10店舗での実験を7月1日から開始して約1カ月程度が経過した段階で、対象店舗には毎日pringに売り上げが入金されている。既に1回以上、銀行口座へ出金している例も把握しているというが、利用状況としては現時点でまだ大きな動きはないようだ。
今までは毎月15日、末日という決まった日程での入金だったのに対して、「いつでも経理作業ができる」という点がメリットになっていると尾村氏はみている。今まではどんなに忙しくても決まった日程で作業が必要だったのに対して、毎日入金なので好きなタイミングで経理作業も行える。
実際、実験店の1つであるコミネベーカリーでは、アルバイトなどへの給与払いのタイミングと入金のタイミングがずれる、税金の引き落としタイミングがずれる、といった場合に、入金が毎日あると便利だという。ただ、実際のところ「毎日」というメリットはそれほど大きくはないようだ。
武蔵小山商店街で人気のパン店コミネベーカリー。社長の小嶺氏は、コロナ禍で客層に一部変化が出て、自宅でのリモートワーカーが買いに来るようにもなったと話す。近所のオフィスからは、スマートフォンだけを持って買い物に来る人もいるそうで、キャッシュレス化の効果はあるというとはいえ、店側で出金をコントロールできるため、毎日の入金が必要な店舗があれば今回の実験はメリットがあるだろうし、1週間に1回ぐらいが最も効果が高い、ということになれば、そうした施策を検討すればいい。
店舗にとって必要な入金サイクルは千差万別だ。現在のコロナ禍においては、資金繰りの悪化や急な出費でサイクルが短い方がいいという場合もあるだろうし、月2回もあれば十分という場合もあるだろう。今回の実験では毎日の入金だが、売り上げはいわばpringにプールされるため、そこから出金するかどうかは店舗側に任されている。そのため、急なニーズにも対応できて十分なメリットはあるだろう。
コミネベーカリーでは、仕入れ先がpringなどのコード決済に対応しているわけではなく、基本的には掛売か現金払いだということで、pringのコード決済は利用していないという。
こうした仕入れのような法人同士の支払いにも活用できるようになれば、出金の手間も省けて、新たなニーズにもつながるかもしれない。実験で、中小・個店のどういったニーズが掘り起こされるか、注目の実験といえそうだ。
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