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「Redmi Note 9T」はなぜソフトバンク独占販売に? Xiaomiの端末戦略を聞く(2/2 ページ)

» 2021年02月02日 14時30分 公開
[石野純也ITmedia]
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Redmiはトヨタのスマホ版のような存在になってほしい

―― Xiaomiは、昨年6月にRedmiシリーズを初めて投入しました。こちらの手応えを教えていただきたいのと同時に、フィードバックをRedmi Note 9TやRedmi 9Tにどう生かしたのかも教えてください。

ワン氏 いい質問です。Redmiは日本において、まだ新しいブランドですが、私どもが目指すのは、お支払いした金額以上の価値を提供したいということです。昨年、Redmi Note 9Sを投入し、われわれの価値提案を示すことができました。評判は、非常によかったですね。これは、ユーザーからのフィードバックを見てもそうですし、販売数を見てもそうです。

 今回のRedmi Note 9Tは、よりお求めやすい価格に設定していますが、ここにはユーザーからのフィードバックも取り入れています。日本の消費者のフィードバックで、一番重要だったのが大容量バッテリーだったので、さらに大容量になっています。また、Redmi Note 9Sはちょっと重いというフィードバックもあったので、2製品ともに軽量化しています。

 こうした最適化の取り組みは、さらに進めていきます。長期的に言えば、Redmiのブランドはトヨタのスマホ版のような存在になってほしい。品質的に信頼でき、高いお得感があると認識されるようになっていきたいですね。

―― とはいえ、大容量バッテリーや軽量化はグローバル版にも共通した特徴だと思います。日本版ならではの部分はどこかありますか。

ワン氏 Redmi 9Tに関しては、FeliCaに加えて、対応バンドをカスタマイズしました。ソフトバンクのために、4Gと5Gの両方に手を入れています。FeliCa搭載と対応バンドの変更は、今までやってきた特定の国に対するカスタマイズの中で最大のものです。いかにわれわれが力を入れているかが、お分かりいただけると思います。

菅野氏 まさにFeliCaですね。グローバル版と同じですが、大容量バッテリーも日本市場にマッチする仕様としてインプットしてきました。あとは、価格もグローバルでスティーブンが頑張ってくれています。

FeliCaに対応すべく、背面カバーを新たに設計

―― FeliCaは初めてですが、どういった苦労がありましたか。また、SIMフリースマートフォンでのFeliCaはいかがですか。

ワン氏 今回は初めてだったので、ソフトバンクから本当にたくさんのことを学びました。それほど大きな困難があったわけではありませんが、エンジニアリングのリソースはたくさん必要でした。より具体的に申し上げると、FeliCaチップのスペースを確保するため、バックカバーは新しく設計しています。FeliCaチップを搭載するため、アンテナの変更も必要になりました。

 こうした日本市場のためのカスタマイズは、今後も続けていきますが、今のところ、具体的な将来のデバイスのことをお話しすることはできません。

―― 他社の事例ですが、OPPOの場合、初めてFeliCaを搭載する際には、FeliCaネットワークスの技術陣が現地に常駐したという話をうかがっています。コロナ禍で海外渡航が難しくなる中、何か影響はありましたか。

ワン氏 Xiaomiには、日本のプロジェクトに関わったことのあるエンジニアがたくさんいます。また、今回のプロジェクトのために、日本向けの製品に携わったことのあるエンジニアを採用しています。ソフトバンクからも、多大なご支援をいただけました。開発の半分は私たちですが、残り半分はソフトバンクです。

菅野氏 われわれの開発部隊がかなり入り込み、準備をしてきました。短い時間ではできないと、一緒に戦略的なディスカッションをして、早くから開発をしていました。ただ、完全リモートで、しかも新しいパートナーと端末を投入するのは初めてのことです。間に合わないかもしれないという心配はありましたが、両社で毎週のように打ち合わせしながら、何とか間に合わせることができました。

 実は、私もスティーブンとは1回も(対面で)合ったことがありません(笑)。それでも波長は合いました。先ほど、スティーブンは半分ソフトバンクとおっしゃっていましたが、ビジネスサイドとマーケティングサイドも連携できた、面白いプロジェクトだったと思っています。

 ソフトバンクは、既存のパートナーと安定的な端末を投入する一方で、毎年、新しいところをチャレンジする領域があります。Xiaomiとのパートナーシップは、後者の取り組みです。それをリモートでできたのは、感慨深いですね。

ワン氏 はい。菅野さんとはネット友達です(笑)。

日本市場にかなりの投資をしていく

―― 日本市場では、今後、どのような端末を展開していくのでしょうか。

ワン氏 日本市場は、長期的で戦略的な市場だと考えています。昨年は、日本市場参入の初年度にあたります。1年間で基盤を作り、市場について学ぶことに力を入れてきました。体制は整い、準備はできています。よりプランもでき、道のりも描けました。日本市場には、かなりの投資をしていこうと思っています。エンジニアリング、カスタマイゼーション、セールス、マーケティングに投資をしていきます。

 弊社のスローガンは、ベストなテクノロジーをどんな人でも享受できるようにするというものです。2製品を見ていただければ、そういったことが分かると思います。5Gというベストなテクノロジーを、手の届く価格でという取り組みは、長期的に続けていきます。業界全体がお手頃なモデルへシフトしていく手助けになればと思っています。全員にXiaomiの製品を買ってくれというのではなく、業界全体がアフォーダブルになればいいとの考えです。

―― Xiaomiには、IoT製品も多くありますが、ソフトバンクグループ全体でこういったものを扱っていく予定はありますか。

菅野氏 Xiaomi端末を投入するにあたり、ソフトバンクC&Sとも話をしながら進んできました。Xiaomiには、いろいろな子会社や出資先があり、今後も一緒にやっていくことになるでしょう。どんどんコラボして、IoT製品を出していきたいと思っています。

取材を終えて:Redmi Note 9Tの価格は戦略的で衝撃的

 新たに投入するRedmiシリーズ2機種は、どちらも2万円以下でコストパフォーマンスが高いが、とりわけソフトバンク向けのRedmi Note 9Tは衝撃的だ。5G対応で、FeliCaを搭載しながら2万円を下回るのは、戦略的な位置付けで共同開発してきたからこそ。“5G祭り”のみこしとして、目立つ存在になりそうだ。Redmi 9Tも、スペックに対して価格は十分安い。大手キャリアのオンライン専用料金プランは3月にスタートするが、キャリアによっては端末を取り扱わないこともある。Redmi 9Tは、こうしたプランとの相性もよさそうだ。

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