2017年頃からの米中貿易摩擦により、中国のスマートフォンメーカーは米国市場で苦戦を強いられている。2018年からは安全保障の問題が取り沙汰され、米国政府がZTEに米国企業との取引を禁止する事態に至った。2019年は、中国の最大手通信機器メーカーのHuaweiに対して米国企業からの禁輸措置が取られた。
そうした緊迫した背景もあり、2019年1月に開催されたCES 2019は、例年よりも中国メーカーの出展が少なく、中国人の来場者も減った印象を受けた。それでも、Huaweiはコンベンションセンターのセントラルホールに出展し、ZTEも商談の場を構えていたと記憶している。さて、一向に解決の糸口が見えない米中関係。中国メーカーは、世界最大級の電子機器ショー「CES 2020」にどう臨んだのか?
結論を先に言えば、中国メーカーの出展は、2019年同様だったように思う。Huaweiは、前年と同じ場所にブースを構え、5Gスマートフォンを中心に出展していた。ZTEはブースを出さなかったものの、出展社一覧に米国法人である「ZTE USA Inc.」の名前を確認できた。メイン会場のコンベンションセンターとは異なるホテルの部屋で、顧客の対応をしていたようだ。ただし、2019年はコンベンションセンターの入り口付近で両社の広告を見かけたが、2020年に広告は見当たらず、2019年よりも控えめな出展だったといっていいだろう。
Huaweiブースでの目玉は5Gスマホだ。10月にドイツ・ミュンヘンで発表した最新フラグシップ「HUAWEI Mate 30 Pro」の5Gモデルが並び、来場者は手に取って試すことができた。そこで耳にしたのは「No Google」という言葉。スクリーンを確認し、「Googleマップ」や「Playストア」のアプリが入っていないことに、今さらながら驚いている来場者が少なくなかった。「これは米国で買えるの?」-「No」、「どこで買えるの?」-「China」といったやりとりも耳にした。
ブースには、折りたたみ端末「HUAWEI Mate X」も出展されていた。1台につき1人の説明員が付き、説明を聞きつつ、触れて見ることができた。この端末にもGoogleアプリは入っておらず、説明員いわく「米国での販売予定はない」とのこと。中国や欧州で販売し、日本での発売予定は「分からない」と言われた。
ちなみに、CES 2020の取材時には、筆者は「HUAWEI P30 Pro」を首からぶら下げて、腕には「HUAWEI WATCH GT2」を巻いていた。Huaweiブースの説明員が、端末の機能について詳しく説明してくれる際、筆者が「僕はHuaweiのユーザーなので、知っていますよ」と答えると、「えっ?」と驚くような神妙な顔をされた。本来は「ありがとう」と笑顔で応えてくれてもいい状況なのだが。他の説明員なら、そんな対応はしなかったのかもしれないが、場所が米国だけに、Huawei製品はタブー視される緊張感があったように思う。
Huaweiがブースを構えていたセントラルホールは、CES 2020のメイン会場といっていい場所だ。車を出展して大きな話題を呼んだソニーや、Samsung Electronics(サムスン電子)、LGエレクトロニクス、パナソニック、シャープなども大きなブースを構えていた。2020年のCESは日本メーカーが存在感を示したといわれるが、筆者もそれには同意する。しかし、決して中国メーカーの影が薄くなったわけではない。
TCL、Hisense(ハイセンス)、Haier(ハイアール)、CHANGHONG(四川長虹)など、中国の大手家電メーカーが例年と同じように出展し、2019年はIntelがブースを構えていた場所に、KONKA(中国深センに本社を構える総合家電メーカー)が進出してくるなど、勢いが感じられた。筆者は黒物・白物の家電には詳しくないのだが、中国メーカーのテレビの性能が年々向上し、SamsungやLGに近づいていることは実感できる。
これらCES 2020に出展した中国の家電メーカーの中で、米国市場に積極的な姿勢を示していたのがTCLだ。CESの開幕に合わせて開催したプレスカンファレンスでは、2020年、米国向けに自社ブランドのスマホを発売することを発表。その中に5Gモデルが含まれることも明かした。しかも「500ドル以下」というインパクトのある端末価格も予告した。
5G時代に移ると、世界での端末メーカーの勢力図が大きく変わることが予測される。米国市場でビジネスをしづらい状況にあるHuaweiやZTEを脇目に、TCLが新たな市場を切り開きたいという狙いがあるのだろう。
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