5Gのサービスが日本で開始されてから、間もなく1年。エリアは徐々に広がり、都市部であれば移動中に5Gをつかむことも増えてきた。それと並行する形で、端末のバリエーションが広がり始めている。当初はフラグシップモデルがズラリと並ぶ形で、10万円以上する端末が中心だったが、2020年の秋冬ごろから徐々に5万円を下回るエントリーモデルが増えてきた。2019年10月の電気通信事業法改正で、端末購入補助に大幅な制限がかかる中、コストパフォーマンスがいいモデルをどこまでそろえられるかは、5G普及の行方を左右する。
春商戦は、携帯電話市場で最も新規契約が多い天王山といわれている。新生活を迎える新社会人や、新入学の学生がスマートフォンを購入する機会が大幅に増えるからだ。このタイミングに合わせ、ソフトバンクはXiaomiとタッグを組み、超低価格の5Gスマホ「Remi Note 9T」を導入する。対するKDDIも、auブランドで、サムスン電子やOPPOのエントリーモデルを投入することを明かした。MNPで一括価格を抑える動きもあり、エントリーモデルの戦いが激化しそうだ。
ソフトバンクが2月下旬に発売するのが、XiaomiのミドルレンジモデルであるRedmi Note 9Tだ。同モデルは、Xiaomiのスマートフォンとして初めておサイフケータイに対応。ベースになったグローバルモデルはある一方で、FeliCaを搭載するにあたり、「バックカバーを新しく設計し、アンテナの変更もした」(Xiaomi 東アジア担当ゼネラルマネージャー スティーブン・ワン氏)とさまざまなカスタマイズを施している。4Gと5Gの対応バンドも、ソフトバンクが持つ周波数帯に最適化したという。
Xiaomiは、2019年12月に日本市場に参入したばかり。1年強でおサイフケータイに対応できたのは大きなサプライズだが、それ以上に驚きだったのは、その価格である。ソフトバンクによると、Redmi Note 9Tの本体価格は1万9637円(税別)。税込みでも2万円強で、ミドルレンジモデルとして見ても破格の安さだ。さらに、MNPで他社から移ると、本体価格とほぼ同額の割引を受けることができ、実質価格は1円にまで下がる。
ソフトバンクの常務執行役員、菅野圭吾氏は「市場では料金プランが注目されているが、お客さまがお支払いになる総額は端末代も含めてのものになる。5Gで料金と端末を合わせてお求めやすいものにしていくことには意義がある」と、その狙いを語る。約2万円とはいえ、Redmi Note 9Tのスペックはミドルレンジモデルの基準は十分満たす。プロセッサには、MediaTekの「Dimensity 800U」を採用。メインのカメラも4800万画素で、4つの画素を1つに結合することで、暗所での写りを向上させている。
主流であるQualcomm製のSnapdragonではないため、他モデルと横並びで比較しづらいが、ワン氏によると、AnTuTu Benchmarkでのスコアは「20万点から30万点」だといい、性能的にはSnapdragon 765Gあたりに近い。Snapdragon 765Gを搭載し、日本仕様に対応したモデルがおおむね7万円前後で販売されていることを踏まえると、Redmi Note 9Tは単に安いだけでなく、コストパフォーマンスも高いモデルといえそうだ。
菅野氏が「お互いの思惑が合致した戦略的なモデル」と語っているように、このモデルは、5Gを普及させたいソフトバンクだけでなく、Xiaomiの日本市場攻略にとっても鍵となる端末だ。グローバルでは世界シェア3位を取るなど、急成長しているXiaomiだが、日本市場では歴史が浅く、まだまだ知名度は低い。5Gを普及させたいソフトバンクが安さを大々的にアピールすれば、日本での存在感を高めることができる。「他と同じことをしても決して勝てない」(ワン氏)だけに、価格面で一歩踏み込んだ格好だ。
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