米国の規制強化でプロセッサ製造の道も絶たれたHuawei 業界への影響は?:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2020年09月03日 16時13分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 新型コロナウイルスが世界の経済活動に影響を与えている中、2020年第2四半期の世界のスマートフォン出荷台数でHuaweiがついに1位となった。大手調査会社4社のうち、IDC、カナリス、カウンターポイントはいずれもHuaweiがサムスンをわずかな差で抜きさり、史上初の1位となる調査結果を発表した(ガートナーのみSamsung1位、Huawei2位)。Huaweiは前年同期比で出荷台数の伸びはマイナスとなったが、Samsungがそれ以上に落ち込んだことで追い抜いた。

Huawei ついにスマートフォンでシェア1位となったHuawei

 しかしHuaweiが好調なのは中国国内市場のみ。カナリスのレポートを見るとHuaweiのスマートフォン出荷台数の中国とその他全世界の割合は、2019年第2四半期の64:36から2020年第2四半期は72:28と中国国内シフトが急速に進んでいる。前年同期比の成長率を見ても、2019年第2四半期から中国以外の国ではマイナスが続いている。海外市場での落ち込みを中国市場でカバーしているという状況だ。

Huawei Huaweiのスマホ出荷台数は中国に集中していることが分かる(カナリス)

 Leica(ライカ)とのコラボによる高性能なカメラの搭載、仕上げが美しい質感、縦横に展開する豊富な製品バリエーションと、Huaweiのスマートフォンはここ数年で急成長を遂げた。カメラ性能が高いことはもちろんのこと、子会社HiSilicon(ハイシリコン)が設計するプロセッサ「Kirin」シリーズの性能も高い。もはやHuaweiが毎年春と秋に投入するフラグシップスマートフォンが業界トップレベルの製品であることに疑問を抱く人はいないだろう。

Huawei Huaweiの新製品は業界トップクラスの性能・品質を誇る

プロセッサ継続製造の道が絶たれた

 しかし米政府がHuaweiを安全上の危機があるとして制裁に踏み切ったことで、Huaweiはネットワークビジネスに加え、スマートフォンビジネスにも大きな影響を受けることになった。HiSiliconのスマートフォン向けプロセッサは台湾のTSMCに委託しているが、9月15日以降は取引が中止される。次期フラグシップモデル「Mate 40シリーズ」(仮称)にも搭載予定のKirinが、今後製造できなくなってしまう。

 米商務省は8月17日にエンティティリスト(輸出禁止企業一覧)を発表し、Huaweiの子会社などが含まれた。これにより米国の製造機器やソフトを使用して製造された半導体類がHuaweiと子会社へ輸出できなくなった。しかしHuaweiはプロセッサを台湾のMediaTekから調達する予定で、MediaTekは8月28日に米商務省に対してHuawei向けの出荷許可申請を行っている。

脱Kirinへ、カギを握るのはMediaTek

 既にHuaweiは2020年に入ってから脱・Kirinに動き出しており、中国にて2000元(約3万1000円)前後で販売されるミドルレンジ5GスマートフォンにMediaTekのプロセッサ「Dimensity 800」の採用を進めている。同プロセッサを採用したモデルは5月以降、「Enjoy Z」「Enjoy 20 Pro」「Honor Play 4」「Honor X10 Max」「Honor 30青春版」「Maimang 9」と6機種が登場した。既にHuaweiの低価格5Gスマートフォンの多くがKirinを搭載していないのだ。

Huawei Dimensity 800を採用した「Honor 10X Max」

 HuaweiはMediaTekが7月に発表したプロセッサ下位モデル「Dimensity 720」の採用も決めている。今後はハイエンドモデルに上位プロセッサ「Dimensity 1000シリーズ」の採用も進むだろう。秋のMate 40は中国向けがKirin、グローバル向けはDimensity 1000シリーズを搭載するという話も聞かれる。

Huawei HuaweiはMediaTekの5G向けプロセッサをどれだけ調達できるのか

 しかしMediaTekのプロセッサ供給量にも限りがある。Huaweiのスマートフォン全出荷台数は2019年に約2億4000万台だった(カナリス調査)。HuaweiはMediaTekと1億2000個のプロセッサ調達契約を結んだと中国では報道されているが、2019年の出荷台数をカバーするためには大幅に不足する。QualcommやSamsungからの調達は考えにくく、中国UNISOCの5Gプロセッサの実力は未知数だ。またKirinの上位モデルほどのパフォーマンスをMediaTekのDimensity 1000シリーズが出せなければ、Huaweiのハイエンドモデルの売れ行きにも影響を与えてしまうだろう。

Huawei UNISOCの5Gプロセッサはまだ2社、2機種にしか採用されていない

 いずれにせよ、Huaweiの今後のスマートフォンビジネスは、MediaTekが大きなカギを握る存在となる。トレンドフォースの試算では、Huaweiの2020年のスマートフォン出荷量は現在のプロセッサの在庫分を踏まえると1億9000万台と予想している。一方、2021年はMediaTekなどの半導体メーカーが米商務省から許可を得た場合で1億台を超えるレベル、許可がおりなければ3000万台から5000万台に落ち込むとみている。スマートフォン出荷台数でシェア1位の座から滑り落ちるどころか、5位以下へ転落してしまう可能性もあるのだ。

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