Qualcommは、米ハワイ州で12月3日から5日(現地時間)の3日間に渡って、「Snapdragon Tech Summit」を開催した。3日目の基調講演で発表されたのが、XR用の新プロセッサ「Snapdragon XR2 5G Platform」だ。同製品はAR、VR、MRなどの用途に最適化したプロセッサで、3K×2のディスプレイや7つのカメラの同時利用に対応。型番から分かる通り、5Gに対応しているため、スタンドアロンのXR対応機器を開発できる。
このイベントにゲストとして招かれたのが、XRに注力するKDDIだ。KDDIからは、パーソナル事業本部 サービス本部長 山田靖久氏が登壇。auブランドでコンシューマー向けのXRを開拓していくため、実証実験などを重ねていることが紹介された。展示会場には、KDDIが提携する中国Nrealが開発した「NrealLight」を出展。auロゴが入る、KDDIのカスタマイズバージョンでゲームなどのコンテンツを楽しむことができた。
では、KDDIはなぜXRに取り組んでいるのか。Snapdragon Tech Summitの会場で、山田氏とパーソナル事業本部 サービス本部 プロダクト開発1部の副部長、上月勝博氏に話を聞いた。
Snapdragon Tech Summitで紹介されたXRの事例は、法人向けが中心だった。車の修理にARを使うなど、製造業での応用は、ユーザー側にとってのメリットが分かりやすいのだろう。上月氏も「海外ではエンタープライズ寄りの話が多い」と語る。一方で、「KDDIはどちらかというと、コンシューマー向けにこだわっていきたい」と、そのスタンスは大きく異なる。
同社はスマートグラスの開発で、2018年4月に米国オスターハウトデザイングループ(ODG)と提携。スマートグラスの「R-9」を活用した実証実験を行ってきた。もともとは製品版もODG製の端末を検討していたようだ。ところが、ODGは2018年12月に資産の売却が報じられ、経営破綻を迎える。代わりに提携したのが、Nrealだ。上月氏によると、KDDIとNrealを結び付けたのもQualcommだったという。
NrealLightは小型のスマートグラスで、見る角度によっては普通のメガネに近い。厚みなどはさすがにごまかしきれないが、デザイン性にも配慮されており、かけ心地も悪くない。コンシューマー向けを志向しているKDDIが、Nrealと手を組んだのも納得できる。
ただし、現時点でのNrealLightは、あくまで「デベロッパー向けキットの1つ」(同)という位置付け。「かけ心地や、消費電力、熱量をより抑える工夫を行っているところで、われわれとしても安定した状態で届けられる時期を見極めていきたい」という。商用化のめどもたちつつある。山田氏は「来年(2020年)度のどこかでしっかりやっていきたいと思っている」としながら、5Gのサービス開始に合わせていく方針を語る。
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