接触確認アプリは機能が限定されている。行動変容を促すことはできるかもしれないが、それで十分といえるだろうか。今後はどうしていくべきだろうか。
庄司氏は、「第2波や別の感染症が起こるかもしれないということを考えると、いろいろな準備をしておく必要がある。新しい生活様式を支えるいろいろなサービスやアプリを考えていく必要があると思う」と語り、混雑情報などのリアルタイム情報や予測情報といった、リスクを避けながら生活できて、科学的に裏付けがあるようなデータが必要だと指摘した。
さらに「政府にデータを預けたくないという意見が話題になった。恐らく、感染症を抑え込むことに価値を置く人には不満な反応だと思う。もっと強い感染症が来たときに、政府が信頼され、データが使えるように、体制やルール作り、あるいはデータフローや業務フローを今のうちに用意しておくことが必要」とした。
一方、村井氏は、接待を伴う飲食店やライブハウス、病院、ビュッフェレストランといった、クラスタが発生するところだけに接触確認アプリを導入するというアプローチを提案した。
「お店の店員は全員アプリを入れていて、お客さんもアプリなしでは入店できない。これだけきっちりすれば、クラスタの発生するところは100%アプリ導入を実現できて、普及させることができるのではないか。こうした方が安心で、得になるというアプローチ」(村井氏)
山本氏は、そのアプローチも可能だとしつつも、特定のお店や業界をターゲットにするような取り組みは、慎重にすべきという意見だ。また、自治体がQRコードを活用して感染者が出た場合に通知する仕組み(※)を導入しているが、これである程度、同様のことが実現されるのではないかとした。QRコードのシステムと接触確認アプリが補完関係になると期待している。
落合氏は、「科学的な根拠があると明確になり、必要に応じて立法なども行った上で、接触確認アプリや他の方法の導入を義務付けたり、強く干渉したりということがあり得ると思う」と述べた。クロサカ氏も「立法も含めて合意形成を明確に」との意見だ。
「少しは集まらないと仕事ができない、生活できない、でも集まると危ないから、どういう風に実現していくのかということがニューノーマルなのかもしれない。大丈夫かどうかではなくて、条件をクリアしているということを示して、これを新しいトラスト(信頼)にしていくことが必要になっていく」(クロサカ氏)
新しいトラストを実現していくにも法律を作るにも時間がかかるが、感染症の第2波がすぐやってくるかもしれない。どうやって実現するのか。
これについては各氏とも、世界各国はまだ模索している段階という認識だ。その上で山本氏は「監視の仕組みを強めていくという考え方もあり得ると思う。その場合は監視の監視、民主的な統制、ブレーキを入れる必要がある。アクセルを入れるならブレーキをかける関係性は、頭に入れておく必要があると思う」と指摘した。
藤田氏は「立法はぜひやっていくべき」と語った。というのも「強制力の強い取り組みをやっている韓国の場合、過去のSARSやMERSで国民的な議論をして法律を作ったために、今回、いろいろなことができたという面がある」からだ。さらに、経済の再開や国際的な移動についての議論も大切だと語った。
クロサカ氏も、立法が必要だと断言。「今、起きていることと立ち向かうためには、議論を続けて即応体制を作っておかないといけない」と語った。
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