhoneユーザーがAirPods Proを選びたくなる魅力は別にある。それは、OSレベルでの連携によってスムーズに機能することだ。
ケースを開ければ勝手にペアリングされる。耳から外せば再生中の楽曲が自動で一時停止する。こうした使い勝手のよさを従来のAirPodsからキチンと踏襲しているからこそ、AirPods Proは多くの人の目に魅力的に映る。筆者を含め、「AirPodsのよさ」を既に知ってしまった人は、魅力的なワイヤレスイヤフォンに感じるはずだ。その上で、精度の高いノイズキャンセリングや外部音取り込みの便利さが際立っているのだから、評価が低いわけがない。
視点を変えるなら、Androidのスマートフォンを使っている場合には、無理にAirPods Proにこだわる必要はない。他社製のワイヤレスイヤフォンには、より音質にこだわる製品も存在するだろうし、たとえ無理やりにAirPods Proを使えても、それは本来期待すべき体験ではなくなってしまうからだ。
AirPods Proの価格は、2万7800円(税別)。決して安いイヤフォンではないが、機能の使い勝手やプロダクトの仕上がりを鑑みれば、値段以上の価値があると思う。もし自身で使わない場合でも、プレゼントとして購入するのもありだろう。特に、通勤・通学や出張などで、電車や飛行機に乗る機会が多いiPhoneユーザーにとっては、必須アイテムとなりそうだ。
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