ちなみに、先述のガイドラインを改定する際に、全国BWA事業者としてUQコミュニケーションズが以下のようなパブリックコメント(PDF形式)を寄せました(一部体裁を整えています)。
改正電気通信事業法の規律の適用・非適用が市場実態に即しておらず、公正な競争の確保に支障を及ぼしていると考えられる事例があります。お客様の選択を阻害する要因となるため、以下の事例については、規律対象とすべきです。
・電気通信事業者が電気通信設備を制御することにより、特定地点以外での利用を制限して提供される電気通信役務が、改正電気通信事業法の適用対象外となっていること
弊社の提供するモバイルルータ(据置型含む)は改正事業法の適用対象である一方、ソフトバンク社の提供する SoftBank Air(以下、SB Air)は適用対象外とされています。このため、弊社モバイルルータ(据置型含む)は改正事業法に則った利益の提供額及び、違約金を1000円としているところ、SB Airは依然として新規加入時の多額の特典及び高額な違約金が設定されております。
モバイルルータ市場においては、弊社モバイルルータから SB Airへ新規加入時の多額の特典により、一方的にお客様が流出する上、流出したお客様は違約金及び、新規契約を条件とした通信料金割引により強固に囲い込まれるという不均衡な競争環境になっております。
モバイルルータはお客様が「スマホとルータどちらにしようか」と迷われるような、スマートフォンと競合するサービスではないためモバイルルータ市場とスマートフォン市場を区別した上でそれぞれに適切な競争政策を導入すべきです。(以下略)
端的にいうと、固定インターネット回線の代わりに使われることに変わりはないのに、自社が提供する「UQ WiMAX」は規制対象で、SoftBank Airが規制対象外となるのはおかしいという指摘です。現に、UQコミュニケーションズが直接提供するUQ WiMAXは、定期契約や利益提供に関する規制が適用されています(※3)。一方で、SoftBank Airは定期契約の中途解約金が1万450円(税込み)だったり、先述の通り2万円を超える利益提供があったりと、規制対象外であることを「うまく」生かしたサービス仕様となっています。
「規制対象と規制対象外の通信サービスは、別の市場で競争している」という旨の理由から、UQコミュニケーションズの意見はガイドラインに反映されませんでした。しかし、この指摘は非常に重要です。
(※3)KDDIと沖縄セルラー電話を除くMVNOを介して提供されるUQ WiMAXは規制対象外です
SoftBank Airと似たサービスの組み立てとなるであろうドコモのhome 5Gでは、先述の通り定期契約や解約金といった概念はありません。ゆえにSoftBank Airよりも“気軽に”利用できます。今後、SoftBank Airがドコモに対抗して定期契約や契約解除料を撤廃するかどうか、見ものです。
home 5Gの届けた住所でしか使えない仕様は、固定ブロードバンド回線の代用として考えるなら問題ありません。しかし、ライフラインの1つとして通信を捉えた場合、普段使っている場所と異なる場所で使えないというのは、少し困るかもしれません。
どういうことかというと、台風や大雨、地震といった自然災害で一時的に避難した際に“通信”する手段として使えるようにしてほしいということです。自治体などが設置する避難所には、大手キャリアが災害支援としてWi-Fiスポットを臨時設置することがありますが、知人の家やホテルなどに避難した場合はインターネット回線があるとは限りません。
先述のガイドライン的には少し難しいかもしれませんが、災害時には一時的でも利用場所に関する制限を解除できるようになってほしいと、筆者は個人的に思います。
ドコモは、5Gモバイルルーターの新製品として、シャープ製の「Wi-Fi STATION SH-52B」を8月下旬以降に発売する予定です。SH-52Bは先代に相当する「Wi-Fi STATION SH-52A」と比べるとかなりコンパクトになりました。LTEモバイルルーターと比べても遜色のないサイズ感となり、持ち運びやすさが向上しています。
ただし、コンパクトになったせいか、SH-52Aと比べると仕様が以下のように変わっています。
SH-52Aが「5Gの高速通信を存分に体感するための全部入りルーター」だったのに対して、SH-52Bは「一部の仕様を割り切って使いやすさを重視したルーター」となっています。現時点において販売価格は未定ですが、初出時の販売価格が7万円近かったSH-52Aと比べると、安価な価格の"スタンダードモデル"として発売されるものと思われます。
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