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» 2020年08月22日 06時00分 公開

ソニーモバイルが“SIMフリーのXperia”を本格投入する狙いは? カギはミッドレンジにあり石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

ソニーモバイルが、SIMロックフリースマートフォンのラインアップを大幅に拡充する。発売されるのは、「Xperia 1」「Xperia 5」「Xperia 1 II」の3機種。Xperiaにとって大きな転換点になる可能性もある。そのインパクトを読み解いていきたい。

[石野純也,ITmedia]

 ソニーモバイルが、SIMロックフリースマートフォンのラインアップを大幅に拡充する。これまでの同社は、大手キャリア経由での販売が中心で、「Xperia J1」や「Xperia Ace」などのSIMロックフリースマートフォンも、MVNOが取り扱っていた。これに対し、今回発売が決まった3機種は、ソニーストアはもちろん、家電量販店やECでの販売も予定。保証サービスなども拡充する。

 発売されるのは、「Xperia 1」「Xperia 5」「Xperia 1 II」の3機種。いずれの端末も、SIMロックフリーでかつデュアルSIMに対応する。大手キャリアが取り扱ってきたため、端末そのものに目新しさはないが、Xperiaにとって大きな転換点になる可能性もある。そのインパクトを読み解いていきたい。

Xperia 10月30日に発売されるSIMロックフリー版の「Xperia 1 II」
Xperia
Xperia 19年モデルの「Xperia 1」や「Xperia 5」も、SIMロックフリーモデルとして再投入される

SIMフリーになって再登場するXperia1/5とXperia 1 II

 ソニーモバイルがSIMロックフリーモデルとして発売するのは、2019年のフラグシップモデルであるXperia 1と、その小型版にあたるXperia 5、そして、初の5Gモデルとして5月にauから、6月にドコモから発売されたばかりのXperia 1 IIだ。Xperiaの不振に苦しんでいたソニーモバイルだが、2019年2月にスペイン・バルセロナで発表されたXperia 1でコンセプトを刷新。「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というキャッチフレーズを掲げ、従来のXperia以上にとがった機能を詰め込むようになった。

Xperia ソニーモバイルは、19年のMWC BarcelonaでXperiaのコンセプトを刷新することを発表した

 例えば、Xperia 1は21:9の4K HDRに対応したディスプレイを搭載。ソニーで業務用モニターを手掛けるチームと連携を深め、クリエイターの意図を忠実に反映する「クリエイターモード」を搭載している。カメラについても、ソニーの一眼レフカメラ「α」シリーズでおなじみの「瞳AF」に対応した。その直接的な後継機にあたるXperia 1 IIでは、5Gに対応しながら、カメラに磨きをかけ、1/1.7型センサーや、デジタルカメラのように操作できる「Photography Pro」を採用している。SIMロックフリーで発売されるのは、このリニューアル以降のXperiaだ。

Xperia 「好きを極めたい人々」に向け、業務用のマスターモニターや、一眼レフαの技術を取り入れた。写真は19年のMWC。ブースでの展示も、そうしたコンセプトをアピールしたものに変わった

 いずれの端末も、売りとなる機能はキャリア版と同じだが、SIMロックフリー向けに一部のスペックが強化されている。ストレージ(ROM)はその1つで、Xperia 1 IIは128GBから256GBに、残り2機種は64GBから128GBへと、それぞれ“倍増”している。また、Xperia 1 IIに関しては、メモリ(RAM)も8GBから12GBへと増強され、スペックに定評のある他社のハイエンドモデルと比べてもそん色ない数値になった。

 キャリア版のXperiaは、各キャリアで利用することを前提に、周波数が最適化されているが、SIMロックフリーでは、回線の選択がユーザーに委ねられる。そのため、3機種とも3GやLTE、5Gの対応バンドを増やし、国内4キャリアでの利用が可能になっている。例えば、Xperia 1 IIの5Gは、ドコモ版がn78(3.7GHz帯)とn79(4.5GHz帯)の2つ、au版がn77とn78(いずれも3.7GHz帯)の2つにしか対応していなかったのに対し、SIMロックフリー版はn77、n78、n79の3バンドを網羅。LTEも同様に、4社の周波数をしっかりカバーしている。デュアルSIMで、複数キャリアを同時に使いたい人にとっては、うれしい仕様といえそうだ。

Xperia SIMロックフリー版Xperia 1 IIのスペック。キャリア版と比べ、メモリ、ストレージ、対応バンドといったスペックが強化されている

 ただし、残念ながらXperia 1はFeliCaを搭載しておらず、おサイフケータイなどは利用できない。ワンセグ/フルセグも3機種ともに非対応で、こうした機能はキャリア版から削られた。市場想定価格はXperia 1 IIこそ12万4000円とキャリアモデルよりわずかに高いが、Xperia 1は7万9000円、Xperia 5は6万9000円(いずれも税別)と、2019年モデルの2機種はハイエンドモデルの中ではリーズナブルな設定になっている。

Xperia SIMロックフリー版Xperia 1の仕様。残念ながら、おサイフケータイには非対応

Xperia 1 Professional Editionの反響を踏まえ、SIMフリーモデルを拡大

 ソニーモバイルは、これらのSIMロックフリーモデルを、「ソニーグループの持つあらゆるタッチポイントを使って展開する」という。ソニーのテレビやカメラ、オーディオを扱う家電量販店であれば、そのコーナーにXperiaを置き、連携して使えることや、機能に共通性があることを訴求する方針。スマートフォン売り場だけでなく、それぞれの分野に興味のあるユーザーに、Xperiaをアピールしていくというわけだ。

Xperia テレビコーナーやデジカメコーナーなど、ソニーの持つあらゆるタッチポイントでXperiaを展開する予定

 多数のショップを全国に抱えるキャリアは、販売力が高く、販路としては強力な一方で、メーカー自身の“色”を出しづらいのも事実だ。メーカーにとって、一次的な販売先はキャリアになるため、ユーザーの声をダイレクトに反映させるのも難しくなる。テレビやカメラ、オーディオなどの製品はキャリアが扱っていないため、これらと並べての販売もできない。数を取れる反面、メーカーの思い描くようなブランドイメージを築くのは難しい。リニューアルしたXperiaが、とがったユーザーをターゲットにしていることを踏まえると、SIMロックフリーでの投入は、むしろ自然なことといえそうだ。

 ラインアップの拡大に踏み切った背景には、2019年10月に発売された「Xperia 1 Professional Edition」の反響がある。同モデルは、ディスプレイのホワイトバランスを映像制作現場で使われるマスターモニターに合わせ、個体ごとにチューニングした、いわば特別版の端末。価格も14万3000円(税別)と高かったが、ソニー製品のファンの心はしっかりつかんでいた。購入者のアンケートを見ると、60%以上が購入理由として「ソニーが好きだから」と答えている。だが、それ以上に多かったのが、「SIMロックフリーだから」という動機だ。実に8割の購入者が、SIMロックフリーであることに魅力を感じていた。

Xperia Xperia 1 Professional Editionの購入理由で最も多かったのが、SIMロックフリーであることだった

 本格展開にあたって補償サービスも導入。こちらも、Xperia 1 Professional Edition購入者の声を反映させる形で、「Xperia ケアプラン」を用意した。料金(税別)は月額500円、年払いだと1000円割引の5000円になる。中身は、交換サービスと修理サービスの2本柱。前者は、メーカー保証でカバーできないときに交換機を受け取れるサービスで、Xperia 1 IIが1万円、Xperia 1/5が7000円。年2回までの利用が可能だ。後者の修理サービスは回数制限なく、修理費用が5000円に抑えられる。

Xperia 手厚い保証サービスも用意。交換サービスも利用できる
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