だからといって、携帯各社は5Gのエリア整備を進めないわけにはいかない。5Gの電波免許を取得するに当たり、各社は総務省に5Gのエリア整備計画を提出しており、その計画に間に合う形で整備を進める必要があるからだ。
総務省は5Gの電波免許割り当てに際し、申請する携帯電話各社に対して5年以内に5Gの基盤展開率50%以上を実現するよう求めている。基盤展開率とは、従来のエリア評価軸であった「人口カバー率」に代わる指標であり、全国を10km四方のメッシュに区切り、そのうち山岳地帯や海水面などを除いた事業可能性のある4500のメッシュに対して、その地域の基盤となる「5G高度特定基地局」を整備する割合である。
なぜ人口カバー率から基盤展開率へと評価軸が変化したのかというと、5Gでは従来のコミュニケーション用途だけでなく、IoTなどによる産業用途での活用が期待されているため。住んでいる人は少ないけれど工場や農場などがある場所、あるいは人は住んでいないけれど、自動運転などの実現には必要な道路がある場所など、何らかの事業可能性がある場所は可能な限りカバーしてほしいというのが、日本政府の考え方なのである。
なぜなら政府は、5Gを地方の社会課題解決や地方創生に活用することを期待しているからである。少子高齢化が著しい地方では公共交通や医療などの担い手が不足し、生活に必要な社会インフラの維持が難しくなっている。そうしたことから無線で高い性能を持つ5Gを活用することで、地方のデジタルトランスフォーメーションを加速し課題を解消していきたいと考えているわけだ。
そして総務省が公開している「第5世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設計画の認定」を見ると、5年以内の5G基盤展開率はNTTドコモが97.0%、KDDIが93.2%、ソフトバンクは64.0%、楽天モバイルは56.1%と、50%を超えるよう申請をしている。各社はサービス開始から5年以内、つまり2024年度末までにこの5G基盤展開率を達成する必要があるわけだ。
もっとも携帯電話各社は、総務省に提出した計画よりも前倒しでエリア整備を進める方針を打ち出している。ドコモは2023年度中に5G基盤展開率97.0%を実現したいとしており、KDDIは2022年3月末に全国2万局を整備、ソフトバンクも2021年度末には5万局を超える基地局を整備して人口カバー率90%超を目指すとしている。新型コロナウイルスの影響で計画が変更になる可能性はあるものの、各社が当初の予定よりも早く全国カバーを進めようとしていることは確かだろう。
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