―― MVNOは一般的に、もう少しプラン数が多いと思いますが、二択にした理由はあるのでしょうか。
鹿瀬島氏 本当は一択にしたかったぐらいです。リテラシーの高い層は比較サイトで研究して、簡単に申し込めると思いますが、今回は分かりやすさにチャレンジにしました。現状の販売店では、2時間も3時間も待たされた後、さらに2時間、3時間と説明を受けなければなりません。全部が全部、Webで完結できるとは思いませんが、お客さまとシンプルな形で向き合い、どなたでも申し込めるようにしました。ただ、(シェアプランを用意したのは)家族で利用する場面が実は一番あると考えているからです。キャリアが以前やっていたシェアプランがありますが、あれは非常にいいプランだったと思います。
―― 逆に、新料金プランが導入されて、ドコモのシェアパックはなくなってしまいました。
鹿瀬島氏 MVNOでも、うち以外だとIIJぐらいではないでしょうか。y.u mobileでは、最大3枚のSIMを追加でき、計4回線まで持てます。また、U-NEXTについても、ファミリーアカウントという形で、最大3つのIDまで自由に発行することができます。SIMカード代は別途(音声通話タイプは790円、データSIMは300円)になりますが、5990円で20GB使えて、映像もIDが4つまで持てるということです。
シェアプランは、この5990円の中に、1990円かかるU-NEXTのフルサービスが入っています。1GBの購入は300円ですが、ここにはU-NEXTのポイントも使えます。U-NEXTの映像サービスは、1990円で高いと思われるかもしれませんが、1200ポイントのポイントバックがあり、ペイ・パー・ビュー(コンテンツ単位での支払い)に使えます。このポイントを利用してチャージすることもできるので、シェアプランの場合は、月に3GBまではチャージも無料になります(※1GBのチャージは税込みで330円のため、1200ポイントで購入できるのは3GBまで)。
―― なるほど。それはお得かもしれません。そもそも1GBが300円というのも、かなり安いと思いました。
鹿瀬島氏 高ARPUのプランに入っていただいた方がありがたいのですが、月によっては余ってしまうこともあります。一方で、MVNOの相場は3GBプランが1600円前後で、追加チャージに1000円かかることもあります。y.u mobileでは「永久不滅ギガ」をうたいました。買ったにもかかわらず、翌月に消滅してしまうのはどうかと思ったからです。
携帯電話は生活インフラになっています。同じ生活インフラだと、電気やガスは使った分だけ払いますが、そういった考え方を取り入れていきたい。こちらの方が、日本人にはなじんでいると思うんですけどね。
―― このタイミングでの参入になりましたが、現状のMVNO市場をどう見ていますか。
鹿瀬島氏 IIJ以外、元気がないなと思っていました。接続料があり、原価も決まってきますからね。総務省のデータを見ても、13%ぐらいから全然伸びていません。思うに、これはリテラシーの高い方が乗り換えているだけなのではないでしょうか。別のデータを見ると、MVNOに乗り換えない理由の70%ぐらいが「複雑でよく分からない」というものでした。格安SIMは何となく聞いたことがあり、認知はされていても、実際に入らない。全部が全部キャリアに勝てるわけではありませんが、分かりやすいプランを出せば十分いけるのではないでしょうか。
ですから、われわれとしての勝算はあります。原価が決まっているので、マスメディアやタレントを使ってマーケティングするといったことは考えていませんが、分かりやすいプランを作っていきたい。後は、U-mobile時代からの経験として、1にも2にも3にも4にも、速度が重要だと思っています。
―― 端末の修理保険があるのも、面白いと思いました。
鹿瀬島氏 シンプルさ、分かりやすさというところで言えば、最近の料金プランはオプションが非常に多い。すごい数のオプションがある一方で、われわれのセット比率を見ると、端末補償が一番求められていることが分かります。電車に乗っている人の端末を見ても、画面が割れていることが多いですからね(笑)。「オプションゼロ」と言いたかったこともあり、逆転の発想で、端末補償は標準でつけました。
一般的に、端末補償サービスは申し込み時にしか入れなかったり、500円ぐらいして高かったりします。われわれのシングルプランは、1690円という値段ですが、この中に保険が付いています。SIMカードに保険をつけられたら面白いと思い、保険会社と交渉したところ、OKが出ました。保険に入るのがわれわれで、その下にユーザーがいるという建付けです。記載している通りで、だましのような注意書きもありません。3万円まで、年2回使えます。
対象期間は発売から5年で、新品、中古関わらずOKにしました。発売から5年以内の端末には特に制限がなく、それ以上のものは、中古ショップのレシートで保証が効いている場合、1年以内は大丈夫という形にしています。通信と端末の分離で中古市場がこれから活性化するはずなので、中古の適用にはこだわっています。
―― 端末を選ばず、自動で適用になるのはうれしいですね。
鹿瀬島氏 キャリアの端末補償が最初に入らないといけないのは、恐らく端末を特定するためだと思いますが、われわれの場合はIMEIなどを登録する必要がありません。保険を使いたいときに連絡していただき、そのときに初めてお伝えいただければいい仕組みにしています。ただし、1回使うとデータベースに端末の履歴が残るので、機種変更した際には変更届を出していただくようにしています。
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