―― 2019年4月から「NHKラジオ」がradikoのライブ配信に加わりました。サービスの利用面で、何らかの影響は出ましたか。
青木社長 NHKラジオは2018年4月12日から「実験配信」という形で対応し、2019年4月1日から正式な配信を開始しました。
NHKラジオが加わったことによってUU(ユニークユーザー数)の増加に一定の効果はあったとは思います。ただ、それ以前から90以上の民放局(と放送大学)が参加していたこともあって、そこまで大きなインパクトではありません。
NHKは「らじる らじる」という独自のラジオの配信基盤を持っていて、それ専用のアプリもあります。従来は「NHKラジオはらじる らじる、民放ラジオはradiko」というように、ザッピングをする際にアプリをまたがなければならず、ユーザー目線に立つと便利とはいえませんでした。
今回、NHKがradikoでの配信に参加してくださったおかげで、ザッピングをしやすくなりました。この点について、ユーザーの皆さんからは好意的な声が寄せられています。
―― 現在、NHKラジオはライブ配信のみの対応となっています。タイムフリーやエリアフリーに対応する予定はないのですか。
青木社長 この点については、配信元であるNHKの意向によります。
―― radiko利用者の中で、プレミアムサービスを契約している人は、どのくらいいるのでしょうか。
青木社長 現時点(4月中旬現在)で約74万人いらっしゃいます。毎月350円を支払っているということもあり、無料で利用されている人と比べると利用頻度は多く聴取時間も長く、(サービスの一番の特徴である)エリア外の番組聴取も多いです。
(無料である)タイムフリーも利用者は増加傾向にあり、順調に伸びています。
―― プレミアム契約者は、都市圏に集中しているのでしょうか。
青木社長 おおむね(都道府県の)人口に比例する感じです。
―― プレミアム契約者は、単に「ふるさとのラジオを聴きたい」のか、それとも「地元のラジオ局ではやっていない、好きなパーソナリティ(出演者)のラジオを聴きたい」のか、どちらの方が多いのでしょうか。
青木社長 プレミアムを契約した人を対象とするアンケート調査によると、契約理由としては、地元で放送していないコンテンツ(番組)を追いかけるというものが一番多いです。
地方在住の人が東京(首都圏)でしか放送していない番組を聴く、東京(首都圏)在住の人が地方でしか放送していない番組を聴く、どちらもあります。「あるYouTuberが出演する番組が名古屋(愛知県)でしかやっていない」とか、「HKT48の出演する番組が福岡県でしかやっていない」とか、タレントやグループのファンが、コンテンツも「追っかける」用途で使われているようです。
その次に多いのが、「ふるさとのラジオを聴く」用途です。昔聴いていた番組に癒されるという人もいます。その観点では、単身赴任や出張中にたまたま聴いた番組を、引き続き聴くために契約しているという人もいます。
プロ野球のファンが、“地元”球団の試合を実況中継してくれる地方ラジオ局の番組を聴取するために契約しているんだ、という話もあります。
―― 以前、ITmedia Mobileで「ラジスマ」の記事を掲載した所、想像以上の反響がありました。radikoとして、手応えは感じているでしょうか。
青木社長 現在、ラジオ業界全体の動きとして「ワイドFM」を推進している所です。これにより、一部のAMラジオ局の放送がFMラジオでも聴取できるようになりました。
radikoアプリを使えば(データ通信で)ラジオを聴くことができるのは確かですが、FM波で聴取できる環境なら、そちらの方がより高音質ですし、消費電力が非常に少なくて(スマホの)バッテリーにも優しいです。何より、聴取時の遅延もありません(筆者注:設定にもよるが、radikoアプリでは実際の放送から10数秒〜数分の遅延が生じる)。
1つのUI(ユーザーインタフェース)やUXのもと、放送(ブロードキャスト)と通信の両方のメリットを生かしてラジオを最大限楽しめることが、ラジスマの最大のメリットです。
ワイドFM(正式には「FM補完放送」)は、「難聴対策」「災害対策」を目的にAMラジオ放送局が行うFMラジオ放送のことです。
通常、FMラジオ放送にはAMラジオ放送とは別の免許(コールサイン)が必要ですが、ワイドFMについては、AMラジオ用の免許のもと、FM電波を利用する「補完中継局」を設置できます。
ただし、ワイドFMでは、従来のFMラジオ放送よりも高い周波数(90.0MHz〜94.9MHz)の電波を利用するため、この周波数帯に対応する受信機がないと受信できません。
―― 今後も、ラジスマの対応スマホは増えるのでしょうか。
青木社長 今後も対応機種は増える予定です。
radikoのサービス開始から10年――そのことに筆者は驚いてしまった。時が流れるのは早いものである。
ラジオを身近にする手段の1つとして登場したradikoだが、より身近かつ安心して使えるようにするべく、サービスのブラッシュアップを続けていることがインタビューを通してよく分かった。今後、どのような「進化」を遂げるのか楽しみだ。
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