世界を変える5G
インタビュー
» 2020年04月20日 13時43分 公開

シャープが考える“5Gスマホのあるべき姿”とは? 開発陣に聞く「AQUOS R5G」 (1/4)

3キャリアの5Gスマホとしてシャープの「AQUOS R5G」が発売された。背面にはToFカメラを含んだ4眼カメラを搭載し、超広角カメラは動画用として、8Kでの撮影に対応した。このカメラをはじめ、ディスプレイ、パフォーマンスなどの特徴を開発陣に聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 3月下旬に、大手3キャリアの5Gが一斉に始動した。各社とも、同時に5G対応端末を一斉に発表した。各社とも端末ラインアップに違いがあるが、1機種だけ、3キャリアに共通している端末がある。それがシャープ製の「AQUOS R5G」だ。

AQUOS R5G シャープの最新スマートフォン「AQUOS R5G」

 同モデルは、「AQUOS R3」の後継機として開発されたフラグシップモデル。背面にはToFカメラを含んだ4眼カメラを搭載し、超広角カメラは動画用として、8Kでの撮影に対応した。AIが自動的に動画を分析し、動画再生の際に被写体に自動でフォーカスする機能も搭載している。

 QualcommのSnapdragon 865を搭載し、メモリは12GB、ストレージは256GBと、パフォーマンスの高さも抜群だ。放熱設計を大きく改善して、5G対応ながら高いピーク性能を維持できるのも特徴といえる。ディスプレイは10億色を表現可能。シーンに合わせてフレームレート可変させる機能があり、省電力性も高い。

 このAQUOS R5Gは、どのようなコンセプトや技術で開発されたのか。開発秘話をシャープの開発陣に聞いた。インタビューに答えたのは、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任の田中陽平氏、係長の小野直樹氏、中川伸久氏と、同事業本部 同事業部 システム開発部 技師の関文隆氏、課長の田邊弘樹氏の4人になる。

AQUOS R5G 左上から関氏、中川氏、田邊氏、田中氏、小野氏(写真提供:シャープ)

「AQUOS R4」が欠番になった理由

AQUOS R5G 商品企画部の田中氏(写真提供:シャープ)

―― まずは、AQUOR R5Gのコンセプトを教えてください。

田中氏 AQUOS Rシリーズは初号機から「コミュニケーションをドラマティックに」を理念に掲げてきました。初号機となる商品は2017年「AQUOS R」で、リアリティーを捉えるカメラということで、90度の広角カメラを載せ、そこをベースにしっかりやってきました。1年後の「AQUOS R2」では、複眼のカメラを初めて搭載しています。初めてだったのは、超広角の動画専用カメラと、静止画用のカメラとで2眼にしたことです。動画を撮りながら静止画も撮れるという、まったく新しいアイデアの商品を投入しました。2019年には、「AIライブストーリー」を搭載した「AQUOS R3」を発売ました。これは、動画をコミュニケーションツールとして使用することに主眼を置いた機能です。

 これらは全て5G時代を見据えたもので、ビジュアルコミュニケーションに手を入れ、向上させてきました。このタイミングで満を持して投入するのが、AQUOS R5Gです。特徴は「充実のカメラと5Gに対応した爆速なフラグシップ」で、5Gに対応したということで商品名に5Gを付けました。「AUOQS R4」がなく、数字を1つ飛ばしていますが、これは単純な語呂合わせだけでなく、飛躍的な進化を遂げたので1段飛ばすという意味も込めています。

―― 具体的に、進化した点を教えてください。

田中氏 1つ目がディスプレイで、10億色、120Hz駆動を実現するPro IGZOディスプレイです。これは、シャープが他社に先駆けてやってきたことです。最近では、グローバルメーカーが(120Hz駆動などに)対応してきていますが、シャープには一日の長があります。2点目はカメラで、個数で言えば倍増しています。また、48メガピクセルで8Kの動画が撮れるカメラも搭載しました。これが、ビジュアルコミュニケーションを飛躍させる、大きなツールになると考えています。

 5Gになることで、扱う情報量は爆発的に増えます。動画だけでなく、ゲームもサイズがどんどん大きくなる。そのため、AQUOS R5Gでは5Gにふわしいスペックを実現しました。ネットでは「シャープが本気を出した」と言われていますが、まさに本気を出したスペックになります。

自社でレンズを設計したことで「超広角の8K」を実現

AQUOS R5G 商品企画部の小野氏(写真提供:シャープ)

―― カメラについてですが、8Kに対応した理由を教えてください。

小野氏 シャープとしては、8Kという解像度の動画にこだわっていきたいというメッセージがあります。カムコーダーから始まり、CESで発表したプロシューマ―向けのカメラも近日発売になります。さらに、コンシューマーに向けたAQUOS R5Gで、裾野を広げて8Kを普及させていきたい。進化の方向性としても、「8Kはあり」という風潮に変わってきています。まだ容量が大きいなどの問題はありますが、メッセージとして、8Kを使ってビジュアルコミュニケーションが本格的に楽しめるということは先頭に立って言い続けたいと思い、この商品を出しています。

 8K動画が撮れる商品は、こだわりは8Kとワイド撮影の組み合わせで、この2つが合わさって8Kの価値が生まれると思っています。ワイド撮影については、数年前から探りを入れてきましたが、昨年(2019年)ぐらいからは各社のフラグシップモデルに搭載されるようになり、話題になっています。ようやく「超広角っていいよね」という話も出てくるようになりました。8Kの高解像度でワイドに動画を撮り、フォーカス再生のようにズームして、切り出した映像を見ていただく。これが8Kを訴求できる、とっかかりになると思っています。

 超広角で8Kが難しかったのは、レンズ設計です。レンズに詳しい方はご存じかもしれませんが、レンズにはMTFという指標があります。レンズには一般的に、真ん中が明るく、周辺は暗くなって解像度が落ちるという特性がありますが、これが8Kだとより難しくなり、超広角でさらに難易度が上がります。このレンズは自社で設計していることもあり、苦難を乗り越えて作っています。8Kワイドは、これがあって初めてできるものです。

AQUOS R5G 5Gを組み合わせ、さまざまな環境で8Kコンテンツを活用できるよう推進していく

―― 拡大して見られるのは、確かに8Kのメリットですね。一方で、テレビなどで表示して見ることができるのも特徴だと思います。

小野氏 8Kエコシステムでは、8Kワイド撮影したものを5Gで転送して編集、表示できます。8Kで撮った動画については、Dynabookの8K編集システムで編集ができるようになっています。また、8Kで撮った動画をテレビで見たいという需要も出てくると思います。今回撮った動画は、「BW1」以降のAQUOSなら、USBメモリにコピーして差し込むだけで再生できるようになっています。もっとかっこよく、ワイヤレスでできないのかという話もあると思いますが、まずは原始的なやり方で、USBメモリにコピーして見ることができるようにしました。クラウド連携などは、おいおい検討していきます。

 静止画についてはAdobeの「Photoshop Express」をプリセットしました。これまでも簡単な編集機能はありましたが、静止画については、細かな編集や画質の調整にこだわることができます。これまでも、簡易的な編集機能は頑張ってきましたが、よりマニアックに調整したい層に響くメッセージが送れていませんでした。

―― 先ほど、大容量になるとおっしゃっていましたが、1分間でどのぐらいのデータサイズになるのでしょうか。

小野氏 1分でだいたい550MBですね。目安として、そのぐらいで考えていただければと思います。

8K動画の編集は、あえてできないように

―― 今回は、スペックもかなり向上していますが、こうした数字から逆算したところはあるのでしょうか。

田邊氏 UFS 3.0に対応していますし、メモリも12GB搭載されています。この容量も、8Kカメラをしっかり動かすために必要な容量として選択しています。

―― 先ほど、静止画の編集についてのお話はありましたが、動画の編集はPCでということですか。

小野氏 動画については検討もしたのですが、最終的にプリセットはしていません。8Kの動画を再エンコードするところまでやろうとすると、まだパフォーマンス的に厳しいからです。クラウド上に上げてから編集するということも考えましたが、発売時点では対応していません。

―― 8Kは……ということは、4K以下なら編集はできるということですね。

小野氏 はい。できます。Adobeと話をして、「Adobe Premiere Rush」をダウンロードできるようになっています。Rushは認証プロセスを取って使えるようになるアプリですが、今回、そのサポートはさせていただきました。

―― 画質に関しては、得意不得意があるという話もうかがったことがあります。

小野氏 はい。8Kの解像度は確かに魅力的ですが、1つ1つのピクセルが小さいので、取り込める光の量が厳しくなります。そのため、暗いシーンは得意でないということになります。一方で、暗いシーンやご自宅で撮るようなときは、4Kにしていただければ、4つのピクセルを1つに固めて撮る(ため、取り込める光の量が増える)ようにしています。

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