中継電話サービスがあり、準定額プランも用意している日本通信が、なぜ音声卸の料金の値下げをドコモに求めたのか。同社で代表取締役社長を務める福田尚久氏は、音声通話の料金が、MNOとの競争にとって「最大の阻害要因」だと語る。「詳しい方には『えっ』と思われるかもしれないが、お客さまに格安SIMをお勧めするとき、最初に聞くことが1カ月に何回電話するのかということ。データ通信は確かに3分の1や4分の1の価格になっているが、通話が多いと逆転してしまう」(同)とその背景を説明する。
プレフィックスを使った中継電話サービスも、「どのぐらいの比率で使われているのかを考えなければいけない」(同)という。アプリをインストールしてもらわなければならず、スマートフォンに詳しくないと、利用開始までのハードルが上がる。仮にアプリをインストールできたとしても、電話アプリが同じ端末上に複数存在するのは少々分かりづらく、通常の電話として誤発信してしまう可能性もある。通常の通話料が30秒20円だと、「MVNOをなかなか検討しづらい」(同)のが現状だという。
一部のサブブランドを除くMVNOは苦戦を強いられているが、福田氏は、こうした音声通話の料金差にも要因があると見ているようだ。同氏は「MVNOが苦戦しているのは、イコールフッティングではないから。データ通信も安いので、それに合わせて音声も安いと言い切れるとだいぶ違ってくる」と語る。
一方で、先に挙げた通り、準定額プランや定額プランの提供を義務化することは、総務大臣裁定で却下されている。今、焦点となっているのは、30秒20円の卸料金の値下げだ。これに対し、日本通信は定額プランの投入を示唆している。同社が定額プランを提供できる理由はどこにあるのか。福田氏によると、「卸料金が原価ベースであれば、定額はまったく問題ない」と語る。卸の料金がある程度低ければ、定額プランで使われすぎるリスクは日本通信側で負うというのが、福田氏の主張といえる。
単純化して、1700円で完全定額の音声プランを提供する場合を考えてみると分かりやすい。卸料金が今の30秒20円のまま、ユーザーが平均42分30秒通話するとちょうど1700円になり、日本通信の収支はトントンということになる。仮にこの卸料金が30秒10円に下がっていたとすると、収支上は、倍の85分までユーザーの通話を許容できる。音声通話の卸料金が下がれば、定額プランを導入するための経営リスクを取りやすくなる。現時点では卸料金の金額は合意が取れていないが、裁定日にさかのぼって適用されるルールを使って、定額プランを投入するという。
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