イオンモバイルに続く事業者がどこまで増えるかは未知数だが、少なくとも、キャリアの代理店を兼ねるMVNOや販売店では、原理上、同じことはできそうだ。例えば、大手家電量販店では代理店としてキャリアのスマートフォンを販売している一方で、MVNOのSIMカードも取り扱っている。ビックカメラのように、特定のMVNOとタッグを組み、自身のブランドでサービスを行う家電量販店も存在する。井原氏が語っていたように、キャリア端末の単体販売で十分利益が出るようであれば、同様の販売方法が増えても不思議ではない。
本来は新規ユーザーの獲得やユーザーの引き留めのために調達した端末が、MVNOをはじめとする他社に流れてしまうとなれば、キャリアとして何らかの手を打たざるをえなくなるだろう。ただ、端末の単体販売を禁止することは法的に難しいため、キャリアの取れる選択肢は少ない。考えられるのはかける手間やコストを最小限にすることで、独占販売や独自開発などで、何とかキャリア色を出そうとしている状況には向かい風になる可能性が高い。キャリア自身が端末を積極的に販売する意義が失われかけているともいえる。
もちろん、ワンストップで回線から端末までを提供できる意味はあるため、端末販売がゼロになるわけではないが、いわゆるオリジナルモデルのようなものは少なくなっていきそうだ。最近で言えば、ソフトバンクが販売しているLeitz Phone 1や、au、UQ mobileのRedmi Note 10 JEといった端末がこれに該当する。実際、かつてはドコモとZTEが共同で開発した「M」や、auとLGエレクトロニクスが開発した「isai」のように、キャリアの“顔”になるようなオリジナルモデルも多かったが、最近は徐々にこうした端末が減りつつあるように見える。
逆に、OPPOがauとSIMロックフリーで「Find X3 Pro」を販売したり、モトローラがソフトバンクとSIMロックフリーで「razr 5G」を販売したりと、キャリアだけに頼らず販路を多様化し、リスクヘッジをするメーカーも徐々に増えている。SIMロックの原則禁止を受け、SIMフリー市場の方が多彩な顔ぶれがそろう傾向はさらに加速していきそうだ。イオンモバイルの事例がその先駆けとなるかは、注目しておきたい事例といえそうだ。
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