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» 2020年07月11日 06時00分 公開

格安SIMの“音声定額”は実現するのか? 食い違う日本通信とドコモの主張石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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原価の根拠はアクセスチャージ? ドコモは代替手段の利用を主張

 では、30秒20円の料金がどの程度下がる可能性があるのか。福田氏は、「アクセスチャージ」をその根拠に挙げる。電話のサービスは、各事業者同士が接続することで成り立つ。ドコモから発信したとしても、au、ソフトバンクや固定電話網まで、着信先はさまざまだ。この例だと、他社に接続するときには、ドコモがau、ソフトバンクや固定電話のネットワークを利用していることになる。これを事業者間で清算するために設定された金額が、アクセスチャージだ。

 2019年度のアクセスチャージは、ドコモが1秒あたり0.041272円。KDDIは1秒0.055947円、ソフトバンクは0.053303円に設定されている。ドコモのケータイからauに発信し、1分通話した場合、ユーザーには20円が課されるが、アクセスチャージとして、KDDIが3.35682円をドコモから受け取る。逆の場合は、KDDIからドコモに対して2.47632円の支払いが発生する。日本通信は、「この数字を発信、着信で足し合わせたものが原価になる」(同)という考えを示す。今の30秒20円に単位を合わせるとすれば、おおむね30秒3円弱になるというわけだ。卸価格が7分の1程度になれば、確かに定額プランを提供しても採算は合いやすくなるのかもしれない。

アクセスチャージ アクセスチャージは、各社が設定しており、事業者同士でこれを清算する。画像は総務省の「令和元年度市場検証(中間報告)」

 一方で、ドコモの考えは、日本通信と異なることもうかがえる。同社の代表取締役社長、吉澤和弘氏は「絶対値として、10年以上同じ料金できていた。高いことは否めないので、安くなければいけないと思っている」と日本通信の主張に一定の理解を示しつつも、卸料金の値下げ以外の方法もあることを強調し、以下のように反論する。根拠となっているのは、同じ総務大臣の裁定だ。

 「裁定にも書いてあるが、音声接続という方法もあり、音声接続で代替性が確保できれば、そちらでやっていいとなっている。われわれはそれでやり、開発も進めている。今年(2020年)いっぱいで提供できるが、それで有効性を確認していただき、いけるとなれば、全MVNOにそれでお願いしようと思っている」

接続料 「接続料の算定等に関する研究会」にドコモが提出した資料。プレフィックスを自動で付加する機能を開発中だという

 吉澤氏の言う接続とは、ドコモが開発を進めるプレフィックスの自動付加機能を指す。交換機側でプレフィックスを付与することで、ユーザーが手動で入力したり、アプリをインストールしたりする必要がなくなるというものだ。実際、ユーザーに対する通話料を値下げしつつ、アプリのインストールをする手間を省けるという意味では、MVNO側の目的に沿った機能といえる。

吉澤和弘 取材に応じたドコモの吉澤社長。日本通信にも、音声接続を利用してほしいと語った

 ただ、福田氏は「音声の場合、接続をしても付加価値をつけづらい。基本的に接続でやるのは無駄が多く、卸ではやらせたくない主張だと思っている」と、ドコモの考えに反発する。音声定額の導入は決まり、大筋は通話料も値下げになる方向性は見えてきた一方で、実現方法は平行線をたどっているといえる。あるMVNO関係者が「場合によっては日本通信からの再提訴や、ドコモからの逆提訴もあるのでは」との見方を示したように、両社の戦いが第2ラウンドに突入する可能性もありそうだ。

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