ITmedia Mobile 20周年特集

Nokiaが世界を制した時代から中国メーカーの台頭まで 海外のモバイル業界20年を振り返るITmedia Mobile 20周年特別企画(1/4 ページ)

» 2021年05月07日 06時00分 公開
[山根康宏ITmedia]

 創刊20周年を迎えたITmedia Mobile。実は香港に在住する筆者の携帯電話研究家としての歴史もほぼ20年となる。Webメディアへの執筆を開始したのも実はITmediaが最初であり、2004年3月、ドイツ・ハノーバーで開催されたCeBIT取材中、当時編集長の斎藤健二氏に現地で声をかけていただきライターとしての本格的な活動を始めることができた。そしてその当時から今も、筆者は海外のモバイル事情を追い続けている。

 今から約20年前、日本人がiモードなど携帯インターネットを活用しはじめていたころ、海外では携帯電話といえば通話とSMSの道具だった。しかしその後すぐに黎明(れいめい)期のスマートフォンが次々と登場。2007年にiPhoneが出てくるとスマートフォンの時代となり、海外の端末メーカーの躍進が始まった。この20年の海外の携帯電話市場の動きを5年ごとに振り返ってみよう。

Nokiaが世界を制し、第一次中国メーカー台頭時代を迎える【2001年〜2005年】

 2000年頃の海外ではどのような携帯電話が使われていたのだろうか。日本ではカラーディスプレイを備え、カメラも搭載した携帯電話やPHSを若者でも使っていたころだ。海外のGSM圏、すなわち米国と韓国を除く多くの国では1990年代はNokia、Motorola、Ericssonが世界3大ブランドだった。

 2000年に入るとNokiaが一歩抜け出し、Samsungが急激にシェアを伸ばしていった。当時は欧州メーカーも多く、Alcatel(アルカテル)、Siemens(シーメンス)、Sagem(サジェム)といったブランドがアジアを含むGSM圏で広く製品を販売していた。NECやパナソニックも一定の認知度を持ち、ソニーも海外向けに携帯電話を販売していた。

N900 NECが海外で出したカード型フィーチャーフォン「N900」

 しかし2000年になるとソニーはシェアを急落させ、世界初のBluetooth搭載携帯電話「R520」などを積極的に市場に投入していたEricssonも販売数を落としていった。その結果、2001年に両者は歴史的な合併を行い「Sony Ericsson」となったが、そのときには旧ソニーの製品ラインアップを全て廃止し、エリクソンプラットフォームへ一本化するという英断が取られた。日本のソニー・エリクソンは日本開発製品、海外のSony Ericssonは海外専用品という分業体制が始まったのだ。

 携帯電話を取り巻くサービスでは、日本のiモードの成功にあやかろうとGSM圏では2000年頃からWAP(Wireless Application Protocol)サービスが登場。通信キャリアはコンテンツ配信を行ったが、携帯電話のスペック(主に画面サイズ)がまちまちであり、性能も低かったことから普及には至らなかった。NTTドコモは独自に海外通信事業者にiモードサービスの展開も行ったが、フランスなど一部の国で当初は成功を収めたものの、対応端末やコンテンツ不足から全く普及しなかった。海外で携帯電話インターネットサービスが一定の成功を収めたのは、日本と同じ「キャリア主体ビジネス」を行い、生活スタイルも似ている韓国市場だけだった。

 一方、モバイル端末でのインターネット利用は当初パームやWindows CE/Windows MobileといったPDA(一部モデルは通信機能も備えた)が使われていたが、PDAのPSION(サイオン)に使われていた「EPOC OS」をNokia、Ericsson、Motorolaなどが「Symbian」として独立させ、Javaに代わる高度な携帯電話向けOSとして採用することにした。Nokiaは2002年からこのSymbian OSを搭載したスマートフォンを次々と出し、またフィーチャーフォンでも次々と新製品を出すことで常にシェア30%以上をキープするトップメーカーとなっていった。

 このころの大ヒット製品はNokiaの「6600」。Symbian OSを搭載した片手で持てるスマートフォンで、手軽にネットにアクセスできる製品として爆発的なヒットを記録、全世界で100万台以上を出荷した。本体が下にすぼまる形の独特の形状は、当時Nokiaのデザイナーだった加賀美淳一氏が手掛けたものだ。

Nokia 6600 2003年に登場した「Nokia 6600」は当時世界のスマートフォンの代表作だった

 Nokiaに負けじとMotorolaもその当時始まった3Gサービスに対応するSymbian OSスマートフォンなどを出したが、本体の小型化でNokiaには勝てず、フィーチャーフォンの性能とデザインアップに注力していた。その中から生まれたのが2004年の「RAZR V3」。アルミ製の薄型スタイリッシュなボディーは日本や韓国、米国などでも人気となり、Motorola史上最大のヒット製品となる。しかしこのRAZRが売れすぎたことでMotorolaはスマートフォンへの移行が遅れてしまうことになる。

RAZR V3 トレンド製品となった「RAZR V3」。売れすぎたことでMotorolaはスマートフォン開発に出遅れた

 Samsungの後を追いかけるようにLGも存在感を表し、またフィーチャーフォンの世界では中国メーカーが新興国向けに低価格モデルを出すなど力をつけてきたことにより、老舗の大手メーカーは中国メーカーとの提携を模索するようになる。Sony Ericssonに続くように、2002年にはSagemが中国のバードと、2004年にはAlcatelが中国TCLと、そして2005年にはSiemensが台湾のBenQ(ベンキュー)と提携していった。

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