ITmedia Mobile 20周年特集

Nokiaが世界を制した時代から中国メーカーの台頭まで 海外のモバイル業界20年を振り返るITmedia Mobile 20周年特別企画(4/4 ページ)

» 2021年05月07日 06時00分 公開
[山根康宏ITmedia]
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中国メーカーの時代到来、スロースタートとなった5G【2016年〜2020年】

 2016年4月にHuaweiが発表した「P9」はスマートフォンの歴史の中エポックメーキングとなる製品であることは間違いない。当時はまだ珍しかったデュアルカメラを搭載しただけではなく、そのカメラはLeica(ライカ)と共同開発した。中国のスマートフォンメーカーと、カメラ市場で長年の歴史と技術を持つ老舗メーカーが提携を行ったのだ。HuaweiはこのLeicaとの提携により製品の実力がようやく認められるようになり、欧州や日本など先進国で人気を高めていったのだ。

HUAWEI P9 Leicaと提携したHuawei「P9」。先進国で人気を高めた

 Huaweiの母国である中国市場はスマートフォン需要が急成長し、OPPO、Vivoがミドルハイレンジモデルを積極的に展開してシェアを伸ばしていく。両者はインドや東南アジアなど新興国にも展開し、SNSに写真をアップするためのセルフィー人気を背景に、インカメラを強化したモデルを次々と出していった。また製品展開の立て直しを図ったXiaomiも積極的に新興国へと進出。インド市場ではMicromax(マイクロマックス)など国産メーカースマートフォンが一時は大きなシェアを握っていたが、2017年にはXiaomiが1位となる。インド市場は中国に次ぐ巨大なスマートフォンマーケットとして各メーカーが低価格モデルを中心に次々と投入していく。

 OPPOはインド向けに低価格ブランド「realme」を立ち上げると、販売が好調なことから分社化を行い、今ではハイスペック製品まで展開するようになった。OPPOの元副社長が2013年にハイエンドモデルメーカーとして「OnePlus」を立ち上げ、この3社は「Oujia Holdings」(欧加ホールディングス)としてバリエーションに富む製品展開をしている。なお、2020年に日本のオッポジャパンはオウガ・ジャパンに社名変更したが、オウガは「欧加」の日本語読みと推測される。

Realme 深沢直人氏のデザインモデル「Realme X Onion Edition」。OPPOから分離し、さまざまなモデルを出している

 先進国ではスマートフォンのカメラ性能が急激に高まっていった。デュアルカメラからトリプルカメラ、そしてクアッドカメラが当たり前となった。カメラの心臓部であるセンサーもソニーが圧倒的なシェアを誇る中、Samsungは業界初の1億画素センサーを投入、5000万画素クラスのセンサーでも攻勢をかける。また、インカメラも高画質化が進み、さらにカメラを小さくするパンチホール型や、ZTEのようにディスプレイ埋め込み型の隠れたカメラが商用化。Appleが2017年にディスプレイ上部を欠き取った「ノッチディスプレイ」を採用する「iPhone X」をリリースすると、各社がそれをまねた製品を次々と出した。しかし1年もするとノッチ採用メーカーは急減している。

 中国メーカーは先進国ではハイエンド、新興国ではコスパに強い製品を次々に投入し、老舗メーカーからシェアを次々と奪っていく。低価格モデルに特化しハイエンドモデルの開発を怠っていたメーカーは力を失っていった。欧州ではWiko(ウィコウ)やAlcatelブランドがプリペイド端末として人気だったが、Xiaomiなどの低価格モデルに市場を奪われていく。Alcatelブランドを展開するTCLは、2019年からTCLブランドのスマートフォンのグローバル展開を開始し、ブランドイメージを一新しようとしている。

 このように、順調にシェアを伸ばしていった中国メーカーだが、米国との政治問題に巻き込まれる。2018年にZTEが不正輸出の疑いで制裁を受け、2020年にはHuaweiが安全上の理由から同じく制裁を受けた。Huaweiは2019年にAppleを抜き全世界のスマートフォン出荷台数でシェア2位となり、2020年第2四半期には1位となったが、2021年には格安ブランドから出発した傘下ブランド「Honor」を別会社化して分離。スマートフォンの新製品も思うような展開ができず、シェアトップグループから脱落してしまう。Huaweiと入れ替わりシェア2位に返り咲いたAppleだが、今度はXiaomiやOPPOがその座を狙っている。

Honor HuaweiからHonorが独立。市場のパワーバランスが大きく変化する。写真は2019年に発売された「Honor 20 Pro」のMoschinoモデル

 Microsoftが2016年に端末市場から撤退したことを受け、フィンランドのHMD GlobalがNokiaからブランド貸与を受け「Nokia」のフィーチャーフォンとスマートフォンを2017年から投入したことも、この5年間の1つのトピックである。2017年に発売した過去のヒットモデルをリバイバルさせた「Nokia 3310 3G」は、フィーチャーフォンにもかかわらず、各国で人気となった。

 2019年から各国で開始された5Gサービスは、2020年に世界を襲った新型コロナウイルスの影響により普及は進んでいない。しかし抑え込みに成功した中国では5G加入者が2億人を超し、気が付けば世界最大の5G市場となった。中国国内では低価格な5Gスマートフォンが多数登場しており、その多くがQualcommではなくMediaTekの「Dimensity」を採用。Omdiaの調査によると、2020年のスマートフォンチップセットの出荷量でMediaTekがQualcommを抜き1位となった。5Gの開始はスマートフォン各社のパワーバランスだけではなく、チップセット市場にも大きな影響を与えている。

 平らな1枚の板だったスマートフォンの形状も、2018年に折りたたみ型が登場し、2020年には巻き取り式ディスプレイを搭載するスライド機構を持ったモデルが登場。今後は背面にもディスプレイを搭載するモデルや、3つに折りたたむデザインなど、スマートフォンの形も変わろうとしている。通話とテキストを送り合う通信機器だった携帯電話は、この20年で情報収集とコミュニケーションを行う生活必需品になった。これから10年後、そして20年後、スマートフォンはどのように進化していくのだろうか。

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