日本通信の「総務大臣裁定」申請、裁定案が諮問される 内容は「1勝1敗」?正式な裁定は3〜4月の予定

» 2020年02月05日 21時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 総務省は2月4日、日本通信が2019年11月15日に行った総務大臣への裁定申請に対する裁定案を、電気通信紛争処理委員会に諮問したことを発表した。同委員会での審議が順調に進んだ場合、3〜4月に裁定案に対する答申と、それを受けた正式な総務大臣裁定が行われる予定だ。

概要 日本通信が総務大臣裁定を申請した内容の概要(総務省資料より:PDF形式)

日本通信の裁定申請の概要(おさらい)

 日本通信は、NTTドコモと2014年4月から5年以上にわたって音声通話サービスの卸契約について協議を続けてきたという。それが不調に終わったことを受けて、同社は2019年11月15日、以下の事項について電気通信事業法第39条と同法第35条第3項に基づく総務大臣裁定を申請した。

  1. ドコモが日本通信に対し、音声通話サービスを適正な価格で卸提供すること
  2. ドコモが日本通信に対し、音声通話(準)定額サービスを卸提供すること
裁定申請の内容 日本通信が裁定を申請した項目(日本通信のニュースリリースより:PDF形式)

総務大臣裁定案

 裁定申請の受領後、総務省は当日中にドコモに申請があった旨を通知。ドコモは「答弁書」を12月6日付で提出した。その後、「意見書」を日本通信は2回、ドコモは1回それぞれ提出し、「裁定案」の諮問に至った。

関連規定 今回の裁定申請と諮問に関連する法令(総務省資料より:PDF形式)

 裁定案では、1つ目の申請と2つ目の申請について判断が分かれている。

申請その1:日本通信の訴えを認める

 「ドコモが日本通信に対し、音声通話サービスを適正な価格で卸提供すること」の申請については、ドコモに対して音声卸役務の料金を、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた金額を超えない額で設定するように求めることとした。

 日本通信の主張がおおむね認められたことになる。

申請その1 1つ目の申請に対する裁定案。日本通信の主張がおおむね認められている(総務省資料より:PDF形式)

申請その2:日本通信の訴えを却下

 「ドコモが日本通信に対し、音声通話(準)定額サービスを卸提供すること」の申請については、ドコモの「『かけ放題オプション』及び『5分通話無料オプション」と同じ課金単位の料金設定を行うべきとすることは適当ではない」と判断された。日本通信の訴えは却下されたことになる。

 裁定案では、日本通信の訴え自体の妥当性や、音声通話(準)定額が同社のユーザーにもたらすメリットが大きいことは認めている。一方で、音声(準)定額を提供することに関する「原価割れ」のリスクをドコモが一方的に負う(≒日本通信がリスクをほとんど負わない)ことを問題視。「利用者利益の増大に資するとしても、公正競争の確保に支障を生じさせてまで実現を図るべきものとは言え」ないと判断し、ドコモが設定を拒むことに「合理的な理由がある」とした。

申請その2 2つめの申請に対する裁定案。日本通信の訴え自体は妥当だとしたものの、ドコモ側が一方的にリスクを負うことが問題視され訴えは却下されている(総務省資料より:PDF形式)

今後の流れ

 先述の通り、この裁定案は総務省内の電気通信紛争処理委員会で審議される。その過程では、必要に応じて日本通信やドコモに対する意見聴取も行われる。

 審議が順調に進んだ場合、3〜4月をめどに同委員会が総務大臣に対し裁定案に対する「答申」を行う。「答申」を受けて、総務大臣は裁定を日本通信とドコモに通知する。

 電気通信事業法第35条第7項の規定では、裁定の通知をもって「当事者間に協議が整ったものとみな」される。裁定案が原案通りで妥当だと答申された場合、ドコモは卸提供する音声通話サービスの料金を見直す必要がある一方、音声(準)定額の卸提供には応諾しなくてよいこととなる。

スケジュール これまでとこれからのスケジュール(総務省資料より:PDF形式)

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