2700円に値下げをした「ahamo」の戦略 “サービスの簡略化”による混乱も?石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2021年03月06日 10時36分 公開
[石野純也ITmedia]

総額表示対応と他社対抗でahamoを値下げ、dカードとの連携も強化

 ahamoが料金を改定した狙いは、大きく2つある。1つが総額表示への対応、もう1つが他社対抗だ。鳥塚氏は、「2700円に改定したことにより、税込みでも2970円になり、3000円を切る価格になる」と語った。他社は5分間の通話定額がなく、条件は異なるものの、料金を改定していなければ、4月以降、ドコモだけが3000円を超えているように見えかねない状況だった。

 また、他社が通話定額をオプションにしたことで、「ドコモのahamoは高いのではないかというご心配をいただいた」(同)という。通話定額を外せば、他社と同額にはできるが、「20代の約9割が何らかの形で音声通話をご利用になっている」(同)。この状況を踏まえると、都度、30秒20円の追加料金がかかるより、通話定額が含んだワンプランになっている方がシンプルに見えるのも事実だ。280円値下げしても、通話定額分のARPUが上がることになるのもドコモにとってのメリットだ。

ahamo 固定電話への発信なども必要になるため、シンプル化するには通話定額があった方がいいというのがドコモの主張だ

 値下げした分、収益性は低くなる恐れはある一方で、「他社をご利用の方にドコモに来ていただく、あるいはドコモの方にそのままドコモを使い続けていただけることを狙っているが、その効果を最大限発揮していくことで、この金額は吸収できる」(同)。流出防止と他社からの獲得が増えれば、カバーできる範囲だという。

 dカードとの連携も強化し、金融・クレジットカード事業とのシナジー効果を出していく構えだ。ahamo契約者がdカード会員になった場合、9月からデータ容量が1GB追加される。dカードGOLDの場合、増量されるデータ容量は5GB。ベースの20GBと合わせて、計25GBまで利用可能になる。ahamoは、20GBを超過した場合、データ容量の追加に1GBあたり500円かかる。dカードは年会費無料のため、審査にさえ通れば誰でも1GBが無料で手に入るというわけだ。

ahamo dカード、dカードGOLDとの連携を強化。ボーナスパケット特典は、ahamoだけの特徴といえる

 ahamoには、ギガホやギガライトにある「dカードお支払割」が適用されない上に、料金自体が下がってしまうため、dカードGOLDでもdポイントはたまりにくくなる。一方で、金融・クレジットカード事業は、ドコモにとって非通信分野の柱の1つ。ahamoのユーザーをdカード、dカードGOLDの獲得につなげていきたいのは自然な流れだ。オンライン専用プランのため、ショップでの獲得ができないのは向かい風だが、その分、データ容量の追加で料金プランとの直接的な連携を強化したといえる。

ahamo 金融やクレジットカード事業は、ドコモの新たな柱の1つ。話題性のあるahamoと連携させていくのは、合理的な戦術だ

 他社を出し抜く形で発表したahamoだが、そのインパクトは大きく、事前エントリーは2月28日時点で160万を突破している。「自社内の(プラン変更の)比率は高いが、他社の方もたくさんエントリーしている」(同)という。エントリーしたユーザーの中で実際に契約する割合がどの程度になるのかは未知数だが、「(ahamoのサービスが開始される)26日には、お客さまの申し込みが殺到することが予想される」(マーケティング部長 川崎博子氏)。4月15日以降に申し込むと、特典のdポイントが3000ポイント増える混雑緩和策も導入したほどだ。料金値下げで、この勢いに拍車が掛かる可能性もある。

ahamo 先行エントリーは2月28日時点で160万を突破した

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