KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど電気通信事業サービスを提供する28社が11月11日、NTT(持株)のNTTドコモ完全子会社化に関する意見申出書を総務大臣に提出した。
NTTによるドコモの完全子会社化は、NTT法に定めるNTTの目的と事業内容にそぐわないものであり、公正競争を確保するために必要とされてきた「NTTドコモの完全民営化」や「NTTドコモに対するNTTの出資比率の低下」などの趣旨に反するもの――というのが意見の概要だ。
同日、28社を代表してKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが、意見申出書を提出する意図を説明した。28社の中には沖縄セルラー、オプテージ、QTnet、ソラコム、日本ケーブルテレビ連盟、ビッグローブ、UQコミュニケーションズ、LINEモバイル、Wireless City Planningなども含まれる。
今回の要望を提出した理由は、NTTによるドコモの完全子会社化がNTTの一体化、NTTの独占回帰につながり、公正な競争環境が失われることで5G〜6G時代に向けた技術革新やユーザーの利益を損なう――というもの。
NTTは1992年にドコモを分社化。ドコモを完全民営化して出資比率を下げることで、NTTの資本的支配やボトルネック設備(NTT東西が独占的に保有している、電話線や光ファイバーなどの設備)から切り離すという方向性があった。2001年3月には、規制改革推進3か年計画が閣議決定し、出資比率の引き下げを含む、NTTグループ内の相互競争実現が期待された。
しかしドコモの完全子会社化は「NTTの在り方を巡る政策議論で示された、完全民営化と出資比率低下に逆行する。事実上、巨大な支配力をもつNTTの一体化につながる」とKDDI 理事 渉外広報本部 副本部長の岸田隆司氏は懸念する。現在、携帯電話のシェアはドコモが43.1%、FTTHのシェアはNTT東西が65.2%を有しており、「現時点でも、携帯やFTTHの市場において、NTTグループはドミナント(支配的な)事業者であることには変わりない」と同氏。子会社化によってNTTグループの支配力がさらに強まるという考えだ。
また、ドコモがNTTの100%子会社になると、上場を廃止することになり、一般株主を意識する必要がなくなる。「より持株(NTT)の意思、考えに基づくような経営方針にかじを切ることで持株のコントロールが強くなり、現行の各種ルールを守っていくインセンティブが薄れていくことを懸念している」(ソフトバンク担当者)というコメントも出た。
NTTは、ドコモを完全子会社化した後、NTTコミュニケーションズをドコモに移管することも視野に入れているが、NTTコムはドコモの禁止行為規制の対象企業でもあることから、「NTTコミュニケーションズの組織改編については改めて議論が必要」(岸田氏)とのスタンス。NTT東西はNTTコムの競争事業者に対しても同等の条件でボトルネック設備を提供し、NTT東西とNTTコムの人事交流や情報交換を制限するファイアウォール規制を取ってきたが、「今回のことで形骸化することがあってはならない」と岸田氏は警戒する。
ソフトバンク 渉外本部 本部長 海外担当役員代理の松井敏彦氏は「ドコモとNTTコムの統合については、われわれは反対の立場」と話す。「NTTコムも市場で影響力の強い会社。ここが最適化されてしまうと、法人系をコム、コンシューマーをドコモ、ネットワークを東西、全体のコントロールをNTTがやると、一社体制になる。何らかの連携が進むのなら、禁止行為規制やファイアウォールを強化するなどの追加措置が必要では」(同氏)
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