連載
» 2020年11月17日 06時00分 公開

山根康宏の中国携帯最新事情:Huaweiが“Honorブランド”を売却 独立して生き残れるのか? (1/2)

米国政府による制裁を受け、Huaweiのスマートフォン事業は苦境を迎えようとしている。その中で浮かび上がったのが同社のサブブランド「Honor」(オナー)を事業として売却する動きだ。Honorが完全独立したメーカーになったとして、生き残ることはできるのだろうか。

[山根康宏,ITmedia]

 米国政府による制裁を受け、Huaweiのスマートフォン事業は苦境を迎えようとしている。その中で浮かび上がったのが同社のサブブランド「Honor」(オナー)を事業として売却する動きだ。Honorブランドは日本などではHuaweiの下位モデルというイメージが強い。ところがハイスペックな製品も展開しており、特に中国国内ではHuaweiとは完全に独立したブランドとして製品を展開している。

Honor 中国でHonorはHuaweiと別ブランドとして展開。広告にHuaweiのロゴは見えない

 とはいえ、プロセッサはHuawei同様にHiSilicon(ハイシリコン)のKirinを採用したモデルが多く、多眼カメラの組み合わせも同時期発売のHuaweiモデルと同等であるなど基本設計には多くの共通点がある。例えば2020年4月に発表された「Honor 30 Pro+」はKirin 990を搭載、カメラは5000万画素+800万画素(5倍ペリスコープ望遠)+1600万画素(超広角)+200万画素(深度測定)の組み合わせ。Huaweiブランドの「P40 Pro+」「P40 Pro」と肩を並べる性能だ。

Honor 「Honor 30 Pro+」のカメラ性能はP40シリーズと変わらない

 HonorがHuaweiから独立するという意味は、全く別の会社になるということだ。製品開発や部材の仕入れ、従業員もHuaweiから分離され製品展開も全く異なるものになる。例えばプロセッサは今後入手が難しくなるKirinではなく、QualcommやHuawei、Samsungなどから調達していくだろう。

 Huaweiとしては大黒柱でもあるサブブランドを手放すデメリットは大きい。しかし現状のままではスマートフォンビジネスは縮小が続き、真っ先に切らざるを得なくなるのがサブブランドであるHonorの製品開発だろう。だがHonorは中国では既に大きなブランド力を持っており、このままフェードアウトさせるのは惜しい。現状ならばそのブランドを欲しがる企業があってもおかしくない。

 海外の報道ではHuaweiはHonorをDigital Chinaに売却する交渉がまとまり、その額は1000億元(約1兆5600億円)だという。

【2020年11月17日18時20分追記】Huaweiは11月17日、Honorの事業を中国のShenzhen Zhixin New Information Technologyに売却することを発表した

Honor Huaweiの2019年決算

Xiaomiのサブブランド対抗で生まれたHonor

 ではHonorが完全独立したメーカーになったとして、生き残ることはできるのだろうか。Honorの現在の立ち位置から見ていこう。

 HonorはHuaweiの低価格ブランドとして2013年に誕生した。その頃のHuaweiは「Ascend」ブランドでスマートフォンを展開しており、ハイエンドモデルの「D」、ファッション端末の「P」、一般向けの「G」、低価格で若者向けの「Y」という4つのラインを持っていた。

 ちなみにGartnerの過去のデータを見ると、2012年時点でHuaweiは既に世界3位のスマートフォンメーカーだった。しかしマーケットシェアは1位Samsungが30.3%、2位Appleが19.1%であったのに対し、Huaweiはわずか4%と2位に大差をつけられていた。まだまだ「中国から出てきた、勢いを感じさせるメーカー」にすぎなかったのだ。

Honor 2012〜2013年のスマートフォンシェア。Huaweiは3位だが2位との差は大きい

 このようにHuaweiがようやくグローバル市場で存在感を示し始めたころ、中国国内ではXiaomiが2011年にスマートフォン「Mi」を発表。圧倒的なコスパの高さで一気に人気メーカーとなっていく。新製品を出すたびに「秒」の単位で完売するなど、ネットはXiaomiの話題であふれていった。1999元(約3万1000円)でハイエンドプロセッサを搭載したXiaomiのスマートフォンは、その価格でミドルレンジ端末を出していた他の中国メーカーに大きなダメージを与えたのだ。

 そのXiaomiが2013年7月に今度は799元(約1万3000円)という激安スマホ「紅米(Redmi)」を投入。これでXiaomiは中国市場の動きを全てコントロールするマーケットリーダーの座を確固たるものにした。紅米はまず国内の零細メーカーや粗悪な品質の山寨機(さんさいき)を駆逐してしまったのだ。そして他の中国メーカーも紅米の低価格にはすぐに太刀打ちできなかった。

 しかしこの「紅米ショック」に真っ先に動いたのがHuaweiだった。紅米登場から5カ月後、2013年12月に新たなブランドHonorを立ち上げ、その第1号機として「Honor 3C」を発表した。価格は紅米と並ぶ798元、Xiaomiに倣いオンライン販売専門とすることで、量販店やキャリアで販売されるHuaweiブランドとは別のブランドとして展開することでバッティングも避けた。Honorは紅米人気もありあっという間に「格安スマホ」として認知されるようになっていったのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう