米国のHuawei制裁は「経済にとって有害」、5G基地局からのデータ漏えいは「不可能」(1/2 ページ)

» 2019年11月21日 19時39分 公開
[田中聡ITmedia]

 ファーウェイ・ジャパンが11月21日に記者説明会を開催。……と聞くと、新しいスマートフォンや関連製品が発表されたのかと思われそうだが、今回は新製品発表会ではなく、Huaweiが日本にもたらした経済効果を説明するというもの。同時に、米国との貿易摩擦による影響についても議論された。

Huawei Huawei代表取締役会長のリャン・ファー氏

 Huaweiは2019年1月から9月までに日本企業から7800億円を調達し、これは2018年の7200億円を上回るという。冒頭に登壇したHuawei代表取締役会長のリャン・ファー氏は、「2019年、Huaweiは大きな外部の圧力に面したが、課題を乗り切り、業務の安定的な発展を実現した。会社として安定した成長を遂げる自信がある」と語った。

 リャン氏が日本を評価する点として、基地局の人口密度が世界一で計算能力に優れていること、製造工程や化学、素材などでノウハウがあることを挙げた。「5GやAIなどの技術の蓄積を結び付けることで、新しいデジタル世代でも日本は強みを発揮できる。これからも手を取り合って社会発展に貢献していきたい」と、今後のコミットを誓った。

Huawei 東洋大学教授・元国務大臣の竹中平蔵氏

 ゲストとして登壇した東洋大学教授・元国務大臣の竹中平蔵氏は、「これまでエネルギーを支えてきたのは石油だったが、今はビッグデータ」という安倍晋三首相の言葉を借り、「ビッグデータと、AIやブロックチェーンなどを組み合わせることで、今までとは格段に違った経済社会が実現する。今は5Gの時代を迎えているが、そのテクノロジーを最も多く持っているのがHuaweiだ」と評価する一方で、米国からの禁輸措置に直面しており「チャンスとリスクの間で頑張っている」と同氏。

 「貿易戦争の中で、貿易量が低下して経済にダメージを与える。需要側もさることながら、サプライチェーンが崩される影響の方が重要。(日本とHuaweiが)これまで以上にコラボを強化して、お互いの技術を活用すれば第4次産業革命が実現する」と期待を寄せた。

Huaweiは日本のGDPに約7660億円の貢献

Huawei オックスフォード・エコノミクス 在日代表の長井滋人氏

 オックスフォード・エコノミクス 在日代表の長井滋人氏は、Huaweiが日本市場に与えた経済効果を解説。経済効果を測る指標として、ファーウェイ・ジャパンが日本で上げた利益、従業員に支払った賃金、税収などを合わせた「直接的効果」。サプライヤーへの支払いによる利益や賃金、税収などを合わせた「間接的効果」、ファーウェイ・ジャパンやサプライヤーの従業員が消費したことによる雇用や税収などを合わせた「誘発効果」がある。

 これら3つを加味すると、2018年、Huaweiは日本のGDP(国内総生産)に7660億円の貢献をしたことが分かった。中でも間接的効果が大きく、同年、日本に拠点を置く電子部品や金属製品などを手掛ける企業に、Huaweiは7210億円を支払っている。Huaweiがいかに日本の企業と密に提携しているかが分かる。同社は2018年に4万6400人の雇用と、2080億円の税収をもたらしたことも分かった。

Huawei 経済効果の分類
Huawei サプライチェーンに対する貢献が特に大きい
Huawei 2014年〜2018年における、日本の企業からの調達額
Huawei サプライチェーンの産業分布
Huawei 2018年の全体的な経済効果

Huawei排除で米国が孤立する恐れも

 パネルディスカッションでは、Huawei渉外・広報本部 本部長のリン・ショウ氏、現代中国研究家 日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏、長井氏を交えて、米国の制裁の状況や影響について語られた。モデレーターはMM総研代表取締役所長の関口和一氏が務めた。

Huawei 現代中国研究家 日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏

 「米国がHuaweiを5Gから排除する政策は、経済にとって非常に有害だ」と言い切るのは津上氏。同氏はこの討論に参加するか迷ったそうだが「ヨイショしない、報酬をいただかない」という条件で参加したそうだ。つまりHuaweiへの制裁が有害だというのは、客観的な意見であることを強調した形だ。

 「こんなこと(制裁)をやっていれば、米国自身の国益が傷つく。違反すれば何億ドルという制裁は、経済をシュリンク(縮小)させる効果しかない。日本の電子産業は、10年後は今の2分の1、3分の1に衰退する」と同氏。一方で、米国の言い分である「安全保障」を、利益のために犠牲にするのか? という議論もある。

 津上氏が調べたところ、米国が5GのインフラでHuaweiを排除すべきという要請に従ったのは、日本、オーストラリア、ベトナムの3カ国しかない。「ドイツとイギリスは、一部制限しているが、全面排除はしないという態度。他、G20の大きな国では、インド、ブラジル、メキシコ、サウジ、南アフリカ、トルコはHuaweiの機器を使うという方針」(同氏)

Huawei 津上氏が作成した資料。米国のHuawei排除の要請に従ったのは、日本、オーストラリア、ベトナムのみだとしている

 では、なぜ多くの国が米国の要請に従わないのか。答えは先述と同じく「あまりに有害だから」と津上氏。「こういうことをやると、米国とその追随国が孤立するだけ」と警鐘を鳴らした。

Huawei G7諸国が世界のGDPに占めるシェアは下がっており、過激な手段を取れば、米国は孤立すると警鐘を鳴らす
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